買った日本酒が「美味しくなかった」ときに試してほしい5つのこと

2020.06

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買った日本酒が「美味しくなかった」ときに試してほしい5つのこと

二戸 浩平  |  日本酒を学ぶ

店頭でラベルや商品説明を読んでお酒を買ってみたけど、家に帰って飲んでみると「美味しくない・・・」と感じることがあるかもしれません。試飲して購入ができれば良いのですが、通販や試飲ができないお店では直感に頼らざるをえないこともあります。

でも、日本酒は飲み方次第で味わいが大きく変わります。幅広い楽しみ方を知っておけば、美味しいと感じる日本酒も増え、お酒を買うのも飲むのもますます楽しくなるでしょう。今回は、買ったお酒が好みに合わなかったときに試してみてほしいことを5つ、ご紹介します。ここに書かれていることを全部試して!ということではなくて、この中で試せそうなものや、飲んだ日本酒の特徴に近いものがあったらぜひ、試してみてください!

デキャンタージュ

一番簡単に試せる方法が、デキャンタージュです。デキャンタージュとはワインを飲む際に使われる手法で、ボトルから「デキャンタ」という容器に移すことによって液体を空気に触れさせ、味わいをまろやかに、香りを開かせる作業のことをいいます。

日本酒でも、味や香りの刺激が強すぎると感じるお酒を、デキャンタージュでまろやかで落ち着いた味わいに変えることができます。たとえばフレッシュな生酒に苦味を感じた場合、山廃の生原酒などで味わいが刺激的すぎる場合、大吟醸などで香りが立ちすぎると感じる場合に試してみると良いでしょう。

ワインに使われるようなデキャンタがあればそちらを使っても良いですし、片口や湯呑みを使って何度か注ぎ替えることでも同様の効果を得ることができます。一度試してみると、たったこれだけのことで、ここまで味が変わるものなのかと驚くことでしょう。

割る

日本酒はストレートで飲まれることが多いですが、味の濃い日本酒ならロックやソーダ割も美味しく飲めますし、苦手なお酒に少し別のものを加えるだけで美味しく飲めることもあります。ここからは、日本酒を割るのに適したものをご紹介しましょう。

「老ね」を感じるお酒に、トニックウォーターを加える

最初にご紹介するのは、カクテル作りに使われるトニックウォーターです。日本酒:トニックウォーター = 9:1ぐらいのイメージで、ごく少量加えるだけで劇的な効果を生んでくれます。

この方法はどんな日本酒でも効果的ですが、特に効果があるのはいわゆる「老ねた香り」や「味のダラけ」を感じるようになった生酒、特にある程度味のしっかりした生原酒タイプのものに効果を発揮してくれます。トニックウォーターの炭酸と爽やかな香り、そして甘みと酸味が、お酒に彩りを取り戻してくれます。味わいのバランスを見ながら、お酒とトニックウォーターの量を調整していくと良いでしょう。

「地味」に感じるお酒に、だしを加える

次に試して欲しいのが「だし割」です。日本酒に、よく温めただしを1:1.5〜2ぐらいの割合で加えると、日本酒と出汁の旨味が混ざり合ってスープのような、コクがありほっとする味わいになります。お酒もあらかじめ温めておいても良いですが、常温でも出汁を熱めにしておけば適温になります。

だしは、通常の合わせだし(だしの素を使ったものでOK)でも、おでんだしや蕎麦だしのような味付けがされたものでも、特に種類を選ぶ必要はありません。お酒の方は、少し地味に感じるような、いわゆる「日本酒らしい日本酒」で試してみるのが良いでしょう。

そのほかにも、いろいろな割り方が

そのほかにも、SNSでは日本酒に加えると良いさまざまなものが紹介されています。この機会に、自分でも色々と試してみるのも良いかもしれません。

この方法で、日本酒と他の飲み物等の相性を追求してみたくなったらカクテル作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。過去の記事で、日本酒カクテルのレシピについてもご紹介していますので参考にしてみてください。

