日本酒と女性:多様な働き手を受け入れるために、酒蔵の現場が乗り越えるべき課題とは?

2024.07

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日本酒と女性:多様な働き手を受け入れるために、酒蔵の現場が乗り越えるべき課題とは?

木村 咲貴  |  SAKE業界の新潮流

近年、「多様性」という言葉に代わって、「DEI」という言葉で自社の取り組みや考え方を説明する企業が増えてきています。DEIとはDiversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)をまとめた言葉のことで、さまざまな性別や国籍、障がいを持つ人々などが、公平に働くことができる状態を指しています。

SAKE Streetが全3回(予定)によってお届けする特集「日本酒と女性」では、そうしたマイノリティの中でも、日本酒業界で長く排除されてきた歴史を持つ“女性”に焦点をあてながら、すべての人が障壁なく公平に働ける業界となるために必要なことを模索していきます。

多様な性のあり方が浸透し、もはや性別とは「男性」「女性」に留まらないものであると考えられている現代。ジェンダー間の違和感を解消しようとする動きは各業界で起きていますが、一方、旧時代的な慣習が残る日本酒業界はまだその途上にあり、「女性杜氏の活躍」「女性向けの日本酒」といったトピックがいまだに注目されています。

第1弾では、酒造りの現場において女性が抱える課題や解決策を、酒蔵で働いた経験を持つ女性50名のアンケート回答(※)とともに考えていきます。女性が「日本酒を造りたい」「酒造りを生涯の仕事にしたい」と望んだとき、障壁になるのはどのようなことなのでしょうか。

※2024年6月5日〜20日にオンラインにて実施。ソーシャルメディアや女性蔵人コミュニティほかの拡散を通じ、50名から回答を獲得。製造担当・製造以外担当それぞれ50%ずつという内訳になった。

酒蔵で働く女性は少ないのか?

スイスに本部を置く非営利財団「世界経済フォーラム」が2024年に発表した「ジェンダーギャップ指数」において、日本は146カ国中118位でした。教育分野・健康分野は世界トップレベルですが、政治分野・経済分野のスコアが低いために途上国にも遅れをとり、「日本はジェンダー後進国である」というイメージを持つ人々は世界に少なくありません。

ジェンダーギャップ指数において、経済分野のスコアは

①女性の労働参加率
②類似職業の男女賃金格差
③全体の男女賃金格差
④管理職に占める女性比率
⑤総合職・専門職に占める女性比率

という5つの指標によって判断されます。ここで、日本酒を造る清酒製造業の状況を見ていきましょう。

製造業は一般的に女性が少ない業種とされています。経済産業省の発表する「2024年版ものづくり白書」には、2023年の製造業における女性就業者の状況について、

全産業の女性就業者の割合が2002年からの21年間で上昇傾向の推移を見せているのに対し、製造業の女性就業者の割合は、2002年の33.5%から緩やかに下降。2023年も30.0%となった(※著者により要約)

ということが報告されています。

確かに、製造業は機械・鉄鋼・電子・建築など男性が中心となってきた分野というイメージが強いかもしれません。しかし、今回の特集に際しておこなったアンケートでは、有効回答の48%(22件)が、勤務先の酒蔵において、女性が従業員の半数以上を占めている(た)としています。これはどういうことなのでしょうか。

日本酒は、近現代で用いられる製法が確立された江戸時代以降、蔵への女性の立ち入りを禁じる「女人禁制」が取られてきました。この理由としてはさまざまな説が説かれていますが、太平洋戦争から後は、再び酒造りに携わる女性が増えてきています。

改めて、「ジェンダーギャップ指数」を計る指標を見てみましょう。清酒製造業における女性就業者の数値を精査した研究としては、2002年に発表された東京農業大学教授・木原高治の「清酒製造業における雇用構造の変化と生産効率性」が最新であると考えられます(※)。

※本特集に合わせて同教授に問い合わせましたが、これより新しい調査はおこなっていないという返答をいただきました。

1998BYにおける職種別酒造要員の女性比率

男性(人)女性(人)女性比率
杜氏14200%
杜氏補佐2000%
8800%
製造管理231043%
麹屋7845%
酒母屋6834%
醪係4425%
舟頭5412%
二番10110%
釜屋8222%
役助手41410%
酒造工2047637%
精米長1400%
精米工2614%
給食員1444400%
合計89514817%

木原高治「清酒製造業における雇用構造の変化と生産効率性」の表5「製造規模別・職種別酒造要員分布」を元にSAKE Street作成

この資料からはまず、アンケートの回答とは異なり、女性従業員の比率が17%と低いことが見えてきます。これは、本アンケートの回答数が50名と限定的であることが原因と考えられますが、1998BYから約25年の間に女性が増えたという可能性もあります。

