「金紋錦」ってどんな酒米? - 長野県で生まれ石川県で守られた酒米の系譜、特徴、生産地、日本酒の味わいを解説

2022.04

13

「金紋錦」ってどんな酒米? - 長野県で生まれ石川県で守られた酒米の系譜、特徴、生産地、日本酒の味わいを解説

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

長野県で誕生した「金紋錦(きんもんにしき)」は、約20年間にわたって石川県の酒蔵・福光屋が全量買取による契約栽培で守ってきた酒米です。近年では長野県内の酒蔵で広く使用される酒米となり、復活を遂げたとして注目を浴びています。今回は金紋錦の特徴や系譜、産地などを紹介します。

金紋錦、衰退と復興の歴史

金紋錦は、もともと長野県で誕生した酒米です。それがなぜ石川県の酒蔵で守られるようになり、なぜまた長野県で広まったのかを解説します。

栽培が難しかった金紋錦

金紋錦は1956年から開発が始まり、8年後の1964年に品種登録がされましたが、栽培が難しく、当時の技術では精米しづらいという弱点を持っていました。1978年に長野県の奨励品種「美山錦」が誕生したこともあり、金紋錦離れが進みます。

品種登録された当初から栽培に取り組んできた木島平村の農家たちは、買い手の減る状況でもほそぼそと金紋錦の栽培を続けていました。それでもいよいよ栽培を続けることが困難になるところで救いの手を差し伸べたのが、石川県を代表する老舗酒蔵・福光屋です。

石川県・福光屋による保護と、再び長野県で評価されるまで

福光屋では以前から金紋錦を使用して「黒帯」という銘柄の酒が造られており、1988年に全量買取の契約栽培を開始しました。福光屋はただ米を買い取るだけではなく米作りの指導もおこない、金紋錦の品質向上にも力を入れます

その後、金紋錦は度重なる協議の末、福光屋の承諾を得て2006年から長野県の飯山の酒蔵でも使われるようになりました。それから10年を経て県内での評価も高まり、2016年ごろからは長野県内にある多くの酒蔵が金紋錦を使用するまでになったのです。

(※1)上記参考および画像出典:めぐる木島平「先人達より引き継がれる高品質な酒米・金紋錦(※)」

金紋錦の味わいとは

金紋錦は、小規模な契約栽培で造られていることから価格も比較的高めであるため、付加価値を出すためにも高精白で香り高い吟醸酒として作られることが多いです。

たとえば長野県で金紋錦を使った酒造りの復活にも携わった田中酒造店の「水尾特別純米酒 金紋錦仕込」は、淡白でシンプルな味わいを軸にしつつ金紋錦の深みや香りを生かしています。一方で「水尾 純米吟醸」は金紋錦らしいコクのある味わいでありながら、透明感を持ち華やかな香りが特徴的です。

一方、金紋錦のもたらすコクは熟成にも向いています。例えば、福光屋の「黒帯 燦々 五年熟成 純米」や「黒帯 飄々 古々酒 純米吟醸」は、熟成によるコクをしっかりと引き出し、バランスの取れた酒質を実現しています。

金紋錦の系譜

金紋錦は1964年に父を「山田錦」、母を「たかね錦」として交配されて誕生しました。山田錦は「酒米の王様」とも呼ばれ、出品用の大吟醸酒にも使われることが多い酒米です。また、たかね錦は寒さに強い品種として長野県で誕生した酒米です。

金紋錦から生まれた品種としては、「改良八反流」との交配によって島根県が2003年に開発した「佐香錦」という品種があります。佐香錦で造られた日本酒は「濃醇型で、味に幅があり、ソフトで、のどごしがよい」と評価されおり(※2)、島根県では五百万石・山田錦に次いで3番目に栽培量の多い酒米になっています。

(※2)参考:高橋 眞二ほか「水稲新品種‘佐香錦'の育成」(島根県農業試験場研究報告 35号, 2004)

金紋錦の産地

金紋錦の産地は、発祥の地である長野県。栽培が難しく、生産量が減少していくなかでも金紋錦の栽培を続けた木島平村が有名です。長野県は3,000m級の山岳地帯を有する土地で、冬になると雪が降り積もり、春になれば豊かな雪解け水が酒米を育てる田んぼを潤します。また、山間地特有の寒暖差の大きい気候は米づくりに適しているため、長野県の米の生産量は多く、酒米の栽培においても長い歴史があります。

長野県内では木島平以外の産地も増えはじめた金紋錦ですが、今のところ県外では栽培されていません。2014年からは長野県の酒販店や農家が中心となって金紋錦サミットを開催しており、金紋錦を使う酒蔵や金紋錦生産者だけでなく、県外の酒販店なども含め数十名の人々が集まるようになっています。このように、現在では県内の多くの人々が金紋錦を守り続けるために活動するようになっています。

まとめ

今回は金紋錦の歴史や系譜、産地などを解説しました。長野県で誕生した金紋錦は、栽培の難しさによって生産量が減り、木島平村のみで栽培される窮地に立たされました。石川県の酒蔵福光屋による全量買取の契約栽培によって九死に一生を得て、近年ではふたたび長野県で広く使われています。

稀有な運命を辿って復活した金紋錦は、幅広い味わいの日本酒に使用される酒米です。石川県と長野県、それぞれの土地で造られた金紋錦の日本酒を飲み比べてみるのも面白そうですね!

[関連記事]






話題の記事

人気の記事

最新の記事