自宅にある材料と道具で簡単に作れる! - 「日本酒カクテル」の作り方を学ぶ

温める

3つ目にご紹介する方法は、古典的な方法ですが「お燗」です。よく「お燗向けのお酒」という言い方がされたりしますが、実は「冷酒に向かないお酒」はあっても「お燗に向かないお酒」はほとんどない、と言っても良いほどです。特に、買ったお酒の味が濃すぎると感じたとき、あるいは逆にもう少しはっきりと味を感じたいと思ったときには、ぜひお燗を試してみてください。それぞれのパターンでのお燗のつけ方をご紹介します。

なお、基本的なお燗のつけ方は以下の記事にまとめていますので、こちらもご参照ください。 そのお酒の別の表情、見てみませんか? - 燗酒の基本的なつくり方を学ぶ

味のしっかりした生原酒系はしっかり温度を上げてから、少し冷ます!

しっかりした味の生原酒などのお酒は、55〜65度ぐらいまで温めてしまいましょう。そんなに上げて大丈夫なの?と思われるかもしれませんが、大丈夫です、信じてください。火入れのお酒でも、精米歩合が70〜90%程度の低精白のもの、山廃造りのものなどでしっかり味を感じるものは同じぐらい温度を上げてしまって大丈夫です。

しっかりと温めたら、6〜10度ぐらい冷ましてみましょう。金属製のちろりを使って温めた場合は、外側を流水で冷ますと手早く温度を下げることができます。レンジを使った場合など、陶器で温めた場合には先ほどご紹介した「デキャンタージュ」の方法と組み合わせることで、空気と触れ合わせつつ温度を下げることもできますね。

火入れ加水のお酒の個性を引き出すには、少しぬるめに温める!

アルコール度数15度前後の火入れのお酒で、もう少し旨味や甘味が欲しい、と思った場合には40度程度のぬる燗を試してみてください。お酒の奥に隠れていた個性が引き出され、豊かな味わいを感じることができるようになります。

コツは、温める前と温める途中のお酒の味を何度か見てみること。温度を上げることで引き出されるお酒は、温度の上昇に伴ってだんだんと姿を表します。たとえば30度→35度→40度と温度を上げながら味見をした時に、30度→35度の味の伸び方と35度→40度の味の伸び方が同じ程度であれば、もう少し温めてみても良いかもしれません。逆に、35度→40度ではあまり変化がない、もしくは35度の味の方が好きだったと感じる時は、その温度で温めるのをやめましょう。

お燗のテクニックは他にもたくさんあり、これはこれで一つの記事でも語り尽くせないほどですが、今回は「濃いお酒」は「熱く温めてから冷ます」、「ひと味足りないお酒」は「ぬるめに温める」、この2つだけ覚えてみてください。この方法をベースにいろいろなお酒と温度の相性を確かめているうちに、もっともっと燗酒、そして日本酒のことが好きになっていくことでしょう。

合わせる料理を変える

特に近年では、さまざまな酒蔵が製法や原料を工夫することで、個性豊かな日本酒を造っています。個性的な味わいのお酒は、うまく好みとハマれば美味しく飲めますが、苦手と感じる場合もあるかもしれません。しかしそうした場合にも、食事と合わせて飲むことで美味しく飲めるようになります。こちらも2つのパターンを例としてご説明しましょう。

個性的な酸味や香りのあるお酒とは、エスニックを

近年では、伝統的な製法である山廃・生酛造りや水酛造り、あるいは酵母無添加などの手法で「蔵の個性」を感じさせる味わいのお酒が増えています。酸味や香りに特徴のあるこうしたお酒も、各蔵の創意工夫によって美味しく飲めるものばかりですが、それでも「苦手だ」と感じた場合にはエスニック料理や中華料理とあわせてみてください。

