原点に帰り、町と日本酒の未来を切り拓く - 地域の魅力を、一緒に醸してみませんか?

2025.02

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原点に帰り、町と日本酒の未来を切り拓く - 地域の魅力を、一緒に醸してみませんか?

木村 咲貴  |  SAKE Street PR

Sponsored by 株式会社天郷醸造所

九州百名山に数えられる福智山(ふくちやま)の山間にて、スギやヒノキ造りの躯体は既に醸造所の形を見せています。隣り合ったレモン畑の向こうを見下ろすと、広い空と山並みを背景にして、上野(あがの)の街に夕陽が沈もうとしていました。

2025年5月、福岡県福智町にオープン予定の天郷(あまのさと)醸造所。Amazonや楽天でのキャリアを持つ創業者・中山雄介さんをはじめ、醸造、建築、アパレルなど、さまざまなバックグラウンドのメンバーが集まっています。

そんな天郷醸造所がオープンに先駆けて、製造の新しい仲間を募集しています。なぜ、福智町なのか。どんなお酒を造るのか。どんな仲間を求めているのか──これからの日本酒のあり方に一石を投じるこの酒蔵を訪問し、中山さんたちにお話を聞きました。

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元・Amazon酒類事業部長が生まれ故郷の醸造所誘致に応募するまで

「若いころは正直、『こんな田舎に未来なんてない』と思っていました。つい最近まで、地元に帰ることは選択肢にありませんでしたね

福岡空港から福智町へ走る車の中。車窓が映す風景が次第に緑豊かな自然に変わるのを眺めながら、中山さんはそう話します。福岡県田川郡方城町弁城(現在の福智町)に生まれた中山雄介さんは、防衛大学校への進学を機に上京。⽇本コカ・コーラを経てアマゾンジャパンに入社後は酒類事業部の立ち上げに関わり、その後事業部長を務めます。その後、楽天やインアゴーラにてECを通じた日本酒事業に携わるようになり、2022年にはECやブランディング、海外進出など多方面から酒蔵をサポートする株式会社オープンゲートを立ち上げました。

「日本酒に関わる中で、いつか自分の酒蔵を持ちたいという気持ちは少しありましたが、それほど現実的には考えていませんでした。業界にいるからこそ、人・物・資金や規制などの面でそう簡単にできることではないとわかりますからね」

風向きを変えたのは、偶然読んだ一本の記事。そこには、中山さんの生まれ故郷である福岡県福智町がまちおこしの一環としてクラフトサケ(※)の醸造所を誘致するため、オーナーを募集していることが書かれていました。

福岡県の中央部に位置する中山さんの故郷は、明治時代に官営八幡製鐵所が設立されたころは筑豊炭田の産炭地として栄えていた地域だったといいます。ところが、第二次世界大戦後に起きたエネルギー革命の影響を受け、すべての炭鉱が閉山。徐々に過疎化が進行し、2006年には3町が合併して、人口2万1,000人ほどの福智町が誕生しました。

町名の由来でもある名峰・福智山を目指して、年間20万人を超える登山客が訪れるという福智町。一方で滞在までする人が少ないのを課題に感じ、観光資源を増やすことを目的として立ち上げられたのがクラフトサケ醸造所の誘致プロジェクトでした。

記事で故郷の名前を見かけた瞬間、「運命なんじゃないか」と思ったと言う中山さん。地元のために、そして日本酒のために、今こそ帰るべき時なのかもしれない──そう思い、まるで導かれるように応募していたといいます。

※クラフトサケ:日本酒の製造方法をベースに、発酵段階で副原料を加える新しいジャンル。酒税法では清酒(日本酒)ではなく「その他の醸造酒」に該当する。「クラフトサケ」は株式会社モトックスの商標であり、クラフトサケブリュワリー協会が同社に許可を得た上でこの名称を使用している。(参考記事

自分を見つめ、人生を変える酒「在る宵」

そんな背景から生まれた天郷醸造所が掲げるのは、「在る宵(あるよい)」というブランド。そこには、中山さんが醸造所建設にたどり着くまでの人生をもとに、このお酒を手に取ったそれぞれの飲み手が自分自身を重ねられるようなストーリーが込められています。

中山さんが日本酒の世界に足を踏み入れたのは、前職でアメリカに駐在していた時のこと。飲み会の場で国際色豊かな同僚たちが母国のお酒の自慢話を披露する中で、中山さんは日本酒について何も語ることができなかったといいます。

生まれ育った国の名前を掲げたお酒について知らないことに恥ずかしさを覚え、勉強も兼ねて飲み始めたところ、記憶していた以上の美味しさに衝撃を受けます。さらに一つひとつの酒蔵について調べる中で、日本酒を造る人々の精神性に惹かれていきました。

「20代のころは、地方で育った自分には何も価値がないと思い込み、とにかくスキルを磨くことに必死でした。しかし、めまぐるしい日々の中でふと、『そもそも自分は何がしたいんだろう?』という壁にぶつかり、精神的に追い詰められたこともありました。その結果として辿り着いたのが日本酒の世界だったんです」

