普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは

2021.12

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普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

「普通酒」とはどのようなお酒なのでしょうか?
「普通」と言いながら、店頭にたくさん並んでいる日本酒のなかに「普通酒」と書いてあるお酒はありません。日本酒は、基本的に特定名称酒と普通酒に分けられ、特定名称酒に分類されない日本酒のことを普通酒というのです。

こちらの記事では、普通酒とはどのようなお酒か解説するとともに、おすすめの楽しみ方も一緒にご紹介します。日本酒の選び方の幅も広がるのでぜひ参考にしてみてください。

普通酒とは

普通酒について学ぶ前に、普通酒ではないお酒、「特定名称酒」について知っておきましょう。

まず、特定名称酒になるためには次の条件を満たしている必要があります。

  • 米、米麹、醸造アルコール以外の原料を使用せず、また醸造アルコールの使用量は白米重量の10%以下であること
  • 3等以上に格付けされた玄米、またはそれに相当する玄米を精米して使用していること
  • 米麹の使用割合が15%以上であること

そして以下の図のように全部で8種の特定名称があり、精米歩合(※1)、醸造アルコール(※2)の添加有無と吟醸造り(※3)の有無によって区分されています。

特定名称醸造アルコール吟醸造り精米歩合
純米大吟醸不使用50%以下
純米吟醸不使用60%以下
特別純米不使用-60%以下 または 特別な製造方法
純米不使用--
大吟醸使用50%以下
吟醸使用60%以下
特別本醸造使用-60%以下 または 特別な製造方法
本醸造使用-70%以下

(※1)精米歩合とは、米の精米の程度を表したもの。数値が低いほど、雑味等の原因となる米の外側部分を多く削っている。
(※2)醸造アルコールとは、おもにサトウキビを原料として醸造・蒸留された食用アルコールで、添加することにより軽快な味わいと華やかな香りが引き出される。
(※3)吟醸造りとは、低温でゆっくりと発酵させ、特有の華やかな香り(吟醸香)を持つように醸造すること。

このように一定の水準を満たした日本酒に限り、上表の「特定名称」をラベルに記載することができるのです。

そして、上記のような定められた基準に該当しなかったものが「普通酒」となります。特定名称酒は法律に定められていますが、普通酒は通称であり、正式な用語というわけではありません。「一般酒」と表記される場合もあります。

ラベルに「純米」「吟醸」「本醸造」などと表示されていないものはだいたいが普通酒である、というように判断できます。香りは穏やかで、ほどほどに旨味があり、落ち着いた味わいのお酒が多いのが特徴です。

※いわゆる「貴醸酒」も、米・米麹・醸造アルコール以外の原料として「清酒」を使用しているため、普通酒に該当します。以下、今回の記事ではこの貴醸酒を除いた一般的な普通酒について解説します。貴醸酒については以下の記事で解説しています。

特定名称酒は手間と時間をかけて造られたお酒というイメージがあり、普通酒は安価であまりおいしくないと思われがちです。しかし、普通酒のなかにも、おいしく楽しんで飲めるよう丁寧に造られた日本酒は数多く販売されています
日本酒を選ぶときに普通酒を選択肢に加えると、楽しみの幅が広がるでしょう。

普通酒に該当する酒にはどのようなものがあるか

私たちが普段よくスーパーで目にする紙パックのお酒や、居酒屋などでメニューに「日本酒」とだけ書かれているお酒は、ほとんどが普通酒でしょう。普通酒は私たちが思っている以上に生活に浸透しています。具体的には、以下のようなお酒が普通酒として扱われています。

  • 醸造用のアルコール添加があり、精米歩合が70%超のもの
  • 本醸造の規定量以上のアルコールを添加したもの
  • 糖類や酸味料などを原料に使用したもの
  • 等外の米を使用したもの

特定名称酒が日本酒の生産量のなかで占める割合は年々高くなっています。しかしそれでも普通酒は消費量全体の約7割を占め、手に入りやすいお酒として多くのお酒好きの人たちから愛されています。

普通酒の楽しみ方

価格も手頃で、毎日の晩酌や家飲みなどの日常酒として人気の普通酒。一般的な飲み方としては、常温から燗酒で、食事と一緒にゆっくり楽しむのに適しています。 地元でも古くから愛されており、地域の伝統的な食事と相性がよいことも多いので、旅先で訪れた際などに味わってみるのもおすすめです。
「峠の釜飯」で有名な荻野屋が東京にオープンした飲食店「荻野屋 弦」では、あえて群馬・長野の普通酒を取り揃えて提供しています。このようなお店なら、旅先のような気分を楽しむこともできるかもしれません。

荻野屋 弦:https://oginoya.tokyo/yurakucho/concept

普通酒の中でも生原酒(原酒)のものは、豊かな香りと濃厚な味わいでアルコール度数が高めなのが特徴です。中には19度~20度のアルコール度数があるものもあります。
こうしたお酒は、ロックで飲むことで温度も下がり、爽快な味わいが楽しめます。また、氷が徐々に溶けることでアルコール度数が下がり、飲みやすい口当たりになっていくのでお酒にそれほど強くない人にもおすすめです。
暑い夏には少し炭酸水を加えることで、のどごしの良さを楽しむのもいいですね。味わいが濃いため、炭酸水で割っても薄くなりすぎることがありません。

さらに、フルーツやジュースと合わせてオリジナルの日本酒カクテルを作るのもおすすめです。カシスなどと合わせることで見た目も鮮やかな大人のカクテルに仕上がります。先ほど紹介したロックで飲む方法の代わりに、コンビニやスーパーで販売されている冷凍フルーツを入れてみるのも良いでしょう。

個性が強すぎず、日常の食事によく馴染む普通酒は、飲み方によって味の変化をいろいろと楽しむことができます。季節や気分に合わせていつもと違ったおいしい飲み方を試してみてください。

まとめ

ここまで、普通酒というお酒がどのようなものかについて解説しました。普通酒はスーパーやコンビニなどで、比較的安価に購入でき、普段使いのお酒として私たちの生活に馴染み深いお酒です。日本酒のなかでも多くのシェアを占めています。

普通酒は、特定名称酒のように「特別なお酒」ではありません。しかしなかにはこだわって造られたものもたくさんあります。また、ロックや炭酸割り、カクテルなど飲み方を工夫することでいつもと違った味が楽しめるのも魅力です。

今回、普通酒は「特別なお酒」ではないという意味で、またシェアが高く広く浸透しているという意味で「普通」であることが分かっていただけたのではないかと思います。普通酒にもさまざまな味わいのものがあり、毎日気軽にお酒を楽しみたい人にはぜひ、家に常備する1本を見つけて欲しいジャンルのお酒です。自分好みの1本やおいしい飲み方を探してみてはいかがでしょうか。

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