また、女性が就くのは酒造工(補助要員)や給食員などの役職であり、例えば杜氏、頭、麹屋などの役職においては、女性の数は極めて少ないこともわかります。もちろんこれも同様に、現在において改善されている可能性は大いにあるでしょう。

ここで、男女間における賃金格差を見てみましょう。このデータからは、同じポジションにおいて、男性の賃金を100とした場合、女性の賃金は最大で57%という開きがあることがわかります。先述の「2024年版ものづくり白書」においても、男性の賃金を100とした場合の女性の賃金は2023年に68.2%と低く、全産業と比較しても製造業における女性の賃金は下回っているということが報告されています。

1998年BYにおける男女別日給平均値

男性女性男性を100とした場合の女性の日給比率
杜氏21,570N/DN/D
杜氏補佐17,350N/DN/D
15,413N/DN/D
製造管理14,6348,36957%
麹屋14,25910,95077%
酒母屋13,6759,28568%
醪係14,0668,94064%
舟頭13,4019,17468%
二番11,5857,09061%
釜屋12,9809,09770%
役助手11,9249,64681%
酒造工11,3987,62267%
精米長13,831N/DN/D
精米工11,8447,70965%
給食員10,0007,36074%
平均14,5307,81854%

木原高治「清酒製造業における雇用構造の変化と生産効率性」の表8「製造規模別・職種別酒造要員現金給与日額平均値」を元にSAKE Street作成

次に、「管理職に占める女性比率」を見ていきます。先ほど見た役職別の女性比率について最新の情報を把握するため、日本酒造組合中央会にヒアリングをおこなったところ(2023年10月時点)、同様の調査はしていないという回答が得られました。このため、近年の酒蔵における女性管理職割合を把握するのは困難な状況になっています。

そのため、SAKE Streetでは、管理職に占める女性比率に代わる指標として「女性役員を有する企業の比率」に近い数値を算出すべく、女性蔵元(代表)・杜氏のいる酒蔵のリストを作成しました。他にも知っている酒蔵がある方は、ぜひともSAKE Street編集部までご連絡ください。随時、表はアップデートしていく予定です。

女性が蔵元(代表)・杜氏を務める酒蔵

酒蔵銘柄エリア社長杜氏
日本清酒千歳鶴北海道
月の輪酒造店月の輪岩手
紫波酒造店紫宙、廣喜岩手
川敬商店黄金澤宮城
新澤醸造店伯楽星宮城
男山本店蒼天伝宮城
両関酒造両関秋田
喜多の華酒造きたのはな福島
花春酒造花春福島
鶴乃江酒造会津中将福島
笹の川酒造笹の川福島
大天狗酒造大天狗福島
結城酒造結ゆい茨城
稲葉酒造男女川茨城
富川酒造店忠愛栃木
相良酒造朝日榮栃木
町田酒造場町田酒造群馬
佐藤酒造店越生梅林埼玉
旭鶴旭鶴千葉
稲花酒造稲花千葉
鮎正宗酒造鮎正宗新潟
長谷川酒造越後雪紅梅新潟
諸橋酒造越野景虎新潟
高千代酒造高千代新潟
松乃井酒造場松乃井新潟
田中酒造能鷹新潟
石塚酒造姫の井新潟
皇国晴酒造幻の瀧富山
鶴野酒造店谷泉石川
御祖酒造遊穂石川
吉田酒造白龍福井
戸田酒造ダイヤ菊長野
若林醸造つきよしの長野
高天酒造高天長野
市野屋RYUSUISEN長野
尾澤酒造場十九長野
岡崎酒造信州亀齢長野
酒千蔵野川中島長野
大塚酒造浅間嶽長野
大雪渓酒造大雪渓長野
高沢酒造豊賀長野
湯川酒造店木曽路・十六代九郎右衛門長野
白木恒助商店達磨政宗岐阜
蒲酒造場白真弓岐阜
渡辺酒造醸白雪姫岐阜
浜松酒造出世城静岡
柴田酒造場孝の司愛知
澤田酒造白老愛知
金銀花酒造金銀花愛知
林本店百十郎岐阜
森喜酒造場るみ子の酒三重
若戎酒造若戎・義左衛門三重
平井商店浅茅生滋賀
向井酒造伊根満開京都
丹山酒造丹山京都
東和酒造福知三万二千石京都
池田酒造池雲京都
招徳酒造招徳京都
灘菊酒造灘菊兵庫
大関大関兵庫
梅乃宿酒造梅乃宿奈良
油長酒造風の森奈良
河合酒造出世男奈良
葛城酒造百楽門奈良
吉村秀雄商店車坂和歌山
高垣酒造龍神丸和歌山
大谷酒造鷹勇鳥取
稲田本店稲田姫鳥取
旭日酒造十旭日島根
一宮酒造石見銀山島根
辻本店御前酒岡山
今田酒造本店富久長広島
新谷酒造わかむすめ山口
はつもみじ原田山口
八千代酒造八千代山口
本家松浦酒造場鳴門鯛徳島
小豆島酒造MORIKUNI香川
山の壽酒造山の壽福岡
若波酒造若波福岡
古伊万里酒造佐賀
佐嘉酒造佐嘉佐賀
井上酒造角の井大分

