2020.06
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どぶろく、にごり酒、おりがらみの違いとは? - にごりの濃さ以外の条件を詳しく解説
「どぶろく」「にごり酒」「おりがらみ」……これらはすべて、にごりのあるお酒です。
3者とも見た目が似ているため、どうやって呼び分けられているのだろう? と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
実は、これら3つのお酒はそれぞれ造り方が異なるのです。今回の記事では、「どぶろく」「にごり酒」「おりがらみ」の定義や、スタンダードな清酒との違いを学んでみましょう。
スタンダードな清酒:搾ったあとに澱引きする
まずは、にごりのない透き通った日本酒の造り方を簡単に確認しておきましょう。
日本酒造りでは、米・米麹・酵母・仕込み水をタンクに入れて発酵させ、「もろみ」と呼ばれるどろどろの状態をつくります。
このもろみには、十分な発酵を経ても溶け切らなかった米や米麹などの固体成分が含まれています。そこでおこなわれるのが「搾り」という工程。搾りとは、もろみに残った固体成分(酒粕)をこし取って、液体(原酒)だけの状態にする作業のことです。搾りには、「酒袋」と呼ばれる布の袋にもろみを入れて搾るなど、いくつかの方法があります。
参考:日本酒造りの仕上げ! - 日本酒の搾り方と味の違いを学ぶ
搾りが終わっても、お酒の中にはまだ「澱(おり)」と呼ばれる小さな固体成分が残っています。そこで、この澱を取り除く「澱引き」という作業をおこないます。搾りを経た酒を数日間静置して澱を沈殿させ、上澄みだけを取り出すのが一般的です。
このあと、フィルターや活性炭による濾過、加水(水を加えること)、火入れ(加熱殺菌)を経て、スタンダードな清酒が完成します。
どぶろく:搾らない
「どぶろく」とは、簡単にいえば、先ほど解説したスタンダードな清酒の造り方から搾りの工程を省いたものです。つまり、もろみの固体成分がそのまま残っているお酒です。
日本の法律では搾りの工程を経なければ「清酒」を名乗ることはできません。したがって、どぶろくは清酒ではなく「その他の醸造酒」として扱われています。
どぶろくを「酒粕の成分がほぼすべて含まれているお酒」と考えると、その味わいもイメージしやすいでしょう。一般的にどぶろくは、米の持つ甘さや旨味を感じられる濃厚なお酒になることが多いです。
参考:日本酒と酒粕の"良いとこどり"! - どぶろくの健康効果を学ぶ
にごり酒:粗い目で搾る
「にごり酒」もどぶろくと同様に白濁した酒ですが、にごり酒は搾りの工程を経て造られる日本酒です。搾っているにも関わらず、できあがった酒がにごるのはなぜでしょうか?
その秘密は、もろみの搾り方(こし方)にあります。にごり酒は、透き通った清酒を造るときのように酒袋で搾るのではなく、ザルのような目の粗い網目を用いて「あらごし」して造られているのです。
先ほど、日本では搾りの工程を経なければ清酒とは認められないと述べました。酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達(※)によると、搾り(つまり「こす」こと)は「その方法のいかんを問わず、酒類の醪を液状部分とかす部分とに分離するすべての行為」と定義されています。そのため、ザルのような粗い目で搾ったにごり酒も、清酒の一種として認められるのです。
(※)酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2編 第3条 (共通事項)11
にごり酒もどぶろくのように、米本来のおいしさを感じられる濃厚なものが多いですが、にごり酒の場合、搾るときの目の粗さによっても味わいが大きく変わるのが特徴です。「ささにごり」や「うすにごり」のような比較的にごりの少ない酒の中には、甘みとフルーティーさを兼ね備えた爽やかなものもあります。また、火入れをしないにごり酒である「活性にごり」は、シュワシュワとした発泡感を楽しめる刺激的なお酒です。
おりがらみ:通常通りに搾ったあと、澱引きせずに仕上げる
「おりがらみ」は、澱引きをしない日本酒のことで、「かすみ酒」とも呼ばれます。搾りの工程まではスタンダードな清酒と同様に進みますが、ごく小さな澱はそのまま残すため、うっすら白く濁ります。搾り工程を経ているので、おりがらみも清酒の一種です。
