複数蔵の承継、免許獲得、投資。酒蔵M&Aを経験者3名にインタビュー - 日本酒M&Aスターターガイド (3)

2024.01

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複数蔵の承継、免許獲得、投資。酒蔵M&Aを経験者3名にインタビュー - 日本酒M&Aスターターガイド (3)

木村 咲貴  |  SAKE業界の新潮流

日本酒の製造免許が新規に交付されない日本では、M&Aが日本酒事業へ参入する最も有効な方法のひとつになっています。SAKE Streetの特集「日本酒蔵M&Aスターターガイド」は、「自分の酒蔵を持つことに興味がある」という人のために、酒蔵M&Aの特徴やポイントを解説しています。

第1回では現在の日本酒を取り巻くM&Aの概況、第2回では基本的なM&Aの情報や酒蔵ならではのポイントを解説しました。

最終回となる第3回では、実際にM&Aの買い手を経験したことがある三者にインタビューを実施。それぞれ一本ずつの記事でご紹介しますが、こちらの記事では、各記事の概要とリンクをまとめています。

杜氏の想いを引き出し、地元にファンを作る:田中文悟さん

前職・SAKEアソシエイツ(旧社名:田中文悟商店)と現在運営する日本酒キャピタルを合わせて、これまでに16社の酒蔵をM&Aした田中文悟さん。「誰も辞めさせないこと」をポリシーに、杜氏をはじめとした社員の想いを引き出し、地元の人々を巻き込んでの新しいスタートを目指す田中さんにお話を聞きました。

決め手は「熱い想い」。M&Aで先祖代々のブランドを復活:伊東優さん

愛知県亀崎の土地で、2000年に廃業した銘柄「敷嶋」を復活させるために立ち上がった伊東優さん。免許の取得を目的としたM&Aの交渉には5年の歳月がかかり、最後には偶然のめぐり合わせが成約へと結びつきました。新規に清酒製造免許が発行されない日本で、自分の酒蔵を取り戻すために奔走した伊東さんに、具体的な手法やポイントを尋ねました。

DXで事業再生。投資先としての酒蔵とは:くじらキャピタル・竹内真二さん

DX(デジタル・トランスフォーメーション)やグローバル展開を含めた中小企業の成長支援を目指す投資ファンド・くじらキャピタル。かつて、神奈川県の酒蔵をM&Aし黒字化した実績があります。M&Aのプロフェッショナルである代表・竹内真二さんに、他業界と比較した酒蔵ならではのM&Aについてお話を聞きました。

まとめ

杜氏の想いを聞き取り、多くの酒蔵に手を差し伸べる田中さん。先祖代々の銘柄を復活させるため、製造免許の獲得に奔走した伊東さん。日本酒に可能性を見出し、一般的な企業としての再起を図る竹内さん。3名のインタビューを読むと、目的から手法、こだわりに至るまで、三者三様であることがよくわかります。

日本酒の製造免許が新たに交付されない現在の日本業界では、新規参入がほとんどできないという課題があります。新しい視点から革新を起こすプレイヤーが生まれなければ、業界はシュリンクしていく一方です。この「日本酒蔵M&Aスターターガイド」がヒントとなり、「日本酒ビジネスを始めたい」という想いを持つより多くの人が新規参入し、業界が活性化する。それが、日本酒が再び多くの人に愛されるような飲み物になる未来へつながることを期待しています。

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