華やかな外資系企業の舞台裏にいたこともあり、まるで対極のような位置にある酒蔵に対して「伝統を重んじながらものづくりに挑む人たちの精神が美しく、純粋なものに見えた」という中山さんは、日本酒にどっぷりと心酔していきます。一方で、保守的な業界には複雑な規制や慣習があることにも気づき、ITや流通、日本と海外の双方を知っているという視点を活かし、さまざまな解決策を提案してきました。

その途上で巡り合った、地元の醸造所建設プロジェクト。中山さんは、「自分がずっと求めていたものは、実は地元に“在る”んじゃないか?」と気づいたと話します。

「福智町は自然が豊かで、優れた資産や文化がある。地元で暮らしていたころはまだ見えていませんでしたが、外の世界を知ったこのタイミングだからこそ、自分のルーツが見えてきました」

「宵」という言葉には、夜=お酒を飲む時間という意味と、「酔い」という意味が込められています。お酒のある夜を過ごし、酔い、自分の内面を見つめることで、普段の生活からは見えない自分自身の本質に気づく。中山さん自身が日本酒を通して地元に戻ったような心の動きを追体験できるお酒にしたいという想いが込められたのが、「在る宵」というブランドなのです。

「世の中には、過去の僕と同じように無理して都会で頑張っている人がたくさんいると思います。それ自体は悪いことではないし、人生の大切なプロセスですが、その中で見えなくなっているものがあるかもしれない。誰にでも、今いる場所や自分の中に、まだ気づくことができていない魅力が”在る”んじゃないか? そんなことを問いかけたいと思ったんです」

このコンセプトは、中山さんがこの15年間で日本酒産業に携わる中で感じていた課題感ともリンクします。

「日本酒は、日本ならではの技術や精神性、自然などを体現した飲み物です。業界の人々は、伝え方が不器用だったり、海外を意識してワインなどの表現方法を模索しがちですが、本来の魅力はこの場所に“在る”。そんな想いを込めて、『在る宵』のロゴは、周囲にあるものを醸していくことでそこにある光が浮かび上がってくる様子を表しました」

酒造りについても、“在る”ものを活かすことを重視し、「できるだけ地元の原料を使い、自然の力を活かした製法に挑戦する予定です」と中山さん。基本的には自社で育てたハーブを副原料に用い、地元産のお米の魅力を引き出すため、日本酒に近い味わいを目指すといいます。

フラッグシップ商品「天郷(あまのさと)」は、地元で合鴨農法に取り組む契約農家が育てた完全無農薬米を使用。レギュラー商品として、5,000円、3,000円、1,700円の価格帯の「在る宵」シリーズが続くほか、春夏秋冬それぞれの旬の福智町産フルーツを副原料にした季節酒も製造します。

「現在の日本では清酒製造免許が取れないため、私たちは『その他の醸造酒』の免許の範囲で酒造りをすることになりますが、それも決してハンデではなくチャンスだと思っています。『その他の醸造酒』という今“在る”ものを最大限に活用して、その魅力を発揮できるお酒を造っていきたいですね」

杜氏候補は獺祭・貴での醸造経験者

杜氏候補として酒造りを担当する上田竜志さんは、実は、福智町の醸造所誘致プロジェクトの応募者の一人。「落選通知の翌日に、プロジェクト担当者の方から『中山さんが造り手を探している。もしよかったら一度会ってみないか』という連絡が来たんです。これからどうしようと考えていたところだったので、『あり得んじゃろ』と思いましたね(笑)」とその時の思いを振り返ります。

広島の大学を卒業後、山口県で「獺祭」を醸す旭酒造 に就職。ワーキングホリデーを活用してニュージーランドに留学した後、同じ山口県で「貴」を造る永山本家酒造場で再び酒造りを始めました。

そのころ、福岡県のLIBROMや秋田県の稲とアガベ醸造所など、若手醸造家によるクラフトサケの醸造所が次々と誕生するのを見ていた上田さん。「どんなに良い酒蔵に勤めていても、その蔵の味のスタイルがあるので、自分が造りたいお酒を自由に造ることはできない」と、自身の醸造所を開くことに興味を持ち、プロジェクトに応募したそうです。

「でも、僕は製造の経験しかないので、経営や売上についての知識はありません。だから、その道のプロである中山さんとタッグを組めることは魅力的に感じました」

「在る宵」が理想とする酒質については、中山さんの「まずは自分たちの好きなお酒を作ろう」という言葉に基づいてアイデアを出し合い、香りが強すぎない、食事に寄り添う酒というイメージで意気投合。

「中山さんからは、『やりたいことが出てきたらどんどん言ってほしい』と言われています。事業として成り立つかどうかは別としても、まず挑戦できる環境があるのはありがたいですね」

