
2025.08
05
「日本酒」をテーマにした起業や新規事業、新サービスの開発について、毎年多くのニュースが流れており、近年では大手企業による新規参入の事例も増えてきています。
新しいプレーヤーが次々と登場する日本酒業界ですが、今、どのような業態や企業が存在しているのでしょうか?今回、SAKE Streetでは47の新規ビジネスをピックアップし、スタートアップ界隈でよく見られる「カオスマップ(業界地図)」を作成。動きの激しい日本酒関係の新規ビジネスを整理してみました!
※カオスマップの作成に伴い、各企業・サービスのロゴを引用させていただいています。問題があればこちらまでご連絡ください。
カオスマップの大きな画像はこちら
※本文中の各企業/サービス/ブランド名称部分に、公式サイト等へのリンクを掲載しております。
はじめにご紹介するのは、「酒造り」に関するビジネスです。この分野で新規ビジネスを立ち上げるための課題の1つは、酒税法で定められた免許を取得する必要があること。ここでは、取得・活用する免許の種類に応じて、3つの種類に分けてご紹介します。

普段私たちが「日本酒」と呼んでいるお酒は、法律上は「清酒」として扱われています。そしてその清酒を製造するための免許は現在、原則として新規の発行が行われていません。そのため、かつて、新しく日本酒を造る蔵を設立するためには、すでに免許を持っている企業をM&Aにより統合する必要がありました。
戦後長くこのような状況が続いてきましたが、2021年に「輸出用免許」が新設。輸出用に限り、新規免許の発行が許可されるようになりました。
今回は、従来OEM(委託醸造)により、 自らも酒造りに携わりながらオリジナルブランドの日本酒を造っていたものの、M&Aや輸出用免許の取得等を経て、自社で日本酒(清酒)の製造を開始した2企業をピックアップしました。
HINEMOS(株式会社RiceWine)
「時間に寄り添う日本酒」をコンセプトに、2019年にリリースされたブランド。当初は神奈川県・井上酒造(「箱根山」)での委託醸造をおこなっていましたが、2021年7月に現・醸造責任者の実家である愛知県・森山酒造の持つ製造免許を神奈川県小田原市に移転。同社の免許を活用し、自社での醸造をスタートしています。2023年には中目黒に、2024年4月17日には東急プラザ原宿「ハラカド」に実店舗もオープンしました。
台雲・台中六十五号(台雲酒造合同会社)
創業者である陳韋仁さんは台湾出身で、2008年に島根大学に留学した後、日本酒の美味しさに魅了され中国地方等の酒蔵で修行を積みました。その後、島根と台湾にゆかりのある米の品種「台中65号」の栽培をはじめ、自身が働く蔵内で日本酒を製造。2021年には新設された輸出用製造免許を取得し、自社での醸造を開始しています。

