2024.02
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日本酒と花粉症:日本酒好きによる対策や医師によるアドバイスも紹介
スギ、ヒノキ、イネ、ブタクサ……。文字を見るだけで具合が悪くなる方も多いのではないでしょうか。筆者も書いていて目が痒くなってきました。
香りや味を感じづらくさせてしまう花粉症。もっともメジャーなスギ花粉が飛散するのは1〜4月で、新酒の時期に丸かぶり。花見酒も、症状が邪魔をして心から楽しめませんよね。
そこで今回は日本酒好き&花粉症の方を対象にアンケートを実施。30名の方から、花粉シーズンの日本酒ライフへの影響や、どのような花粉対策をしているのか答えていただきました。
さらに、医師の方にも日本酒好きの対策について相談。医学的な見地からのアドバイスもご紹介します!
アンケート結果①花粉症は日本酒ライフにどれだけ影響するのか
Q1. どれだけ香り・味がしづらくなりますか?
まずは、花粉症によってどれだけ香り・味がしづらくなるかという質問。普段の味覚・嗅覚を「10」とした場合、5以下と答えた方が43%にものぼりました。4割もの人が、普段の半分も香り・味を感じることができていないということです。
10(普段と変わらない)と回答した20%を除くと、程度の差はありますが、80%の方が「香りや味がしづらくなる」と感じています。花粉の症状が鼻に出る方は多く、嗅覚と味覚は密接に関わっているため影響が大きいのでしょう。
Q2. 日本酒の楽しみにどれくらい影響しますか?
続いて、味覚・嗅覚への影響が、どれだけ楽しみ方に影響するのかを尋ねました。こちらも、程度にばらつきはあるものの、80%の方が「普段どおり楽しめていない」と感じているようです。大好きな日本酒を、美味しく味わえないのは悲しいですよね。筆者も花粉症シーズンに日本酒を飲む際、鼻がつまっていて香りを感じられなかったり、喉が荒れて飲みづらかったりした経験があります。
Q3. 花粉症の症状があるときも、「日本酒を飲みたい」と思いますか?
花粉症になると、「日本酒を飲みたい」という思いは変化するのでしょうか。
さすが日本酒好きのみなさん。70%もの方が、「辛くても飲みたい」と回答しました。「まったく飲みたくない・飲まない」を選択した方はいませんでしたが、それでも30%の方が「あまり飲みたくない」を選択するほど、花粉症は辛いものです。
日本酒を仕事にしている人の苦労は?
プライベートで日本酒を楽しむファンに限らず、関連する仕事をしている方は、花粉シーズンでもテイスティングや利き酒をする機会があります。花粉症と闘いながら仕事をするなかでの苦労と対策についてうかがいました。
経験談①(酒販店店員):テイスティングは鼻の調子が比較的いいときに
「点鼻薬や飲み薬で症状を抑えながら、鼻の調子が比較的いいときを狙ってテイスティングしています。対策としては、かかりつけ医に処方してもらう点鼻薬と、ドラッグストアで買える一般薬を併用しています」
経験談②(蔵人):鼻の中にワセリンを塗って対策
「花粉が入ってこないよう、鼻の中に綿棒でワセリンを塗っていますが、感応評価や嗅ぎ分けなどで支障を感じた記憶はありません。花粉症がひどいときに、鼻をたらしながら営業したことはあります」
経験談③(研究職):味覚への影響を抑えるため薬も控え、気合で乗り切る
「数年前までは、花粉症シーズンになる前に内服薬を服用していましたが、味覚に影響を感じたので今は点鼻薬だけで乗り切っています。あとは気合です(笑)。症状がひどくなるのでコーヒー、酒もなるべく控えています。利き酒シーズンは風邪もひけないので色々とストレスですね」
本来の官能センスが発揮できない中でお仕事をしなければならないのはかなり苦しそうです。
アンケート結果②日本酒好きの花粉症対策
それでは、日本酒好きの人たちはどのような花粉症対策をしているのでしょうか。
Q4. 花粉症の対策をしていますか?
