「無濾過生原酒」とはどんなお酒?言葉の意味から味わいの特徴まで詳しく解説

2022.11

01

「無濾過生原酒」とはどんなお酒?言葉の意味から味わいの特徴まで詳しく解説

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

近年、人気が高まっている日本酒のジャンル「無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)」。漢字6文字のものものしい名前に反して、日本酒に飲み慣れていない人にもわかりやすいおいしさが魅力のお酒です。 この記事では「無濾過生原酒」の言葉の意味からその味わいの特徴、オススメの飲み方や保存方法まで丁寧に解説していきます

しぼりたての味わいを楽しめる無濾過生原酒

無濾過生原酒という言葉を分解すると、「無濾過」「」「原酒」という3つの要素に分かれます。 「無濾過」とは濾過していない、「生」とは加熱(火入れ=低温加熱殺菌)していない、「原酒」=水を加えていないということを意味します。

言ってしまえば、しぼった後に「何もしていない」のが無濾過生原酒。つまり、しぼりたての味わいを楽しめる日本酒だということです。しぼりたての日本酒がどんな味わいになるのか、これら3つの要素それぞれの製法の特徴を見ながら解説していきましょう。

「無濾過」=濾過していない

日本酒の「濾過」とは、もろみを液体(お酒)と個体(酒粕)に分けたあと、液体を炭などのフィルターに通すことをいいます。これによって、雑味や好ましくない香りを除去したり、酵素や乳酸菌を除去したりして、品質を保持することができます。また、搾った時点の日本酒は基本的にやや緑がかった薄い黄色をしていますが、これを無色透明に近づける効果もあります。

しかし、濾過によって、日本酒が持つ華やかな香りやコクを感じさせる要素も一部取り去られてしまいます。

無濾過の日本酒は、そういった香りやコクをそのままに感じられるお酒。濾過済みの日本酒はバランスが取れてスッキリとした味わいになり、無濾過は味の要素が多く、奥深い風味になる傾向があります

ちなみに、濾過の方法として、かつては「活性炭」という炭に取り除きたい成分を吸着させる方法が一般的でしたが、現在はメンブレンや中空紙のフィルターに日本酒を通す濾過機も使用されています。

※参考
メンブレンフィルターを使用した濾過機(塚本鑛吉商店ウェブサイト)
中空紙フィルターを使用した濾過機(塚本鑛吉商店ウェブサイト)

「生」=低温加熱殺菌(火入れ)をしていない

日本酒造りには「火入れ」と呼ばれる低温加熱殺菌の工程があります。日本酒を湯煎などの方法で60〜65度まで加熱することで行われ、劣化をもたらす「火落ち」と呼ばれる乳酸菌や、味のバランスを崩してしまう酵素などを死滅、失活させることを目的としてます

火入れによって、味の変化を防ぎ、常温での保管が可能になります。火入れを行ったお酒は味が落ち着いてすっきりとし、より滑らかになる傾向にあります。

生は、この火入れという工程を経ていない分、もぎたての果実のようなフレッシュでみずみずしい味わいが残ります。 生酒は変質しやすく、冷蔵での輸送・保管設備が整備されていなかった時代にはほとんど流通していませんでした。近年、輸送や保管の技術が発展するとともに、流通が盛んになってきています。

「原酒」=加水調整をしていない

加水調整はその文字の通り、日本酒に水を加える工程です。発酵したばかりの日本酒はアルコール度数が高い(18〜20度)ので、それを調整するのに加え、香り・味わいを適度なバランスに調節するために行われています。

加水調整されていない「原酒」は、水が加えられていない分、濃厚な味わいになります。またアルコール度数が高いため、力強さを感じられるのも特徴的です。 一方、近年では発酵を早い段階で止めることで、アルコール度数を13度などの低めに抑えた原酒も登場しています。

「無濾過生原酒」の楽しみ方、賞味期限と保存方法

無濾過生原酒は日本酒本来の香りや味わいをそのままに詰め込んだ、フレッシュさを感じられるお酒だということを説明してきました。ここからはそんな「無濾過生原酒」の楽しみ方、賞味期限と保存方法を見ていきましょう。

「無濾過生原酒」は、まずは冷やして

無濾過生原酒のみずみずしいフレッシュな風味や味わいを存分に楽しむために、まずは冷えた状態で飲むことをオススメします。さらに、氷を入れてロックで飲むと、氷が溶けるにつれて味わいの変化を楽しむことができるでしょう。

一方、「生酛」や「山廃」という伝統的な製法を使ったお酒、あるいは精米歩合が70〜90%などのあまり米を削っていないお酒で、旨味のしっかりとしたタイプは、温度をしっかりと上げて燗酒にするのもオススメです。アルコール度数が高いお酒の場合は60度程度まで温めて、少し冷ましてから飲んでも良いでしょう。

いずれにせよ、無濾過生原酒は常温やぬる燗などの温度よりも、しっかりと冷やす、またはしっかりと温めると、美味しく飲めることが多いのです。

「無濾過生原酒」にも賞味期限はないが、必ず冷蔵で保管

無濾過生原酒は火入れがされていないため、冷蔵で保管することが推奨されています。

もともと保存がきく日本酒には賞味期限の表示義務がありません。しかし、冷蔵していてもある程度味わいが変化しやすいのは、「無濾過」かつ「生」である無濾過生原酒の特徴と言えます。

無濾過生原酒ならではの日々変化する味わいも楽しみながら、冷蔵保管で開栓後1週間程度を目安に飲みきれば、大きな変化を感じることは少ないでしょう。もちろん、1週間を過ぎるとダメになるということではないので、自分のペースでなるべく早めに飲めば問題ありません。あえて長期間保管して熟成させる「生熟(なまじゅく)」を好む日本酒ファンもいますが、保管や味の変化に慣れてから興味があればチャレンジしてみるという程度で大丈夫です。

現代だからこそ楽しめる「無濾過生原酒」の味わいに浸りましょう

品質管理や、冷蔵技術が伴っていなかった昔では滅多に楽しむことができなかった無濾過生原酒。濾過や殺菌、加水など日本酒の製造過程の一部を行わないからこそ、作りたての味わいや香り、みずみずしさを存分に楽しむことができます。

何もしていないからこそおいしく、一般的なお酒よりもデリケートな無濾過生原酒を通して、日本酒の造りの奥深さ、味わいの幅広さを楽しんでみてはいかがでしょうか。

話題の記事

人気の記事

最新の記事