蔵元=企業の代表を女性が務める酒蔵と定義。杜氏には製造責任者も含む。ご協力:長野県・湯川酒造店蔵元の湯川尚子さん、新潟大学日本酒学センター畑有紀特任助教、山本浩司さん

日本酒の酒蔵は全国に約1,500軒、そのうち現在も日本酒の製造を行っている蔵は約1,100軒ありますが、その中で女性が蔵元および杜氏を務める酒蔵はまだ80数軒であり、全体の5〜7%程度にあたります。

女性役員を有する企業の比率は、厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」によれば製造業では29.7%、社員100名未満の小規模企業では30%以上となっています。これらと比較すると、蔵元と杜氏以外にも女性役員がいる可能性を考慮しても、酒蔵の女性役員比率は低いと言えそうです。

まずは組合などの諸機関が、役職ごとの従業員数、正規雇用・非正規雇用、管理職・役員における女性割合、賃金差を調べていくことが、こうした現状を可視化し、必要に応じて改善していくことにつながっていくのではないでしょうか。

女性が酒造りをする中で不便なことは?

一方、アンケートの回答でも「男女の数を均一にする必要はない」という意見が見られたように、単に数を増やすことが重要というわけではありません。それよりも重要なのは、 「酒造りをしたい」と女性が感じたときに、働きやすい、または働き続けられる環境であるかどうかだと言えるでしょう。

酒造業はもともと女人禁制が敷かれていた歴史があり、古い酒蔵の中には女性が働くことを想定していない環境になっているところも多くあります。ここでは、アンケートの回答をもとに、女性の働き手が肉体面・精神面においてどのような点に不便さを感じるのかを見ていきましょう。

肉体面:力仕事、冷え、生理

最も多かった意見は、「力仕事」でした。具体的には、洗米、麹室への引き込み、留後の櫂入れ、大きい機械の操作などです。

「洗米時に10kg以上のお米が入ったカゴを振って水切りするのが大変です」

「米袋が30kgなど、単位が大きい。逆に、それさえなければ、男女関係なくできる仕事だと思います」

「男性が思いきり締め上げたバルブなどが自力で開けられないことがあります」

「ヤブタの蓋は、重いだけでなく幅があるので難しい。何枚か外すとすぐ握力がなくなります」

筋肉量が少ないという観点では、「酒蔵が寒く、体が冷える」という意見も何件か見られました。そのほか、男性用に整えられた環境が引き起こす不便さとしては、以下のような意見が挙げられました。

「女性トイレや更衣室が設置されていない」

「生理期間中のナプキンの交換に苦労しており、帰宅まで交換を諦めることもありました」

「麹室の作業の時に、男性は服を脱げるが、女性は脱げない」

「麹室の台などさまざまなものの高さが男性基準で作られているのでわずかに高く、作業をする際に無理がある姿勢になってしまいます」

精神面:セクハラ、バイアス、精神的負担

セクシャルハラスメントに関しては、現代社会においてはますます厳しく見られるようになっており、社内では特に気をつけているところも多いでしょう。しかし、アンケート結果を見ると、顧客や取引先などに不快な思いをしたというケースもあり、日本酒ファンを含めるさまざまな層の人々が意識を改めなければいけないことが見て取れます。

「社内ではなく、取引先を含めるとセクハラが商慣習的にあると感じます」

「親族以外の女性がいるというだけで、社長の愛人・彼女などと言われるのが面倒です」

「私は蔵元ですが、イベントで立っていてもおそらくパートだと思われて、相手にされないことがあります。逆に、パートの男性スタッフが立つと『蔵元の方ですか?』というお客様が増えるので、馬鹿らしいなぁと思います」

