時間と場所による日本酒づくりの変化を体感 -「お酒づくりの道具と機械」(兵庫県・酒ミュージアム)

2023.09

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時間と場所による日本酒づくりの変化を体感 -「お酒づくりの道具と機械」(兵庫県・酒ミュージアム)

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

兵庫県西宮市の博物館「酒ミュージアム」(白鹿記念酒造博物館 記念館)にて、2023年11月20日までのあいだ、 テーマ展示「お酒づくりの道具と機械」が開催されています。

酒造技術の発達とともに、道具もさまざまな進化を遂げてきました。さらに、この展示では、地域ごとの道具の違いにも着目しています。

この記事では、同博物館の学芸員・大浦和也さんにご案内していただきながら、今回の展示のポイントを見ていきましょう。

酒造道具の進化と、地域による特徴を学べる展示

江戸時代に盛んになった日本酒づくり。当初は木製の道具を使っていましたが、令和の現代にもなると、ほとんどが機械化されています。今回の「お酒づくりの道具と機械」は、酒造道具の中でも、明治以降に導入された酒造機械がどのように進化していったのかに着目しています。

さらに、灘・九州・東北の各エリアをピックアップし、地域ごとの違いも解説。それぞれの地域の特徴を明らかにする展示になっています。

全国の酒蔵や博物館の協力のもと、江戸時代後期から現代に至るまで、50点もの史料が集まった今回の展示。最も古いものは、今から224年前、寛政11(1799)年に描かれた『日本山海名産図会』。当時の日本国内のさまざまな産業を図解したもので、伊丹の酒造りの様子が描かれていることから、このころから当地が日本酒の名産地であったことがわかります。

酒ミュージアム所蔵の資料としては、文政13年(1830)年の「酒造道具帳」が最古です。当時使用していた酒造道具名が書き上げられており、当時の酒造りを垣間見ることができます。

ピックアップ! 注目の展示物

米洗いせいろ&酒造諸機械買入帳

市立伊丹ミュージアムより借用した「米洗いせいろ」。お米を洗った後、水を切る道具です。「酒道具師 伊丹新町 戸亀」と製作者の焼印があり、酒造りの盛んな伊丹に拠点があったことがわかります。

かたや、辰馬本家酒造所蔵の酒造諸機械買入帳を見ると、この「戸亀」に発注した記録が残っています。辰馬本家もまた、戸亀の酒造道具を使っていたということ。つまり、伊丹・灘の地域は同じ形式の酒造道具を使用していたということがわかります。

このように、ひとつの道具だけではなく、ふたつの史料を見比べることで、さらにリアルな当時の様子が見えてくるのです。

木桶からタンクへ

江戸時代以来、仕込みや貯蔵に使用されてきた木桶。ところが木材が酒を吸って目減りするなどの問題があり、大正時代には銅製タンク・琺瑯タンク、昭和30年代後半からはグラスライニングタンクステンレスタンクへと移行していきました。

本展示では、この変遷の様子をご紹介。戦前期の銅製タンク・琺瑯タンクのパンフレットのほか、現役のグラスライニングタンクの製造時の画像などから、その進化を追っていきます。

広くディープに日本の歴史を学べる

最後に、担当学芸員の大浦さんに、日本酒好きの読者の方に伝えたい展示の見どころをお聞きしました。

「酒ミュージアムの酒資料室展示がほかの酒造資料館と異なる点は、辰馬本家酒造だけではなく、毎回10件ほどの同業者や団体さまのご協力のうえ集めた史料を展示しているところです。通常なら名前が並ぶことのないような組織や地域の関連性が見られるのは、酒ミュージアムならではと言えるかもしれません。

また、私自身が歴史学の出身なので、文献史料(古文書・古記録)を豊富に使用しているのも特徴のひとつです。弊館には1万点を超える酒造関係史料が所蔵されていますが、それらを整理・研究したうえで、成果を展示に生かしています。

例えば、かつて酒造りに木桶が使われていたことをご存知でも、それが現在のステンレスタンクとなるまでにどのような変遷をたどったかを知っている方は少ないかもしれません。当館では、辰馬本家酒造の豊富な資料をもとに、灘五郷を中心とした酒造地を基盤としつつ、その他の地域の情報を取り入れているので、この展示を見ていただけることで、総合的な酒造りの歴史を知ることができます」

まとめ

全国各地から史料を集め、俯瞰的かつ深く日本酒の歴史に触れられる酒ミュージアム。今回の展示は、酒造道具を通して、時代や場所によって変わる人の働き方や、日本酒の味わいなどについても想いを馳せられる内容になっています。

展示期間は11月20日まで。小学校の夏休み期間から開催されていたことから、お子さん用のクイズコーナーも用意されています。また、後期展示が開始する9月13日より、秋季展「たしなみを楽しむ」を同時開催。これまで展示されたことのない刀剣及び刀装具ほか、多様な伝統工芸が登場します。

灘エリアの酒蔵ツアーや関西方面への行楽に合わせて、ぜひ酒ミュージアムを訪れてみてはいかがでしょうか。

  • 展示概要

    • 会期:前期7月12日〜8月28日、後期9月13日〜11月20日
    • 会場名:酒ミュージアム(白鹿記念酒造博物館 記念館)
    • 住所:兵庫県西宮市鞍掛町8-21
    • 電話番号:0798-33-0008
    • 開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
    • 休館日:毎週火曜日、10月16日(月)
    • 料金:一般500円、中・小学生250円(団体割引、65歳以上割引あり)
    • URL:https://sake-museum.jp/exhibitions/1950/#ex-1824
    • 展示協力:株式会社小嶋総本店、株式会社神鋼環境ソリューション、株式会社本村製作所、月桂冠株式会社、佐賀県立図書館、市立伊丹ミュージアム、新洋技研工業株式会社、大平庵酒蔵資料館、花巻市博物館、薮田産業株式会社
    • 同時開催:秋季展「たしなみを楽しむ

    ※酒ミュージアム公式サイトでは、今回ご登場いただいた大浦さんのコラム「酒トーク」を連載中。本展示を初め、毎月お酒にまつわるさまざまな史料を掘り下げて解説しています。

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