トロピカルな雰囲気のある酸味と甘さ、香りのあるお酒はタイ料理やベトナム料理、あるいはメキシコ料理などのいわゆるエスニック料理と相性が良いことが多いです。自宅で調理するのが難しいと感じる場合は、レトルトや缶詰のものも種類が豊富なのでこの機会に探してみてください。エスニックではありませんが、ブルーチーズなど少し癖のあるチーズと合わせてみるのも良いでしょう。

酸味に加えて、どっしりした旨味や熟成感のあるお酒は中華料理や焼肉などの韓国料理と相性が良いでしょう。中華といえば紹興酒が頭に思い浮かぶかもしれませんが、個性的な日本酒のマイルドな味わいは本格的な中華料理にも、より食材の味を活かした焼肉などの料理にも良く合います。

「甘すぎる」と感じるお酒とは、塩辛さ&油のあるおつまみを

お酒が「甘すぎる」場合には、スイーツ等と合わせてみるのも良いですが、そもそも甘い味自体が苦手な方もいらっしゃるでしょう。その場合には、少しジャンクさも感じるような、塩辛さと油のあるおつまみをあわせてみると良いでしょう。例えば、スーパー等で売られている生ハムにオリーブオイルを少しかけたものなどは甘いお酒とも良く合います。

熟成したお酒や貴醸酒など、旨味もしっかりあるお酒なら角煮や酢豚など甘味のある中華料理と合わせみても美味しいです。

お酒と料理をあわせる「ペアリング」についても、それこそ本が書けるような深いテーマになりますが、今回はあくまでも「苦手なお酒を美味しく飲む」ための簡単なコツを2つご紹介しました。本格的に学んでみたい方は、まずは以下の記事で紹介した書籍から読み始めてみてはいかがでしょうか。

自宅でお酒のことを学ぼう!日本酒・お酒の書籍紹介 -「日本酒ペアリング」編

しばらく置いておく

最後にご紹介する方法は・・・「放置」!です。そんなこと?と思われるかもしれませんが、実は一番簡単で効果的な方法で、筆者もこの方法をとることが多いです。特に生酒の味は、日々変化します。「開けたてが一番美味しい」と思われる方や、そのような説明も受けた方もいるかもしれません。それはそれで間違いではないと思いますが、この変化の過程は実際にはもっと複雑です。

イメージで表すと・・・

このような感じになります。上の図では味わい(好みへの一致度)が経過時間と共に上昇基調にありますが、下がり続ける時期もあります。どの時点の味が好きかは人によって異なるので、しばらく置いておくと何日か後、あるいは何ヶ月か後に好みにピッタリな味になっているかもしれません。「放置」を繰り返し試していると、「あ、このお酒は冷蔵して1ヶ月後ぐらいが自分にとっての飲み頃かな」など想像ができるようになるでしょう。ただし、生酒の場合には冷蔵庫のスペースが必要になってしまうのがデメリットかもしれません。(火入れのお酒は、暑くならない場所であれば常温で保管しても問題ありません。)

この方法も幅広い味わいのお酒に有効ですが、香り高く繊細なバランスの大吟醸などのお酒の場合、氷温などの環境を用意しなければバランスが崩れてしまう場合があるので注意しましょう。また火入れのお酒で、水を思わせるような淡麗な味わいのものは時間をおいても変化が少ない場合があります。こうしたお酒はそのまま、あるいはこれまでにご紹介した別の方法で飲むのが良いでしょう。

まとめ

どうしても飲めないお酒の場合には「料理酒にする」「風呂に入れる」などの方法もありますが、今回はあくまでも「美味しく飲む」ことを前提に5つの方法をご紹介しました。

造り手の努力によって、美味しい日本酒が年々増えています。日本酒に力を入れている酒屋さんでなら何も考えずに買っても、美味しく味わえることが多いでしょう。それでも苦手なお酒と出会ってしまったとき、あるいはもっと美味しい飲み方があるんじゃないか!?と思ったとき、この記事に書かれている内容を思い出してみてください!

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