「『杜氏(蔵元)になりたいなら○○のところが嫁を募集しているぞ』などと冗談でも言われることが辛かったです」

また、前時代的な男尊女卑の意識が残るところもあるようです。

「『女だから仕事が遅い』という言い掛かりを受けたことがあります」

「『女性ならではの酒造り』を求められること。飲みたいもの、求められているものに男女は関係ないと思います」

「女性社員だけ炊き出しの手伝いをさせられたことがありました。構造的に、蔵元などに古い価値観の女性がいると、性差による役割を押し付けがちなのが難しいと感じます」

この意見からは、女性が働きやすい労働環境のためには、同じ女性もまた意識を変えていかなければないことが理解できます。

そのほか、肉体的なディスアドバンテージから、

「男性に負担をかけていると申し訳なく感じる」

「『これだから女は』と思われそうで、男性に頼みごとがしづらい」

といった精神的負担を感じる場面もあるというコメントが集まりました。

なお、50名中3名は、「女性だからといって不便なことはない」という回答でした。

女性蔵人のキャリアプラン:妊娠・出産はできるのか?

日本酒産業にかかわらず、女性は結婚・出産・育児などでキャリアを中断する可能性が高いと見なされ、これが就職・労働においてマイナス要因となることがあります。今回のアンケート回答には、雇用側、非雇用側それぞれから以下のようなコメントがありました。

雇用側「弊社の酒蔵はほとんど機械化されておらず、仕込み蔵が冷えすぎたり、麹室の温度がサウナレベルだったりと妊婦さんには危険すぎるため、製造現場の第一線への女性の登用には悩みます。醪管理などは女性にも向いていると思いますが、何人も雇えないとなると男性を優先した方がいいのだろうかと考えてしまいます」

被雇用側「入社できなかったいくつかの酒蔵において、女性であるという理由で面接を断られる、または造りの仕事における女性枠(担当できる仕事が限られる)が定員のために断られるというケースがありました。蔵のポテンシャルによって仕方ないこともあると思いますが、現代において、他業界では考えられない考え方が未だ残っている業界であると感じました」

一方、「妊娠・出産に際して酒蔵の仕事を続けることができるか」という問いに対しては、実際に酒蔵で就労した経験を通してみて、約半数に及ぶ回答者が「酒造り以外であれば続けることはできる」と考えていることがわかりました。

女性が酒蔵で働きづらい理由には、妊娠・出産などの人生の転換点において、仕事が続けにくいという事情もあります。重いものを運んだり、寒暖差の激しい環境で働くことは妊娠中の大きなリスクとなりますが、同じ職場で、事務や瓶詰などの仕事を続けながら、コンディションに応じて製造に戻るという形を受け入れてもらえるのは、理想的なあり方のかもしれません。

しかし、アンケート回答の中には、

「内勤メインの別のポジションに移りたかったが、そもそもポジションが限られている中小酒造メーカーにおいてはその選択肢がなかった

というエピソードを教えてくれたコメントもあり、中小企業の多い日本酒業界における難しさを伝えています。

また、結婚・出産をまだ経験していない回答者からは、

「結婚・出産などを考える年齢になりましたが、製造の仕事をしている一般社員で妊娠された方にお会いしたことがないので、経験者のエピソードが聞きたいです」

「妊娠・出産を経て働き続けるキャリアモデルが自社にないため、自分たちが道をつくることで後輩社員が安心して働ける環境を作れるのではと考えています」

など、ロールモデルが周囲にないことからの不安や課題感を抱えている様子が見られました。実際の経験者のインタビューなどをメディアで伝えていくことも、女性が働きやすい業界にとって必要なことなのでしょう。本記事を読んで、インタビューを受け入れてくれる妊娠・出産経験者の酒造経験者がいましたら、ぜひSAKE Streetまでご連絡ください。

そのほか、

「妊娠・授乳中にアルコールが飲めないのは酒造業のキャリアとして痛手になるのではないか」

というコメントもありました。

女性が働きやすい環境を作るための工夫とは?

それでは、実際に「女性が働きやすい酒蔵」とはどのような環境なのでしょうか。アンケートでは、実際に働いている酒蔵で取られている対策や、「こうなれば働きやすいのではないか」というアイデアを募りました。

肉体面の不便さを解消するには?

  • 機械の導入
    • 「力仕事は、コンベアやエアシューターを活用しています」
  • 重さを軽減する工夫
    • 「追水、麹、もろみなどを運ぶときに、試桶(※)ではなく、運びやすい大きさのバケツを使っています」
  • 身長差の解消
    • 「台がいたるところにあるほか、届かないところには熊手が置いてあり、高いところにあるものが取れるようになっています」
  • 役割分担
    • 「男性と女性がペアになって作業をおこなっています。例えば、洗米の時は、男性がお米を洗い、女性が時間を測るなど分担をしています」

※試桶:一斗(18L)ほどの容量を運べる取手付きの桶。桶自体が3kgほどある。ためしおけ・ためおけ・ためなどと呼ばれる。

精神面の負担を軽減するには?

