
2025.03
05
日本酒の資格・検定を受けてみよう!- 特徴や費用を徹底比較
「日本酒について学びたい」「日本酒に関わる仕事がしたい」と思ったとき、日本酒に関する資格をとるのもひとつの手段です。日本酒が国際的に注目を浴びている昨今、日本酒に関する資格・検定も日本国内・国外ともに少しずつ増えてきています。
しかし、「自分のレベルに合う資格はどれなのか」「仕事に役立つのはどの資格なのか」を一から調べるのは、なかなか大変です。そこで、この記事では日本酒関連資格の特徴や費用を比較しながら紹介します。
唎酒師
唎酒師(ききさけし)は日本酒に関する資格の中で、最も知名度が高い資格です。「唎酒師がいる店」であることを売りにする飲食店もあるほか、日本酒をより深く楽しむための手段として一般の人の取得者も多くいます。
唎酒師の資格制度を運営しているのは、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(通称SSI)です。資格を取得するためには、プログラムに参加したうえで、試験に合格する必要があります。プログラムには受講スタイルや受講期間・費用が異なる5つのコースがあり、合計で約12万〜14万円程度の費用がかかります。
第1次試験から第4次試験まで、選択式と記述式で試験が行われます。各試験では、「飲料全般・食品およびそれに関する基礎知識」「日本酒のテイスティング力」「日本酒のサービス力」「日本酒のセールスプロモーション提案力」の4つのスキルが問われます。
プログラムを受講してから受験をすることもあり、唎酒師試験の合格率は80%前後の高さと言われています。広い範囲について学ぶ必要がありますが、難易度自体はそれほど高くありません。
唎酒師合格後、認定を受ける場合は認定料25,000円(税込)の支払いとSSI加盟の上部団体「NPO法人FBO」への入会が義務付けられています。入会金は19,000円(税込)で、年会費の15,900円(税込)は毎年更新するたびに支払う必要があります。
また、2009年にはSSIの提携加盟団体であるSSIインターナショナルが認定する資格として「国際唎酒師」が新設されました。現在は、英語・中国語・韓国語・フランス語・スペイン語の5か国語で実施されています。
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酒匠
酒匠(さかしょう)という資格を一言で表すと「テイスティングの専門家」です。唎酒師の上位資格で、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(通称SSI)が運営をしています。飲食店・酒販店の経営者や従業員、酒類卸売業のバイヤーなど、仕事で日本酒や焼酎のテイスティングをしたり、酒類に関するアドバイスをする人が取得を目指すケースが多い傾向があります。
酒匠試験は、唎酒師と焼酎唎酒師の資格を保有しているFBO認定会員のみ受験資格を得られるほか、指定のプログラムやセミナーへの参加などの条件を満たす必要があります。
試験前には2日間(約18時間)の講習会受講が義務づけられ、200以上のサンプルを使って日本酒と焼酎のテイスティングや日本酒・焼酎と料理のペアリングについて学習します。唎酒師とは違い、選択式、記述式の試験に加え、テイスティングをともなう筆記試験もあります。受講受験料は114,000円(税込)で、合格後には、認定料25,000円(税込)を支払う必要があります。
合格率に関する情報は公表されていませんが、2005年から2024年5月までの19年間で認定者の総数は570名となっており、難易度の高さを物語っています。
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日本酒学講師
日本酒学講師とは、日本酒と焼酎の専門知識をもとに、講師として活動できる資格です。講師としておこなったセミナーの参加者に対して、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が公認する「日本酒ナビゲーター」「焼酎ナビゲーター」の資格認定ができることが大きな特徴で、飲食業や酒類販売業などの従事者だけでなく、日本文化を世間に広めることを目的に取得する一般の人も増えています。
受験資格として、唎酒師または焼酎唎酒師であることや、FBO公認講師であることが求められるほか、指定のプログラムやセミナーなどへの参加が必要です。
認定講座では、テイスティングを含めた日本酒と焼酎の専門的な知識の習得や、実際にセミナーをおこなって効果的に講義を進めるうえでのテクニックを習得するなど、講師として必要なスキルが備わっているかを問われます。試験は選択式、記述式のほか、日本酒セミナーの実技もおこなわれます。