2020年頃から、「クラフトサケ」という新しいジャンルが認知されるようになってきました。酒税法の分類では、先ほど紹介した「清酒」に該当しないお酒です。
「清酒」の定義は、大きく3つ。
これに対し、「クラフトサケ」は米と米麹を基本の原料としつつも、フルーツやハーブ等、清酒の枠では使用できない副原料を使って、あるいは濾さずに出荷する「どぶろく」として、醸造されています。制約の少ない「その他の醸造酒」の免許を取得することで、新規の醸造所でも製造することができるということです。
2022年6月には「クラフトサケブリュワリー協会」も設立され、このジャンルへの注目がさらに高まっています。ここでは、クラフトサケブリュワリー協会の所属企業と、未所属でも副原料を使ったクラフトサケを造る企業を紹介します。
稲とアガベ
クラフトサケブリュワリー協会の発起人でもある岡住修兵さんが2021年、秋田県男鹿市に創業。テキーラの原料にも使われるアガベのシロップを使ったクラフトサケ等を醸造するほか、輸出用の清酒製造免許も取得しています。その後もラーメン店「おがや」、食品加工場「SANABURI FACTORY」オープンなど複数の新展開がありました。2025年にも、1月に「早苗饗(さなぶり)蒸留所」のオープン、6月に「ホテルかぜまちみなと」のオープンと積極的な展開を見せており、ますます注目が集まっています。
ハナグモリ(木花之醸造所)
東京都台東区、浅草に2020年に創業した醸造所。若手蔵人のステップアップの場として、醸造所長の独立を推奨し、すでに2名の卒業者を輩出(うち1名は前出の岡住さん)。こちらも、輸出用清酒製造免許を取得しています。
haccoba
原発事故により避難指示区域に指定された福島県南相馬市小高で2021年に創業。ホップを副原料とする商品をはじめ、独創的で多種多様なクラフトサケが人気を集めています。2024年2月には、小高駅舎を活用した「haccoba 小高駅舎醸造所&PUBLIC MARKET」がオープン。地域のコミュニティ拠点運営にも一役買っています。
ハッピーどぶろく(ハッピー太郎醸造所)
蔵人として12年間のキャリアを積んだ池島幸太郎さん(通称:ハッピー太郎さん)が、2017年に滋賀 県彦根市で創業し、当初は麹や味噌、鮒ずしの製造やワークショップを実施。2021年より滋賀県長浜市に移転し、2022年2月からどぶろくの醸造を開始しています。
平六醸造
岩手県・菊の司酒造の創業家16代目である平井佑樹さんが同社を退職後、かつて平井家が酒造りをおこなっていた紫波町にある「日詰平井邸」にて立ち上げた醸造所です。同地で酒造りが行われるのは、約100年ぶりのこと。2023年11月より醸造を開始し、2月に発芽玄米を酒母に使用したクラフトサケをリリースしました。
翔空(Lagoon Brewery)
新潟県内の元・酒蔵経営者と元・杜氏が2021年に新潟県新潟市で創業。どぶろくを中心としたクラフトサケに加え、輸出用の清酒製造免許も取得。国内外に商品を展開しています。
LIBROM
2020年、福岡県福岡市に開業した醸造所。果実やハーブなどの副原料の味わいを活かしながらも、「日本酒らしさ」が感じられる味わいが魅力です。2023年11月にはイタリア現地法人の設立を完了。さまざまな困難を乗り越えながら、当初からの目標であったイタリアでのSAKE造りに挑戦し続けています。
KOYOI(足立農醸)
2021年より耕作放棄地を復田し、育てた米で委託醸造による日本酒づくりを開始しました。2023年度には大阪に醸造所を設立し、「その他の醸造酒」と輸出用の清酒製 造免許を取得。2024年より自社での醸造を開始しています。2025年2月には、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)西日本支社、富田団地自治会と共同で新ブランド「DANCHI Craft」を立ち上げ、地域コミュニティの活性化に取り組んでいます。
ぷくぷく醸造
前出のhaccoba醸造責任者であった立川哲之さんが独立して立ち上げたブランド。従来は、宮城県・佐々木酒造店(「宝船浪の音」)など複数の酒蔵で日本酒・クラフトサケを醸造するファントムブルワリーでしたが、2024年3月に自社醸造所を設立。福島県南相馬市での酒造りを始めています。
やまね酒造
埼玉県飯能市にて2019年に創業し、2021年にどぶろく醸造所をオープン。現在は発芽玄米やはちみつなどの副原料を使ったクラフトサケも製造しています。飯能の生物多様性や環境の研究を行い、エコツアーや宿泊施設も提供しています。
SENDAI STATION BREWERY Fermenteria
従来から日本酒の自家醸造キット「MiCURA(マイクラ)」を海外向けに販売していた伊澤優花さんが、仙台駅で立ち上げた醸造所。アルコール度数5%前後、毎日できたてのしゅわしゅわな生クラフトサケ「サケベイビー」に加え、ノンアルコールの発酵飲料「ライスブリューミルク」を醸造・販売しています。
弥栄醸造
菊正宗酒造、未来日本酒店、阿部酒造で合計12年の経験を積んだ坂本一浩さんが、柏崎市で新たに立ち上げ準備中のクラフトサケ醸造所です。「自分が感動できるようなお酒を、自分で造ってみたい」との思いから、麹だけを使った日本酒ではない米の酒、「十割麹酒」を醸造予定。阿部酒造で醸した先行リリース商品はすでに好評を博しており、現在クラウドファンディング開始に向け準備中です。
SAKENOVA BREWERY
日本酒レビューサービスのSakeaiや、委託醸造による高級日本酒ブランド「SAKENOVA」を手がける株式会社サケアイが、「離島発のクラフトサケ醸造所」として新潟県佐渡市に立ち上げを目指す醸造所です。2024年10月からクラウドファンディングを開始し、同市内の天領盃酒造敷地内で、今年の醸造所稼働開始に向け準備中です。

醸造分野で最後に紹介するのは免許を持たずに、委託醸造で自社ブランドのお酒を醸造する形態のビジネスです。「ファントムブルワリー」と呼ばれるこの形態は、クラフトビールでは一般的ですが、日本酒では比較的新しい手法といえるでしょう。
いわゆるOEMとの違いを、ここでは以下のとおり定義しました。