2019.01
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日本酒の「酒母」とは? - 日本酒造りの重要な土台について解説
日本酒の製造プロセスには「酒母」というものを作る工程があります。日本酒造りの格言で「一麹、二酛、三造り」という格言がありますが、「酛(もと)」とは酒母の別称のことで、日本酒造りにおける酒母の重要性を説いています。
酒母のタイプによって、造り方が異なっており、それぞれ味わいや香りの特徴があるのでご紹介します。
酒母(しゅぼ)とは?
酒母とは、まさに「日本酒の母」のような存在で、日本酒を作る土台となる液体です。「蒸米」「麹」「酵母」「水」「乳酸」によって酒母は作られます。酒母を造る目的は、アルコールを生成するための酵母を大量に培養することです。
この酵母は非常にデリケートで、微生物や雑菌が入り込むとすぐに死んでしまいます。しかし酵母は酸性に強いという特徴があり、一方微生物や雑菌は酸性に弱いため、酒母の環境を酸性に保つことが重要となります。
そこで酒母を酸性に保つために「乳酸」を用いるわけですが、この乳酸をどのように得るかで酒母のタイプが「速醸系酒母」と「生酛系酒母」に分かれます。
速醸系酒母(そくじょうけいしゅぼ)
速醸系酒母とは、人工的に作られた乳酸を用いた酒母のことをいいます。
乳酸を酒母に直接投入することで、すぐに酸性の状態にできるため安定かつ効率的に酒母を育成することができます。酒母造りの期間は約2週間程度です。
速醸系酒母で造られた日本酒は、生酛系と比べて淡麗な傾向があります。
関連記事:速醸の酒母造り、速醸造りの日本酒を学ぶ
生酛系酒母(きもとけいしゅぼ)
生酛系酒母とは、酒蔵の中に生息する乳酸菌を取り込むことによって造られる酒母です。乳酸菌が作り出す乳酸によって酒母を酸性にします。
天然の乳酸菌を相手にすることもあり、生酛系酒母の造りは速醸系と比べて手間も時間もかかります。酒母造りの期間は約3週間から1ヶ月程度です。
乳酸が十分に生成する前に雑菌などが入り込めば、酒母に悪影響が出てしまいます。雑菌や悪さをする微生物が入らないよう、酒蔵内の環境も高いレベルで整備されなくてはなりませんし、酒母の監視も頻繁に行わなければなりません。
生酛系酒母で造られた日本酒は乳酸菌の影響によって、速醸系酒母と比べると濃厚で酸味のある味わいになりやすいという特徴があります。
生酛造りとは?
生酛系酒母のうち伝統的な「山卸し(やまおろし)」という作業を行うものを「生酛造り」または「生酛」といいます。
山卸しとは、酒母に投入されたお米をすり潰す作業のことです。なぜお米をすり潰すのかというと、一昔前までは、お酒造りに適した米でなかったり精米技術が未熟だったため、お米が溶ける(糖化)までの時間が長く、雑菌などに侵されて酒母が悪影響を受けるリスクが高かったからです。そのリスクを下げるために、糖化までの時間を短縮しようと山卸しが行われていました。
山卸しは非常に重労働で、しかも夜通し寒い中行われるので非常につらい作業です。
関連記事:生酛の酒母造り、生酛造りの日本酒を学ぶ
山廃(やまはい)造りとは?
「山廃」とは、生酛系酒母のうち生酛造りで行われていた「山卸し」を行わないものをいいます。山廃の由来は「山卸しを廃止」したから「山廃」です。
山卸しをしなくても良くなった背景には、日本酒造りの技術進化があったからと言われています。酒造りに適した米の普及、精米技術の向上のほか、「水麹」という、麹の持つ酵素を仕込み水に溶け込ませる工程を経ることで、山卸しをしなくても、山卸をした場合と同様の酒質が得られるということが科学的に明らかになりました。
しかし、生酛造りにこだわる酒蔵も存在します。山卸しをすると酒母中の成分が均一になってバランスがよくなるといった意見や、酒母内の環境が変化するので味わいや香りにも影響が出るという意見の酒蔵もあって、非常に奥深い分野となっています。
関連記事:山廃の酒母造り、山廃造りの日本酒を学ぶ
まとめ
酒母は日本酒造りでとても重要な工程の一つです。「速醸」や「生酛」「山廃」といった酒母の違いによって、同じ酒蔵が造るお酒でも大きく味わいが変わってきます。皆さんの日本酒の楽しみ方に、酒母の違いという切り口も入れてみてはいかがでしょうか。
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