  • 女性用の設備を整える
    • 「以前は女性の製造部員がいなかったため、女性用お手洗いが少なかったのですが、最近、増築をしました。女性が増えることで不便な点は、都度改善するよう努力しています」

    • 「麹室に入る前と入った後に、服を脱ぎ着する気軽な更衣室があるといいなと思っています。また、仮眠をとる場所が、男女同室かつ長椅子の上に横になる様式なので、男女別室で横になりやすい部屋があればいいのにと思います」
  • 性別ではなく「個人」で判断する
    • 「『女性は弱い』『女性は力がない』などの固定概念が強いと感じます。女性でも、力仕事は男性と大差なくできる人はいます」

    • 「力仕事でどうしても不可能な事はフォローが必要ですが、平等に仕事を任せられた方がやりがいになるのでは。逆に女性だからさせない仕事があり、掃除や洗濯を任せられるといった決めつけのほうが不自由だと感じます」
  • 男性も女性もお互いに気を遣い合う
    • 「体力的に出来ない事は男性に頼むまたは二人でやるという空気ができているので、働きやすいです。いろいろ気を遣っていただいていると感じていますが、今の空気が維持できるように、できないことをやってもらった際はお礼を伝える、やってもらって当たり前だと思わず『いつか出来るようになるぞ』という意思を見せる、できないことがあるぶん他の仕事をしっかりやるといったことを心がけています」

妊娠・出産後も働きやすい環境にするには?

  • 勤務時間・業務体系に柔軟性を持たせる
    • 「『8時から17時、1時間休憩あり』ではなく、「8時から12時、30分休憩」「13時から17時、30分休憩」の選択肢を設けてはどうでしょうか。また、最近は社内託児所を設ける企業もありますが、小さい地酒メーカーにその余裕がなければ、組合など地域単位で託児所を作ると良いかもしれません」

    • 「性別は関係ないですが、体験入蔵制度があるといいと思っています。都内で働く人がたまに働きに来れるのであれば、人手が足りないときに手伝いたい人と酒蔵をマッチングすることができるのではないでしょうか」

    • 「女性に限らず、酒蔵には『この場所にいなければいけない』という仕事が多いと感じます(製造なら製造場所、固定のPC、酒販店との注文で通常使われるFAXなど)。ITを活用し、遠隔管理のシステムやクラウドサービスを導入すれば、雇用の自由度も上がるのになぁと思っています」

    • 「学生アルバイトでも任せられる仕事(分析、粕はがしなど)はタイミー(※)のようなアプリを活用し、気軽に酒蔵で働ける機会を作るのはどうでしょうか」

ほかにもさまざまな意見が出ましたが、これらの対策を総括するようなコメントを最後に掲載したいと思います。

「隣の酒蔵が、女性が増えるのに合わせて、彼女たちが働きやすい現場を作るために作業方法や動線などを見直した結果、女性が働きやすいということは、男性にも、高齢者にとっても働きやすいということが明確になり、特に「女性」に特化する必要はないという結論に達していました。働きやすいように工夫することは、個人で、チームで、会社全体で、日々常に行うべきものであり、それを考えながら仕事ができる面白さは現場作業の醍醐味かもしれません

タイミー:隙間時間だけ働く(人手を募集する)ことができるスポットワーク専用アプリサービス

今回のアンケートでは、男性と平等に扱われることに喜びを感じ、気を遣われると逆に心苦しいという意見も複数見られました。酒蔵で働きたい女性は、決して“特別扱い”をされたいわけではなく、「男性と同じことができるようになりたい」と思っているはずです。

DEIの「E」を表す「Equity(公平)」は、「Equality(平等)」とは異なると言われています。下図で表すように、平等とは、同じ条件を与えること。対する公平とは、人によって合わせた条件を与えることで、立場が対等になることなのです。

本記事では、日本酒がまさに作られる現場である酒蔵をフィーチャーし、そこで起きる女性にまつわる課題について取り上げました。

次の記事では、その他の小売・マーケティング・プロモーションなどの立場から、日本酒と女性の課題を掘り下げていきます。

参考文献

【シリーズ】日本酒と女性
Part1:多様な働き手を受け入れるために、酒蔵の現場が乗り越えるべき課題とは?

Part2:女性らしくではなく、自分らしく。業界で働く女性5名が赤裸々トーク!

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