3日間の講習会の受講料と試験料で114,000円(税込)のFBO公認講師同時取得プランが提供され、合格後は日本酒学講師認定料とFBO公認講師認定料で30,000円(税込)の支払いが必要です。
合格率に関する情報は公表されていませんが、2024年5月末時点の日本酒学講師の認定者数は625名。唎酒師の有資格者が40,000名以上いることや、日本酒ナビゲーターや焼酎ナビゲーターの資格を与えられる立場であることを考えると、難易度は高いといえそうです。
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J.S.A. SAKE DIPLOMA
SAKE DIPLOMAは、一般社団法人日本ソムリエ協会が認定する日本酒と焼酎の資格です。優れたサービスを提供するため、日本酒だけでなく、焼酎についても歴史や製造方法、料理との相性などの知識を身につけることができます。
一方で、ソムリエ協会が認定するため、テイスティングの際の表現方法にもワイン由来のものが多く、ワインの勉強経験がない人は戸惑うケースもあるかもしれません。
受験資格は、基準日(受験する年度の8月31日時点)において満20歳以上であることのみで、誰でも受験することができます。一次試験はコンピューターで解答する「CBT方式」、二次試験は論述試験とテイスティングがあります。
受験料は、一次試験の受験回数によって異なり、1回受験の場合は32,900円、2回受験の場合は37,800円です。合格後は、別途20,950円の認定料を支払う必要がありますが、維持費は発生しません。(2025年度受験の場合)
2023年のSAKE DIPLOMA試験の合格率は35.2%、2019年から5年間の平均合格率は約40%であり、利酒師と比べると難易度が高いことがわかります。
また、海外での日本酒の楽しみ方、その提供のしかた、サービス方法等に通じる教育を進める観点からSAKE DIPLOMA INTERNATIONAL試験もおこなわれています。英語での試験で、日本国内以外にもイギリス・フランス・ドイツ・アメリカ・シンガポール・台湾・中国で受験することができます。
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WSET SAKE
WSET SAKEは、世界最大のワイン教育機関「WSET(Wine & Spirit Education Trust)」が提供する「世界標準知識」として日本酒を学べる国際的な講座・資格です。
満20歳以上であれば、受講・受験が可能で、「WSET Level1 Award in Sake」「WSET Level2 Award in Sake」「WSET Level3 Award in Sake」の3段階があります。Level1は、これから日本酒に関わる仕事を始める人や、日本酒に興味のある一般の人など、おもに初心者を対象としています。Level2は、さまざまな日本酒の種類や製法について学びたい人や知識を深めたい人を、Level3は、すでに十分な日本酒の知識、テイスティング能力を持っている人を対象としており、2025年3月時点では英語受験のみとなっています。
受験のためにはキャプラン ワインアカデミーが開催する講座の受講が必要で、初めて受講する人は、受講の申し込みと同時に、キャプラン ワインアカデミーへの入会金(税込5,500円)が必要となります。Level1の受講料・認定試験料は35,200円(税込)、Level2は80,300円(税込)Level3は99,000円(税込)です。
出題形式はLevel1とLevel2が選択式、Level3は、選択式と記述式、ブラインドテイスティングです。合格率に関する情報は公表されていませんが、WSET SAKE Level1は70%以上の正答率、WSET SAKE Level3は55%以上の正答率で合格となります。
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その他の資格
これまでSAKE Streetで紹介した上記の資格のほかには、以下のようなものがあります。
日本酒ナビゲーター
日本酒ナビゲーターは、飲食業界から一般の人まで、日本酒の魅力を学ぶことができる入門資格です。
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(通称SSI)認定の日本酒学講師が主催する「日本酒ナビゲーター認定セミナー」を受講することで取得ができ、会場だけでなく、オンデマンドでも受講が可能です。
講師や会場ごとに料金が異なりますが、概ね数千円から1万数千円程度の受講料とSSIの認定登録料2,500円が必要です。
日本酒検定
日本酒検定は、日本酒の魅力を知る機会を広く提供し、日本酒をもっと楽しんでもらうことを目的として、SSIが実施する検定試験です。