16.7%が「対策をしていない」と回答。アンケート①でとくに症状を感じていなかった20%の方が占めていると思ったのですが、個別に見てみると、どちらの質問にも10段階で4(香り・味・楽しみが6割も減少してしまう)と回答している方もいました。薬と日本酒の飲み合わせを気にしているのかもしれません。
アンケートでは「酔うと麻痺するのか、目のかゆみや鼻水が止まり、花粉症の症状が緩和される」という意見も寄せられました。
Q5. 効果があると感じる対策方法があれば教えてください。
アンケートでお答えいただいた、飲みながら花粉と戦うための対策方法についてまとめました。
①お酒を飲み始める時間を踏まえて薬を飲む
抗アレルギー剤とアルコールを同時に摂取すると、薬の効果が強く出すぎてしまい、強い眠気や認知機能の低下、意識障害や呼吸障害に陥る危険性があります。 アンケートでは「最低でも服用から3〜4時間空けて飲む」という意見が寄せられました。私もお酒を飲む日は基本的に薬を控えますが、どうしても症状が辛いときは飲み会の時間から逆算して服用しています。
②お茶を飲む
緑茶などに含まれるカテキンには、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの放出を抑制し、目のかゆみ、鼻水、くしゃみといった症状を緩和する効果があります。 回答者の中に、とくに効果の高いメチル化カテキンを多く含む「べにふうき茶」を飲んでいる方がいらっしゃいました。カテキンは利尿作用があり、二日酔いなどの原因となるアセトアルデヒドを排出する働きもしてくれるので、日本酒を飲みながらの花粉対策にぴったりです。
③鼻うがい
鼻うがいは、鼻の粘膜に付着した花粉を直接洗い流すので効果は抜群です。ただし、やりすぎると粘膜を傷つけ、炎症を起こしている場合は症状が悪化してしまうため、注意が必要です。 また、水道水での鼻うがいは禁物。水道水に含まれている菌が、花粉で荒れて傷ついた粘膜に付着して繁殖し、慢性副鼻腔炎を引き起こす可能性があります。鼻うがいには、抗菌処理された専用の商品を使いましょう。
④鼻の粘膜を焼く
レーザーで直接、鼻の粘膜を焼く手術です。焼いた部分は花粉が付着しても反応しにくくなるためアレルギー症状が緩和されます。鼻づまりの症状が特につらい方に効果的です。粘膜は再生するため、効果が続くのは1〜2年です。治療時間は30分ほどで終わり、痛みや副作用もほとんどないとされていますが、治療後1週間程度は鼻の中が腫れて、鼻づまりや鼻水の症状が一時的に悪化することがあります。
⑤舌下免疫療法
舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質を少量から投与して体に免疫をつけ、アレルギー症状を和らげる「アレルゲン免疫療法」のひとつです。治療薬を舌の下に置き、規定時間保持したあと飲み込みます。体質そのものを改善させる治療法ですが、3〜5年ほどは毎日服用が必要です。その後は5〜7年ほど効果が持続するとされています。
⑥とにかく花粉を吸わない
花粉症の鉄則は「吸わない・浴びない・持ち込まない」です。 不要不急の外出を控え、洗濯物は部屋干し。外出時はゴーグルやマスク、帽子で防御して、帰宅したら玄関前で衣類についた花粉を払い落とし、すぐにうがいと鼻うがいをして、シャワーを浴びて、室内に花粉を持ち込まないように気をつけましょう。
Q6. お酒を飲むと、花粉症の症状が悪化すると感じますか?
アンケートの最後に、お酒によって花粉症の症状に影響があるかを尋ねてみました。
悪化する・やや悪化すると答えた方と、悪化すると感じたことはない方が、どちらも46.7%という結果になりました。悪化すると答えている方のほとんどが、Q3(花粉症の症状があるときも、「日本酒を飲みたい」と思いますか?)に対して「飲みたい」と回答しているのも興味深い結果です。
医師から、花粉症のお酒好きへアドバイス
最後に、この記事を監修してくれた医師の茨木栄梨先生にアドバイスをいただきました。
「花粉症の薬とお酒を一緒に飲むことによって、眠気が強く現れたり、頭痛がしたり、悪酔いしたり、薬が効きすぎることがありますので、処方薬を内服している場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
一般的には、薬とお酒は3〜4時間ほど空けるとよいと言われています。また、内服する際は、多めの水分と一緒にとるとよいでしょう。花粉症の対策は、花粉が大量に飛び始める前から飲み始めることが重要ですので、1〜2月から始めるのが効果的です。
薬に頼らない対策としては、マスクやゴーグル、空気清浄機などを利用して、花粉への接触を最小限にすること、家の中へ極力花粉を持ちこまないようにすること。薬を飲むことに抵抗がある方は、規則正しい生活・適度な運動をおこない、免疫力を高めておくことで症状の緩和につなげましょう」
まとめ
日本酒好きのみなさんは、対策をしたり、諦めて受け入れたりしながら、花粉に負けず日本酒を飲み続けていることがわかりました。 辛く厳しい花粉症シーズンにおいても大好きな日本酒を楽しむために、これからも予防と対策をしていきましょう!私は今回のみなさんの回答を読んで、手軽に試しやすい「べにふうき茶」を飲んでみようと思いました。 花粉症は、突然発症するケースも少なくありません。今はまだ花粉症ではない方も、明日は我が身と思って本記事を参考にしていただければと思います。
監修者プロフィール
茨木 栄梨(いばらぎ・えり)
酒好き医師。専門は麻酔科・産業保健(産業医)。北海道出身、ヒューストン在住。
バンコクやニューヨークにも在住歴があり、世界各地で日本酒を楽しんでいます。
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