定番酒への愛を熱く語る - 「獺祭 純米大吟醸45」旭酒造(山口県)

2023.05

30

定番酒への愛を熱く語る - 「獺祭 純米大吟醸45」旭酒造(山口県)

酒スト編集部  |  定番酒への愛を熱く語る

昨今、日本酒は季節限定酒が次々とリリースされ、ファンにとっては情報や流行を追うのもまたひとつの楽しみとなっています。しかし一方で、その酒蔵が看板商品としている「定番酒」を飲む機会は少なくなりがちでもあります。

定番酒とは、その酒蔵の思想を体現する看板商品であり、だからこそロングセラーとして君臨しています。限定商品をコンプリートするのもいいけれど、毎日飲みたくなるような定番商品をケース買いするような愛もあっていいじゃないか! そんなふうに、定番酒の良さを改めて感じてほしいというアツイ想いからスタートしたのが、こちらの「定番酒への愛を熱く語る」シリーズです。

第一弾は、「誰もが知る」と言ってももはや過言ではない世界的日本酒ブランド「獺祭」。獺祭をきっかけに日本酒を飲み始めたという人や、一度は飲んだことがあるという人は多いでしょうが、いろいろな日本酒を飲むようになると、「有名なブランドだし……」とつい疎遠になってしまいがちな銘柄でもあるかもしれません。

日本酒通の人にこそ知ってほしい獺祭の魅力について、料理とのペアリングを中心に、日本酒の販売・プロモーション活動に努める料理研究家「ももたそ」こと松原ももさんが、思う存分語ってくれました。

日本酒の負のイメージをひと口で覆す

初めて飲んだのは、10代から働いていた大阪のラーメン店で、20歳の誕生パーティを開いてもらったときのこと。「祝いの席といえば日本酒だろ」とオーナーからワイングラスに注がれたのが、「獺祭 純米大吟醸50」でした(当時は今とは精米歩合が違い、2019年4月から現在の45%にアップグレードされました)。

ひと口飲んで、その美味しさに衝撃を受けました。実は当時、「日本酒はまずい」と周囲の大人たちから布教されていたので、「騙されていたのか!?」と恨みそうになるほどに。 我に返ったときには、グラスからお酒が消えていました。味わいそのものの記憶は思い出すことができませんが、それまで日本酒に対して抱いていたネガティブなイメージを、たったひと口でぶち壊された感動は今でも強く心に残っています。

擬人化するなら、獺祭はただのイケメンじゃない!

わたしは、よくお酒を人間にたとえます。香りはルックス。食べ物との相性の良さは社交性。味わいは性格。価格は親しみやすさ。飲む頻度が高いほど親密度が高くなり、新たな一面を知るほど好感度が上がります。オタクであることがバレそうですね(笑)

「獺祭」は知名度が高く、「かっこいいから好き」という“顔ファン”が多いアイドルのように思われがちですが、実は苦労人でストイック。その向上心はとどまることを知らず、彼が「当たり前」として日々こなすレベルはひたすら高く設定されています。

例えば、四季醸造で、生産量が多いにもかかわらず、味わいがまったくブレない。少し前まで、手に入りづらいいわゆる“プレミア酒”になった時期もありましたが、決してクオリティを落とすことなく、生産量を増やし、安定供給できる仕組みを整えました。精米歩合45%の純米大吟醸が「定番商品」の立ち位置というのは、なかなかほかの蔵には真似できることではないと思います。

さらに、ソロでも、ユニットを組んでも(食べ物と合わせても)良し。わたしの場合は、旨み・酸味・香りのどれを主役にするか、または料理のどの要素と合わせるかで温度とグラスを変えています。

例えば、獺祭そのものをしっかり楽しみたいときは、獺祭ストアで購入した獺祭グラスでその魅力をじっくり味わいます。ガラスや磁器の酒器は、獺祭のように雑味のないきれいな味わいの日本酒を飲むのにピッタリ。さらに、獺祭グラスはボウルの最大直径からリムまできれいなストレートの形状になっているので、喉まで液体がスムーズに流れ、滑らかなテクスチャや香りを余すところなく体感できるんです。

食事に合わせたいときは常温に戻し、蛇の目が入った磁器のお猪口で。飲み口が広いものだと、バランスよく、お酒本来の味わいを楽しめます。酸味と旨みのバランスがよくなるので、個人的には、獺祭45を味わうにはいちばん美味しいと感じる飲み方。華やかな香りと、温めることによって出てくる炊きたてのごはんのような香りの素晴らしい一体感を体験できます。

獺祭にぴったりのおつまみは、甘酸っぱいもの! トマトのピクルスや甘めのガリがあれば、延々と飲み続けることができちゃいます。高スペックなのに、料理に合わせると脇役にもなれるところもかっこいいんですよね。

日本酒に詳しい人にこそ、もう一度飲んでほしい

気分を上げたいとき。美味しいごはんがあるとき。美味しいお酒が飲みたいとき。落ち込んでいるときや、自分を奮い立たせたいとき。そんな時に飲みたくなるのが獺祭です。わたしは日本酒の仕事をしていますが、獺祭を飲むと、いつでも初心に帰ることができます。

獺祭をおすすめしたいのは、獺祭を知っているけれど、本当の意味では知らない人です。「獺祭はお酒だけで飲むのがいちばん美味しい」と思っている人には料理と一緒に試してほしいし、「冷やして飲むもの」と思っている人には、ぜひ温めて飲んでみてほしい。温度やグラスによって変わる表情は最高です。そのポテンシャルの高さは、日本酒のコアなファンの方々にもっと評価してもらえるものだと信じています。

松原もも(ももたそ)
富山県の日本酒バー(ミシュラン・ビブグルマン)店長、都内の酒販店を経て独立。飲食店のコンサルティングや酒蔵の公式レシピの開発など、食と酒を中心とした活動をおこなう。直近では、茨城県・来福酒造の古民家カフェ「OMI CAFE」のレシピ開発を担当。
Twitter: @mtbr100

【シリーズ:定番酒への愛を熱く語る】
料理研究家 松原もも:「獺祭 純米大吟醸45」旭酒造(山口県)

WSET Sake エデュケーター KJ Sakura:「泡々酒ストライプ」丸本酒造(岡山県)

会社員 godanism:「奈良萬 純米酒」夢心酒造(福島県)

料理家・酒屋「発酵室よはく」店主 真野遥:「丹澤山 麗峰」川西屋酒造店(神奈川県)

会社員 河島泰斗(わっしー):「群馬泉 山廃本醸造」島岡酒造(群馬県)

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