20歳以上が受験可能で、試験では歴史や造り方、楽しみ方などのほか、モラル・マナーについても出題されます。
1級・準1級は会場受験、2級・3級は会場受験またはテストセンターでのCBT試験、4級・5級はネット受験です。はじめて受検する人は5級、4級、3級からチャレンジが可能です。
ネット受験は1,100円(税込)、CBT試験は7,100円(税込)、会場受験は6,000円(税込)の受験料がかかります。
J.S.A. SAKE検定
J.S.A. SAKE検定とは、日本酒・焼酎に興味のある人を対象とした一般社団法人日本ソムリエ協会が主催する検定試験です。日頃の生活に日本酒や焼酎を取り入れて、より一層楽しみたい人向けの内容で、基礎知識を習得することができます。
講習会後に受験となり、講習会から試験終了まで約2時間、試験は選択式となっています。受験費用はテキスト込みで11,000円(税込)です。
酒造技能士
酒造技能士は、酒造りに関する資格では唯一の公的資格です。国家検定である技能検定は、さまざまな専門分野で検定をおこなっています。その中で、酒造に関する学科及び実技試験に合格し、日本酒造りの分野で専門的な知識や技能を持つと認定された人が酒造技能士です。
試験問題の作成は「中央職業能力開発協会(JAVADA)」が行い、試験の実施については各都道府県の「都道府県職業能力開発協会」が担当しています。
試験は1級と2級があり、学科試験と実技試験を受験します。2級の場合は、受験時に20歳以上で、2年の実務経験または普通職業訓練修了や専門学校などを卒業していれば受験することができます。1級の場合は、2級取得後2年または7年の実務経験が必要となっています。
受験手数料は、目安として、学科試験が3,100円、実技試験が18,200円ですが、都道府県によって異なる場合があるようです。
比較表
ここまで紹介した資格を一覧表にしました。受験料や条件などを比較して、自分に合った資格を選ぶ際の参考にしてください。
資格名 | 受講料・受験料 | 認定料 | 維持費 | 受験資格 | 試験形式 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|---|
唎酒師 | 12〜14万円 | 25,000円 ※1 | 15,900円 ※2 | 満20歳以上 | 選択式, 記述式 | 80%前後 |
酒匠 | 11.4万円 | 25,000円 | 15,900円 ※2 | 唎酒師, 焼酎唎酒師 かつ FBO会員・プログラム, セミナー等への参加 | 選択式, 記述式, テイスティング | N/D |
日本酒学講師 | 11.4万円 | 30,000円 | 15,900円 ※2 | 唎酒師 または 焼酎唎酒師 かつ プログラム, セミナー等への参加 | 選択式, 記述式, 日本酒セミナー実技 | N/D |
J.S.A. SAKE DIPLOMA | 1回受験: 32,900円円 2回受験: 37,800円 | 20,950円 | なし | 受験する年度の8月31日時点において満20歳以上 | CBT方式, 記述式, テイスティング | 35.2% (2023年) |
WSET SAKE | Level1: 35,200円 Level2: 80,300円 Level3: 99,000円 入会金: 5,500円 | なし | なし | 満20歳以上 | Level1 : 選択式 Level3 : 選択式, 記述式, テイスティング | N/D |
日本酒ナビゲーター | 数千円〜1万数千円 | 2,500円 | N/D | 満20歳以上 | 要問い合わせ | N/D |
日本酒検定 | 会場受験 :6,000円 5級・4級 CBT試験 :7,100円 3級・2級 ネット受験 :1,100円 3級・ 2級・準1級・1級 | なし | なし | 満20歳以上 | 選択式 | N/D |
J.S.A. SAKE検定 | 11,000円 | なし | なし | 満20歳以上 | 選択式 | N/D |
酒造技能士 | 学科試験 3,100円 および 実技試験 18,200円 | なし | なし | 満20歳以上 2級 : 2年の実務経験(学歴により不要) 1級 : 7年または2級取得後2年の実務経験 | 学科試験, 実技試験 | 72.2% (令和5年度) |
※1:未入会の場合、別途FBO入会金 19,000円要
※2:いずれもFBO年会費(複数資格維持の場合も15,900円/年のみ)
まとめ
この記事では、日本酒に関する9つの資格をご紹介しました。日常に取り入れられる楽しみ方を学べるものからスキルアップにつながるものまで、自分の目的やレベルに合う資格があります。特徴や費用を比べながら、チャレンジする資格を選んでみてくださいね。
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