おりがらみに残っている澱には、細かい米の破片や酵母などが含まれており、そこには旨味成分もたくさん存在しています。どぶろくやにごり酒に比べるとすっきりしているものが多いので、適度な旨味を楽しみたいときにぴったりです(にごり酒のうち「うすにごり」などの酒とおりがらみを比べると、にごり具合にはほとんど差がない、あるいはおりがらみでも、にごり酒に分類される酒よりにごっているものがある場合もあります)。
また、おりがらみには澱だけでなく炭酸ガスも残っているものが多いので、このようなタイプを選べば、澱に含まれる濃厚な香り・旨味と、ピチピチとした泡のフレッシュ感を同時に楽しめるでしょう。
おすすめのお酒や飲み方
搾り方や澱引きの有無の違いがある3種類のお酒。にごり特有のとろっとした舌触りやお米の芳醇な旨味などが楽しめる、おすすめのお酒をご紹介します。
おすすめのお酒
稲とアガベ DOBUROKU 01 - 稲とアガベ(秋田県)
ヨーグルト調の酸い香りとお米を炊いたようなふっくら甘い香りのするどぶろくです。口に含むとしゅわっと爽やかなガス感、とろとろっとなめらかなテクスチャとお米のつぶつぶ感、ミルキーでなめらかな甘旨味の余韻が楽しめます。
不老泉 純米吟醸 活性にごり 生原酒 - 上原酒造(滋賀県)
お米を炊いたような香りとミントのような清涼感。活性にごりのため、口に含むとしゅわしゅわとした元気な発泡感が楽しめます。甘さは控えめで、優しくお米の旨味が膨らんだ後は、心地よい酸味と共にシャープかつドライなフィニッシュを迎えます。
楽の世 山廃純米 おりがらみ 無濾過生原酒 - 丸井合名会社(愛知県)
完熟パイナップルを思わせる芳醇な果実香や青くオイリーなニュアンスが魅力的なおりがらみです。濃醇なアタック感とやわらかい甘味、凝縮感のある酸の余韻。ピリリとしたアルコール感を伴いながら、シロッピーなニュアンスが広がります。飲みごたえのある分厚いボディ感と旨味の余韻が楽しいです。
一緒に楽しみたい食事
にごりのあるお酒のとろっとしたテクスチャーには、脂肪のまったりとしたコクがよく合います。
例えば、こってりとしたもつ煮込みや豚の角煮など、味の濃いものにはどぶろくやにごり酒を合わせると脂肪とお酒が溶けあってたまらない相性を発揮。また、からすみや煮卵など「たまごのコク」が感じられる料理には、うすにごりのほどよいとろみがよく合います。
こんな飲み方も
まず、にごりのあるお酒ならではの飲み方として、「透明な上澄みと澱部分を別々に飲む方法」 と、「上澄みと澱をしっかり混ぜて飲む方法」の2種類の飲み方があります。
上澄みと澱を別々に飲む場合は、瓶を傾けないように立てたままゆっくり開栓し、上澄みの透明な部分のみをやさしく注ぎます。これにより上澄みのスッキリ透明感のある味わいと、澱の濃厚で複雑な味わいの二つを楽しむことができます。
上澄みと澱を混ぜて飲む場合は、瓶をゆっくり振り、底に沈んでいる澱が均一に混ざってから飲みます。この方法だと、クリーミーでやさしい口当たりや、にごり由来のボリューミーな味わいを楽しむことができます。
また、燗酒で飲むのもおすすめです。あたためることで旨味や酸味がぐっと引き立ち、冷やして飲むのとはまた違った味わいを楽しめます。さらに、口当たりもやわらかくなるので、料理との相性も抜群です。
このように、お酒単体で飲んでももちろんおいしい3種類のお酒ですが、澱由来の酸味や旨味が強く、とろっとボリュームのある飲み口であることが多いため、アレンジしても個性が失われにくいのも魅力です。ロックや炭酸割り、牛乳やヨーグルト割りなど、自分好みのアレンジレシピを探してみるのも楽しいですね。
まとめ
透き通った見た目をしているスタンダードな清酒は、発酵のあとに搾りと澱引きを両方経て造られています。
いっぽう、にごった見た目の酒は、さまざまな方法で造られています。どぶろくは絞らないで造る酒、にごり酒は粗い目で搾って造る酒、おりがらみは澱引きをせずに仕上げる酒です。
「にごった酒」と一口にいっても、それぞれ残っている固体成分の分量が異なるため、香りや味わいはさまざまです。造られた工程にも思いを馳せつつ、多種多様なおいしさを楽しみましょう。
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