2020.09

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地酒の「地」ってなんだろう - 酒スト的地酒論(0) なぜ、今「地酒」なのか

酒スト編集部  |  酒スト的地酒論

いま、ここで酒を造る意味

いつでも、どこでも美味しく日本酒が飲めるようになってきています。
全国の酒蔵で、さまざまな方法で造られた美味しいお酒。それらは冷蔵配送など、物流システム整備の恩恵を受け、全国どこでも品質を保って流通するようになりました。
また、商品もさることながら情報の流通も加速し、美味しいお酒に関する情報は世界中にリアルタイムに広まります。
飲んだことのない美味しいお酒と出会うのは、一昔前よりも格段に簡単になりました。

「美味しいお酒」がありふれる環境ができつつある中、一部の酒蔵は美味しさだけではない独自性や、その酒蔵固有の価値を追求する試みを始めています。
なかでも、県産米、県産酵母といった地元の原材料に注目した取り組みは、その代表と言えるでしょう。
こうした取り組みは、全てが「酒蔵ごとの個性」の獲得につながっているとは言えないかもしれません。
しかし、酒造りのアイデアや技術と、地域原料の特性を組み合わせることで独自性を発揮し、消費者からも高い評価を得る酒蔵も生まれてきています。
代表例として、秋田県産の木材を使った木桶、蔵発祥の酵母、そして自家栽培を含む地元産の米、といった要素を組み合わせる新政酒造を挙げることができるでしょう。

ここで、世界中で広く楽しまれている他の嗜好品について見ると、ワインの「テロワール」、クラフトチョコレートの「Bean to Bar」、スペシャリティコーヒーの「From Seed to Cup」など、それぞれ独自の「地域との関わり」を重視する価値観を備えており、それが現代の消費者からの支持につながっています。

日本酒の輸出が増えつつあり、海外でも美味しい「SAKE」が造られるようになったいま、日本酒/SAKEも他の嗜好品と同様に、「この土地で酒を造る意味」が説明できることの重要性が増しています。

「地酒」という言葉の魅力と可能性

あらためて日本酒の「地域との関わり」に注目してみると、「地酒」という言葉が思い当たります。
地酒という言葉は、昭和50年前後に「全国地酒頒布組合」(現:日本地酒協同組合)が使い始めたと言われており、その直後の「地酒ブーム」で広く浸透しました。
そして、約40年を経た現在も広く用いられているのは、多くの人がこの言葉にポジティブな印象を持っているからだと思います。

筆者もその一人として、日本酒を味わう際に、「地=酒蔵の地元」に思いを馳せつつ、様々な日本酒(ここでは海外産の「SAKE」を含む)を楽しんでいます。
そして、国内外の日本酒を取り巻く現状、その中での意欲的な酒蔵の取組について知れば知るほど、この「地酒」という概念を掘り下げることが、日本酒ならではの地域との関わりを見出すことにつながり、日本酒の未来に多少なりとも役立つのではないかと考えるようになりました。

このような問題意識を起点とする本シリーズ「酒スト的地酒論」は、「地酒」を「地=酒蔵の地元」と「日本酒」が結びついた概念として緩やかに捉え、4回にわたって両者をつなぐ様々な要素を取り上げます。そして、最後にこれらを統合することによって、この言葉が持つ魅力と可能性について考えてみたいと思います。

連載目次

■掲載済み
第1回:原材料 - 日本酒の原材料は、ローカルでありグローバル

第2回:流通と消費 - 進む地方の衰退。「地元で愛される酒」の将来は?

■未掲載
第3回:地域経済 - 地元に貢献し、地元によって生かされる地酒
第4回:文化・コミュニティ
第5回:まとめ - 「地酒」の魅力と可能性

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