2020.11

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精米歩合60%でも、40%と同等の味わいを実現? - 扁平精米、原形精米を学ぶ

瀬良 万葉  |  日本酒を学ぶ

吟醸酒や大吟醸酒のように精米歩合の値が小さい(=米を多く削っている)日本酒は、雑味が少なく透明感のある、すっきりとした味わいを持っています。米を多く削れば削るほど、雑味の原因となるタンパク質や脂質などの成分が多く削り取られるためです。

しかし精米歩合の値を小さくするだけでなく、精米の方法を変えることによっても、雑味を減らせることをご存知でしたか?

今回の記事では、球形精米・原形精米・扁平精米という3つの精米方法を取り上げます。それぞれの方法について、精米後の米の形と酒造り上の特徴を学んでみましょう。

普通精米(球形精米)

ご紹介する3つの精米方法のうち、最も一般的な方法が「普通精米」です。

通常の精米作業では、精米機の回転数を上げることで、なるべく短時間での精米を目指します。その際、割れたり砕けたりする米の割合を少なくするため、精米機内の米の密度を低めに設定します。

この環境下では、米は短い軸を中心に乱回転します。その結果、厚みや幅に比べて長さがより多く削られていきます。これが普通精米です。

精米後の米が丸い形状に仕上がることから、普通精米は「球形精米」とも呼ばれます。普通精米(球形精米)は、短時間で精米できる反面、本来なら削らなくてもよいところまで削ってしまうという欠点があります。

原形精米

米粒の回転軸や削り方を工夫することで、米の長さ・幅・厚みを均等の割合で削るのが「原型精米」です。精米後の白米が、精米前の玄米と相似形になるため、この名前で呼ばれます。

タンパク質のような雑味の原因となる物質は、米の長さの部分だけでなく、厚み・幅の部分においても表面から近い部分により多く分布しています。したがって同じ精米歩合でも、原型精米と普通精米を比べると、原型精米のほうがより効果的にタンパク質を除去できます。

原型精米だと厚みの部分が他の部分に比べてあまり多く削られないため、次にご紹介する扁平精米に比べると、タンパク質の除去においてまだ不満が残るという意見も聞かれます。一方で出来上がった日本酒の酒質データは、原形精米と扁平精米とでほぼ変わらないという調査結果もあります(※)。

(※) 令和元年度醸造学会大会 「白米形状及び精米歩合と清酒品質との関連についての解析 」((独)酒類総合研究所、(株)サタケ)

原形精米では、精米にかかる時間が普通精米に比べて長く、扁平精米よりは短くなります。

扁平精米

原型精米よりも厚みをさらに多く削り、幅は原型精米ほどには削らないのが「扁平精米」です。

精米機の回転速度を落とし、排出口の圧力を上げることによって、その名の通り平べったい形に仕上がります。どの部分も米の表面から等しい厚さに削る「等厚精米」も、扁平精米の一種です。

扁平精米では、原形精米よりもさらに効率的にタンパク質を除去できます。したがって扁平精米を採用すれば、精米歩合が高めでも、雑味の少ない繊細な日本酒が造れるのです。60%の扁平精米で、40%の球形精米と同等のタンパク質除去が可能になるともいわれています。

ただし扁平精米には、砕米が多く、低精白では芽残り(タンパク質や脂質を多く含む「胚芽」と呼ばれる部分が削り取られずに残ってしまうこと)がしやすいという欠点もあります。

かつては、非常に長い精米時間もまた、扁平精米のデメリットでした。精米スケジュールや電気代などの費用を調整しなければならず、実用性が低かったのです。しかし、広島県の精米機メーカー・サタケ社が新開発した精米機のおかげで、近年では扁平精米にかかる時間が大幅に短縮可能になりました。

精米時間への懸念が消えることで、今後さらに扁平精米が普及すれば、米をあまり削らなくともクリアな酒質を持つ日本酒が増えてくるでしょう。

まとめ

今回の記事では、普通精米・原形精米・扁平精米と3つの精米方法をご紹介しました。最後にそれぞれの精米方法の特徴をまとめると、次のようになります。

精米方法を工夫することで、米を無駄なく使いつつ、雑味の少ない日本酒を造ることも可能です。消費者の間では透明感のある日本酒の人気が高まっており、また酒蔵にも、自家栽培などのこだわりをもって育てた米を、少しでも多く酒造りに使いたいという造り手が増えています。サタケ社の新しい精米機による時間短縮の実現も相まって、扁平精米を採用する酒蔵が増えていくかもしれません。

日本酒を飲んで「精米歩合の割にすっきりしている」と感じたら、米の種類や醸造方法だけでなく、精米方法にもぜひ思いを馳せてみてください。

参考文献:
日本醸造協会誌 第88 巻3 号「酒造用白米の形状と精米効率」齋藤富男(1993)
一般社団法人日本ソムリエ協会編『J.S.A SAKE DIPLOMA教本〔Second Edition〕』(2020)

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