
2020.07
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日本酒の原料として、よく知られているのは米と米麹、それに加えて水です。これ以外の原料として、槍玉にあがることの多い「醸造アルコール」だけでなく、近年いくつかの蔵が不使用を掲げている「表示義務のない添加物」など、日本酒造りに使われる原料や資材には想像以上にさまざまなものがあります。
今回の記事では、日本酒造りに使われるさまざまな原料について、成 分や使用目的、使用にあたっての法的な規定を解説してみます。「なぜそれが使われているのか」を知ることで、それを使っているお酒の価値も、使っていないお酒の価値も、自分なりに正しく判断できるようになると思います。
はじめにラベルへの表示義務がある添加物として、醸造アルコール、糖類、酸味料の3種類をご紹介します。スーパーなどでパック酒やカップ酒を購入すると、ラベルにこれらの文字が見られることが多いと思います。(上記の3種以外に「アミノ酸」も添加が 認められていますが、筆者はアミノ酸添加の日本酒を見たことがないため今回は割愛します。)
この3種の添加物は、日本酒の品質を示す指標として考えられることも多い「特定名称」と関係します。具体的にはアルコール添加を行った酒は、「純米」とつく特定名称を名乗ることができません。糖類または酸味料を添加した酒は、特定名称を名乗ることはできず「普通酒」として扱われます。
添加物として一番有名なのは「醸造アルコール」でしょう。「本醸造」などの純米系ではないお酒(アルコール添加のお酒、いわゆる「アル添」)に使われている原料で、「悪酔いの原因になる」「まがいものである」などさまざまな悪評がついてしまっています(※1)。
(※1)これらの悪評とその真相については、以下の記事で解説しています。
アル添は悪?日本酒の「醸造アルコール」を正しく理解しよう
醸造アルコールを添加する目的は、主に以下の4つです。
1.香りを立たせる
アルコールを添加すると、醪の固形成分(酒粕になる部分)から、液体部分(清酒になる部分)へと香気成分が移る効果があります。これにより、アルコール添加を行うことで、より香り高い酒を造ることができます。
2.キレを良くする
甘味のある酒は、「ベタベタする」と言われるように口の中に甘さが残る場合がありますが、アルコールを添加することでこうし た味が口の中に残りにくく = キレが良くなります。
3.アルコール度数を上げる
発酵によって発生するアルコール量には限度がありますが、アルコール添加を行うことで、さらにアルコール度数を引き上げる効果があります。
4.保存性を高める
アルコールを添加することで、「火落ち」と呼ばれる劣化の原因となる火落菌の増殖を抑える効果があります。
この醸造アルコールとして主に使われているのは、サトウキビを原料とした糖蜜から作られた蒸留酒(甲類焼酎と同様の製法)で、純粋なエチルアルコールに近いものです。缶チューハイのベースになっているアルコールと同じもの、と理解していただくのが分かりやすいでしょう。一部の酒蔵では、自家製造した米焼酎をアルコール添加に用いているところもあります。また、国産米を原料にした醸造アルコールを販売するメーカーもあります。認められている添加量は、特定名称酒の場合は白米重量の10%(アルコール濃度95%換算)までです。
なお化学的に精製(合成)されたものをイメージされる方もいるようですが、これは誤りです。
次は糖類について見てみましょう。使用目的は分かりやすく、甘味の調整です。日本酒の甘味については、香りや酸味、アルコール度数といった要素とうまくバランスがとれている必要があります。このバランスを実現するため、糖類を添加することがあります。
なお、前述した醸造アルコールも同様ですが、使用する原料については醸造前に税務署への申告が必要です。そのため甘味の調整といっても、「甘味が足りなかったから加える」というものではなく、他に使用する原料や製造方法の都合上、最後に甘味のバランスをとるために糖類を添加することを、あらかじめ見越して酒造りを行っています。
糖類というと砂糖が思い浮かびますが、日本酒造りに使われる糖類は主にぶどう糖 と水あめです。ともに、コーンスターチなどのでんぷんを酵素の力で液化、糖化した後に不純物を取り除き、濃縮した純粋なぶどう糖・水あめが使われています。

日本酒の酸味を構成する成分は、主に乳酸、コハク酸、クエン酸そしてリンゴ酸の4種の有機酸です。これらは発酵の過程で生み出されるため、純米酒にも含まれている成分ですが、酸味の調整のために添加物として加えられることもあります。
たとえば乳酸は、発酵により作られた後、科学的な製法で濃縮・精製されているものと、化学的合成により作られているものがあります。クエン酸はサツマイモデンプンを発酵させて精製しているものが多いようです。
味の(主に甘味との)バランスをとるために使われること、醸造前に使用の申請が必要であり、あらかじめ添加を見越した酒造りを行うことは糖類と同様です。