採用が決まってから福智町に移住した上田さんですが、「住み心地は最高ですよ! 温泉が好きなんですけど、たくさんあるのでほぼ入り放題です」と太鼓判を押します。

「よそものの立場になるので最初は不安でしたが、福智町の人たちは本当に優しくて、すぐに受け入れてくれました。醸造所が完成するまでは、地元の農家さんにアポを取って原料の話を進めているんですが、悩みを打ち明けると『一緒に考えよう』と言ってくれるし、『もし欲しいフルーツがあったら育てるよ』と提案してくれる方もいて、みなさんの育てたものでお酒を造るのが今から楽しみです」

中山さんのネットワークにより既に複数の酒蔵で修行を積んだほか、元・酔鯨酒造開発責任者の江口大介さんらがアドバイザーとして付いているため、いつでも相談できる環境が整っているという天郷醸造所。「多様性のあるチームを目指している」と中山さんが話すとおり、上田さんのほかには建築、アパレル、教育など多彩なバックグラウンドを持つスタッフが運営を支えます。

オープンに合わせて製造メンバーを募集

現在、天郷醸造所では、上田さんと二人三脚で製造にあたるもう一人の造り手を募集しています。

「基本的には上田さんと相談しながら製造をひととおり担当していただく予定です。外部のアドバイザーから学ぶこともできますし、自分が造りたいお酒ややってみたいことには積極的にチャレンジしてもらえればと思っています。その道のプロがスタッフにそろっているので、意欲があればECやマーケティングなども学べる環境です。何よりも、福智町全体が旗を上げて町全体で盛り上げていくまちづくりプロジェクトの一環なので、今後のキャリアにつながる経験やネットワークが得られるはずですよ」(中山さん)

中山さん曰く、福智町と連携してのプロジェクトは既にいくつか決まっており、ふるさと納税としての販売や、もつ鍋など人気の名産品とのコラボレーションをおこなうほか、福智町と包括連携協定を結んでいるJALと協働してプロモーションを実施する予定とのこと。

「醸造所のすぐ近くに“蕎麦の神様”と呼ばれる伝説の蕎麦職人・髙橋邦弘氏の弟子にあたる山岡良さんが営む『蕎麦屋こだるま』があるのですが、蕎麦とクラフトサケのコラボイベントをおこなう話が進んでいます。そのほか、上野地域の伝統工芸品である上野焼のボトルや酒器などもプロデュースする予定です。

町では、醸造所の間近に宿泊施設を建設する計画を進めていると聞きます。私のこれまで他業種で培った経験を生かし、越境ECや体験型のコンテンツなども提供していきます。バリューチェーン全体を俯瞰できる立場にいた私の実績と多様なメンバーの知識を持ち寄って、日本の酒蔵というものが持つポテンシャルを最大限に引き出していくつもりです」

新しく募集する蔵人について、「できれば酒造経験者。しかし、何よりも『在る宵』の価値観に共感してもらえることが重要です」と話す中山さん。

今在るものの価値に気づくということは、日本人が日本らしさを思い出し、その精神性に憧れる海外の人々が日本を訪れるようになるということでもあります。

「Appleのアプリアイコンの丸みがかった形状は日本の禅から着想を得たという話がありますよね。私はこれまでの仕事を通して欧米や中国の富裕層や投資家と接してきましたが、日本人が価値に気づいていないようなものが彼らにとっては非常に魅力的な体験になることがあります。近年は『クールジャパン』のようなアニメやポップカルチャーではなく伝統文化に興味を持ち、『こうした文化を生み出している日本人の精神性はどこから来たのか?』という部分に関心が向き始めています。こうした観点からも、『在る宵』というコンセプトで酒造りやまちづくりを進めていくことが、インバウンドを含めた酒のアプローチになっていくはずです」

オープン前から既に、いくつもの計画が動き出している天郷醸造所。多様性のあふれるメンバーがお酒と街の未来に胸を躍らせながら、想いを共有できる仲間を待っています。

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募集要項、酒蔵情報

募集要項

項目内容
募集職種(1) 製造(蔵人)
(2) 営業
雇用形態正社員(6ヶ月は試用期間)
給与月給243,800円(賞与あり)
(40時間分の時間外超過勤務給と10時間分の深夜超過勤務給を含む)
待遇・福利厚生通勤手当、住宅手当
勤務地福岡県田川郡福智町弁城1813
勤務時間(1) 7:00〜16:00(休憩1時間) ※1年間の変形時間労働制を採用
(2) 8:30〜17:30(休憩1時間)
休日休暇休日:週休2日制、年末年始(12/31-1/3)、年間勤務カレンダーによって定めた日
年次有給休暇:法定通り
その他休暇:慶弔休暇
応募資格(1)学歴、経歴不問(酒造り経験者歓迎)
(2)学歴、経歴不問
採用予定人数(1)(2) 各1名

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酒蔵情報

天郷醸造所
住所:福岡県田川郡福智町弁城1813
創業:2023年(醸造所は2025年5月オープン予定)
代表:中山 雄介
Webサイト:https://amanosato-sake.com/

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