2021.06
03
賞味期限とは違う!日本酒の「製造年月」の読み方を学ぶ
日本酒のラベルには「製造年月」が記載されています。「新鮮な日本酒を選びたい」と思って、製造年月をチェックしている方もいるかもしれません。しかし実はこの製造年月、必ずしも「お酒が造られた時期」を示すとは限らないのです。
今回は、日本酒における「製造年月」や「製造日」がいったいいつを指す言葉なのかを学びましょう。加えて、消費者にとってより分かりやすい表示をするために行われている工夫もご紹介します。
「瓶詰めされた時期」が原則!
国税庁の定めるところによれば、清酒の製造時期とは「販売する目的をもって容器に充塡し密封した時期」のこと。つまり、造られた時期にかかわらず、瓶詰めされた時期が製造年月となるのです。
多くの日本酒は、冬季に造られ、しばらく熟成されてから出荷されます。寒いうちに仕込みから上槽(※1)までを終えたあと、タンク内で数ヶ月から1年間程度寝かせ、味を落ち着かせてから瓶に詰めるのがこれまでの一般的な日本酒の製造工程でした。中には、瓶詰めまでに何年間も熟成させる日本酒もあります。
(※1)造ったお酒のもろみを搾り、液体(日本酒)と固体(酒粕)に分離する工程のこと
たとえば10年熟成させた日本酒でも、2021年3月に瓶詰めすれば、製造年月は2021年3月。製造年月が直近だからといって「新鮮な日本酒」とは限らないことがわかります。
特定名称酒で、瓶貯蔵を行う場合は「製品化した日」
最近では、タンク貯蔵中の酸化等を防ぐため、上槽直後に瓶詰めをして、瓶の中で熟成させる日本酒も増えています。
タンク貯蔵の日本酒なら瓶詰めしてすぐに店頭に並びますが、瓶で貯蔵される日本酒の場合、瓶詰めしてから店頭に並ぶまでに時間がかかります。ここで「瓶詰めされた時期=製造年月」のルールに従うと、全く同じ時期に造られ、同じ期間貯蔵された日本酒であっても、タンクで貯蔵されたか瓶で貯蔵されたかによって製造年月が変わってしまうことになります。
このようなややこしい事態を回避するため、国税庁は、製造年月の表記ルールに次のような例外を設けました。
「特定名称(※2)の清酒であって、容器に充填し冷蔵等特別な貯蔵をした上で販売するものについては、その貯蔵を終了し販売する目的をもって製品化した日を製造時期として取り扱う。」
(※2)大吟醸・純米などの、精米歩合やアルコール添加有無等を示す表示に使われる名称
「その貯蔵を終了し販売する目的をもって製品化した日」に明確な定義はありませんが、通常は出荷用にラベルを貼り付けたときを指すようです。
この例外のおかげで、瓶で貯蔵した日本酒であっても出荷直前の時期を製造年月とすることができるようになり、貯蔵方法による製造年月のズレを防げるようになりました。
実際に造られた時期を表示する各酒蔵の取り組み
そうは言っても、「製造年月」が「実際に造られた時期」と異なるのは、消費者にとって分かりやすい表示とはいえません。
製造年月が「瓶詰めの時期」や「製品化した日」となっているのは、日本酒が出荷のタイミングで課税されることと関係しています。たしかに税金を徴収する側からすれば「いつ出荷準備が整ったか」が表示されていると便利かもしれませんが、お酒を味わう側にとっては、それよりも「いつ造られたのか」を知りたいことが多いのではないでしょうか。
そこでいくつかの酒蔵では、製造年月とは別に「上槽年月」を表示することで、消費者にとっての分かりやすさを追求しています。ラベルから上槽された時期が分かると、熟成度合いや味わいを想像しやすいですね。
また、瓶詰め後に貯蔵するタイプの日本酒で、瓶詰め時を製造年月としている場合には、別途「蔵出年月」を表示しているケースもあります。
ラベルの表示がより分かりやすくなり、消費者が味わいをイメージしやすくなるよう、各酒蔵が工夫を重ねているのです。
まとめ
日本酒の「製造年月」は、以下の2通りに定義されています。
- 販売する目的をもって容器に充塡し密封した時期
- 特定名称の清酒であって、容器に充填し冷蔵等特別な貯蔵をした上で販売するものについては、その貯蔵を終了し販売する目的をもって製品化した日
製造年月は、いわば「出荷準備が整った時期」を指す言葉です。新鮮さの指標にはならないので、気をつけましょう。搾ってから日の浅い、さわやかな味わいのお酒を飲みたい場合は、店頭で尋ねてみると良いでしょう。なかには時間が経ってもフレッシュな酒質を保つお酒もありますので、そうしたお酒も含めて紹介してもらえるかもしれません。
また最近では、製造年月とは別に「上槽年月」や「蔵出年月」を記載するなど、消費者にとって分かりやすいように表示を工夫する酒蔵も出てきました。日本酒を飲むときには、ぜひラベルの表示をじっくり見て、酒蔵ごとの工夫を読み取ってみてください。
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