「美山錦」ってどんな酒米? - 全国3位の生産量を誇る酒米の系譜、特徴、産地、日本酒の味わいを解説

2022.03

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「美山錦」ってどんな酒米? - 全国3位の生産量を誇る酒米の系譜、特徴、産地、日本酒の味わいを解説

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

日本を代表する酒米のひとつである「美山錦(みやまにしき)」は、全国3位の生産量を誇ります。軽やかなキレのある味わいが特徴で、吟醸づくりに適していることから華やかな香りをもつ日本酒にもよく使われる品種です。 美山錦の特徴や系譜、歴史について解説します。

美山錦とは

美山錦の歴史は比較的新しく、1978年に長野県の農事試験場で誕生しました。長野県の美しい自然の中で作られ、山の頂上にある雪のような心白があることから「美山錦」と命名されました。 「酒米の王様」とされる山田錦、新潟県を中心に全国で使われる「五百万石」に次ぎ、酒米のなかで第3位の生産量を誇る品種ですが、各県が開発するオリジナル酒米が増えた影響もあり、生産量は年々減少傾向にあります。

美山錦は稲が比較的早く成熟する品種である「早稲(わせ)」に分類されます。一般的に、早稲の品種は米質が硬く醸造の際に溶けにくいという性質があり、美山錦もこの特徴を備えています。そのため、すっきりと軽やかな味わいとキレを持つ日本酒になりやすい傾向があります。

もう一つ、美山錦の特徴に「心白発現率」の高さがあります。「心白」とは、米の中心部に現れることのある、白く不透明な部分のことです。心白はでんぷん質で構成されますが、その密度が低く隙間がある状態になっています。この心白があることで麹菌の菌糸が米の中心部分まで入り込みやすくなり、良質な麹が作りやすくなります。「心白発現率」とは、この心白の現れやすさのことです。これが高い美山錦は、糖化と発酵に適しており、吟醸酒に向いているとされています。

これらの特徴から、美山錦を使用した日本酒はすっきり淡麗な味わいで、吟醸づくりによる華やかな香りが感じられるものが多いです。

美山錦は栽培の面でもメリットがあり、寒さに強い品種です。したがって、東北地方や山間部などの気温の低い知識での栽培に適しています。

美山錦の系譜

美山錦は1978年、「たかね錦」に放射線処理により変異を誘発して誕生した酒米です。たかね錦は寒冷地でも育てやすく多収であったため長野県でよく使われていましたが、小粒で心白発現率も低く、酒造適性は高いとは言えませんでした。育てやすく酒造適性も高い美山錦は、待望の品種として喜ばれました。

たかね錦は、1939年に「北陸12号」を母、「農林17号」を父として同じ試験場で誕生した酒米で、祖先には幻の米と呼ばれた有名な「亀の尾」があります。

その後、酒米として優秀な性質を持った美山錦の子として1995年に生まれたのが「出羽燦々(でわさんさん)」です。出羽燦々は、それまでは山形県の主力だった美山錦に取って代わるために生まれた酒米です。青森県生まれの品種で耐冷性が高く、倒伏しにくい「華吹雪」と美山錦を交配することで、山形県オリジナルの品種として登場しました。

美山錦の産地

美山錦は寒さに強い品種であるため、開発地である長野県を中心に幅広い地域で栽培されています。長野県以外の主な産地としては、秋田、山形、福島、宮城といった東北各県が挙げられます。

美山錦の産地別生産量生産量
長野県3,898トン
秋田県1,565トン
山形県524トン
福島県194トン
宮城県131トン

参考:農林水産省 酒造好適米の農産物検査結果(生産量)と30年産の生産量推計

日本酒造りが盛んな寒冷地で育てやすく、吟醸酒がつくりやすい美山錦は酒造りで重宝されており、このことが全国第3位の生産量を誇る品種であることにつながっています。

まとめ

美山錦はたかね錦への放射線照射によって生まれた、主要な酒米のなかでは比較的新しい品種で、耐冷性に優れているため寒冷地での栽培が可能です。主に長野県や東北地方の各県で生産されています。 早稲で比較的溶けにくく、心白発現率が高い特徴を活かし、淡麗ですっきりとした味わいの日本酒に多く使われている酒米です。

酒米の特性を知ることで、自分の好みに合った日本酒が見つけやすくなります。他の酒米についての解説記事もぜひご覧ください!

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