2020.04

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自宅でお酒のことを学ぼう!日本酒・お酒の書籍紹介 - 「日本酒の歴史・入門書」編

河島 泰斗 (わっしー)  |  日本酒・お酒関係書評

日本酒や他のお酒に関係した書評企画の第2回は「日本酒の歴史・入門書」編です。第1回の「日本酒の基本」編でご紹介した書籍を楽しんだうえで、さらに 「歴史方面に知識を広げてみたい」という方を意識して、電子書籍又は文庫本で読むことができる3冊の入門書 をご紹介します。

日本酒の歴史をコンパクトに凝縮した『日本酒のおもしろ歴史検定 公式テキスト』

「日本酒のことはある程度知っているけど、歴史はちょっと苦手…」。そんな方におすすめなのが、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会著『日本酒検定<日本酒のおもしろ歴史検定>公式テキスト Kindle版』です。 この電子書籍は、20才以上なら誰でも受験できる「日本酒検定」のテキストであり、 日本酒の長い歴史をコンパクトにまとめた内容と、親しみやすい文章が魅力です。

日本酒検定<日本酒のおもしろ歴史検定>公式テキスト

その内容は 合計53個のトピックで構成 されており、冒頭に十二カ月それぞれの行事等をまとめた「歳時記」、続いて古い時代から並べられた歴史トピックが続き、最後に用語集があります。 各トピックは数ページ以内と読みやすい分量であり、スマートフォンやタブレットで少しずつ読み進めることができる ことも特徴です。

歴史トピックは、縄文時代の「日本に初めて登場したお酒はワインだった?」という興味深い話題で始まります。 以降、古文書や神話に出てくるお酒の話題、朝廷や寺社を舞台とした酒造りの歴史、その中での技術の進化など、現代と異なる日本酒の姿に、ロマンを感じながら読み進めることができるでしょう。 江戸時代に入ると、「寒づくり」、「灘の発展」、「アルコール添加」など、現代の日本酒につながるテーマが出てきて、親しみがわいてきます。そして、明治時代以降は、「科学に基づく酒造技術の発展」、「日本酒と税制」、「吟醸酒ブーム」など、いま私たちが楽しんでいる日本酒の直接のルーツを知ることができます。

お手軽でありながら要点を押さえたこの書籍は、日本酒の歴史を学ぶ「はじめの一冊」としてふさわしい と思います。

『日本酒検定<日本酒のおもしろ歴史検定>公式テキスト Kindle版』(ホスピタリティバンク)

歴史のエピソードを入り口に日本酒の歴史が学べる『日本史が面白くなる日本酒の話』

「歴史を舞台としたとした小説やドラマ、ゲーム、漫画などが好きで、日本酒の歴史にも興味がある」。そんな方は、上杉隆久著『日本史が面白くなる日本酒の話』(サンマーク出版)はいかがでしょうか。

日本史がおもしろくなる日本酒の話

この書籍の魅力は、 歴史の教科書に出てくる著名な人物、出来事などと関連づけた「日本酒の歴史エピソード」が満載 なことです。例えば、「卑弥呼」、「足利義満」、「上杉謙信」、「明智光秀」などの人物、そして「応仁の乱」、「本能寺の変」、「日露戦争」などの出来事を入り口にして、その時々の日本酒の造り手、技術、味わいなどについて楽しく知ることができます。

また、日本酒の消費や酒肴などの「飲食文化」について描かれていることも特徴 です。様々な時代の宴会の様子、酒とともに楽しんだ料理、酒の流通・販売事情などについて知れば、当時の日本酒に対する想像がふくらみ、ますます興味がわいてくるでしょう。

そして、各章の最後に収録されている「酒蔵探訪」では、 歴史の視点から全国10箇所の酒蔵とその商品が紹介 されています。そのラインナップは、熊本県の瑞鷹が製造する伝統酒「赤酒」、岡山県の利守酒造が製造する「甕仕込み」のお酒、愛知県の甘強酒造が製造する「古式味醂」など、読めば読むほど飲んでみたくなること請け合いです。

とても話題が豊富で楽しい書籍ですが、全体の構成は日本酒の「通史」となっているので、 読み終える頃には日本酒の「製造」と「消費」の変遷のあらましを理解できる でしょう。

『日本史がおもしろくなる日本酒の話』(サンマーク出版)

歴史上の「呑ん兵衛」の生き様を愛情たっぷりにつづった『酒が語る日本史』

三冊目は、日本史に深く関心を持つ方に向けて、少し趣が異なる書籍を紹介します。和歌森太郎著『酒が語る日本史』(河出書房新社)は、歴史上の「呑ん兵衛」を主役に据えた歴史物語 です。

酒が語る日本史

著者は、日本人の飲酒文化の変遷について、このように記しています。
「神信仰を表現する祭りの中でのみ酒を味わったものが、つきあい社交の具として飲むようになり、ついには独り盃を手にして日常の食事として飲むに至り、やがて酒を飲みたいが為に酒をたのしむ、というものが巷にあふれる現代となった。」

現代に生きる私たちは、時に大人数、時に家族や小グループ、そして時に独りで、嗜好品としてのお酒を自由に楽しむことができます。しかし、このような飲酒文化が発展し始めるのは江戸時代以降のことであり、それまでは主に「上流階級が、特別な機会に、集まって宴席で飲む」ものだったようです。

書籍の前半(先史時代~安土桃山時代)では、 歴史上の権力者や文化人の酒の嗜好、宴席での振る舞いなどを通じて、酒が「社交の具」として飲まれる様子が生き生きと紹介されています。 この「社交」は必ずしも平和的なものばかりではなく、政敵を滅ぼそうとするための密議や、宴会の場での殺傷事件など、歴史を大きく動かした事件も数多く含まれており、酒が引き起こした激動の歴史についても知ることができます。

江戸時代以降は、酒が一般化していったことを背景に、将軍や大名、近代の政治家から、文化人、そして庶民まで、様々な階層の飲酒文化 が紹介されています。この頃になると、宴席よりも「プライベートの飲酒」の記述が多くなり、当時の人々がお酒を美味しく、楽しく飲み、時に酔っぱらって痛い目を見る様子を、微笑ましく読むことができます。

この書籍は、「飲み手」目線から描いた日本酒の「社会史」として興味深い ことに加え、歴史上の偉人が数多く登場する「人物伝」 として楽しむこともできます。自分の飲み方はどの偉人に似ているだろうか。どの偉人と一緒に飲んだら楽しいだろうか。そんなふうに想像を巡らせながら、歴史のロマンに浸ることができるでしょう。

『酒が語る日本史』(河出書房新社)

まとめ

様々な趣味において、「ルーツの探求」は知的好奇心、そしてロマンを刺激します。そして、過去を知ることによって、現在の事物への理解が深まり、より楽しみが増していくでしょう。皆さんも、この三冊をきっかけに、日本酒のルーツへと興味を広げてみてはいかがでしょうか。