日本酒の原料を総まとめ! - 米、米麹、水から醸造アルコールなど副原料・添加物まで

2021.09

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日本酒の原料を総まとめ! - 米、米麹、水から醸造アルコールなど副原料・添加物まで

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

「日本酒の原料は何でしょう?」
こう尋ねられたら、あなたはどのように答えますか?

米はすぐに思い浮かぶけれど、あとはよく分からないという人も意外と多いのではないでしょうか。また逆に詳しい人は、さまざまな原料をどこまで答えればよいか迷ってしまうかもしれません。

今回は、どのような原料から日本酒が造られているのかをご紹介します。

「日本酒」の定義

普段私たちが飲んでいる日本酒のことを法律上では「清酒」と呼びます。酒税法(3条7号)では次の1~3のいずれかの条件を満たしていて、かつ、アルコール度数22%未満のものを清酒と定めています。

1.米、米麹、水を原料として発酵させて、こしたもの(※1)
2.米、米麹、水、清酒かす、その他政令で定める物品を発酵させて、こしたもの(※2)
3.清酒に酒粕を加えて、こしたもの

(※1)こす=原料を混ぜ合わせて発酵させたもろみをしぼること(上槽)
(※2)政令で定める物品=醸造アルコール、糖類、酸味料、アミノ酸など

日本酒のラベルにも「清酒」と印字されていますのでご存知の方も多いかもしれません。

また酒税法のほかにも日本酒の定義があります。海外での日本酒人気を背景に、輸出の促進とブランド価値の向上を目的として国税庁は2015年に「地理的表示における日本酒」の定義を指定しました。その定義とは「原材料に国産米のみを使い、かつ、日本国内で生産された清酒のみが「日本酒」を独占的に名乗れることができる」というものです。

主な3つの原料:米、米麹、水

日本酒の主な原料は米、米麹、水の3つと極めてシンプルです。順番に使われ方や特徴を確認してみましょう。

もっとも代表的な原料、米

酒造りに適した専用の米は「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」または「酒米(さかまい)」とも呼ばれます。

酒造好適米は食用の米(飯米)とは異なる特徴をもった、酒造りに適した性質に品種改良されたものです。農林水産省の「農産物規格規定」では醸造用玄米に分類されており120品種以上が登録されています。

酒造好適米の主な特徴には次の5つがあります。

1. 大粒で砕けにくい
2. 心白発現率が高い
3. 低タンパク
4. 低脂質
5. 軟質米

このうち1の大粒で砕けにくいことは日本酒造りに欠かせない精米に耐えられるための特徴です。たとえば大吟醸酒では50%以下の重さになるまで精米しても耐えられる大きさと、砕けにくさが必要になります。

2の心白とは、米の中心部に現れることのある白く不透明な部分のことです。心白はでんぷん質が詰まっておらず隙間があり、柔らかくなっています。この心白があることで麹菌の菌糸が米の中心部分まで入り込みやすくなり、良質な麹が作りやすくなります

また3,4のタンパク質・脂質は食用の飯米との大きな違いです。 タンパク質や脂質はごはんとして食べる際には旨味の元ですが、酒造りでは雑味や着色の原因となったり、フルーティな香り成分の生成を妨げるなどマイナスに働いてしまうからです。そのため酒造好適米にはタンパク質や脂質が少ない性質が求められます。

最後の軟質米については、精米がしやすいだけでなく、麹造りや酒造りのうえで、吸水性が良く溶けやすい軟質米のほうが発酵を進めやすいため、重要な特徴です。

酒造好適米で有名な品種には山田錦(主な産地は兵庫県)、五百万石(新潟県)、美山錦(長野県)、雄町(岡山県)などがあります。このほかにも地域の特性を活かした品種や、いちど栽培が途絶えた品種を蘇らせた復活米、酒造好適米ではない食用米など、多様な種類の米が用いられています。

酒造好適米についての詳細はこちらをお読みください。

日本酒造りの要、麹

日本酒造りにおいて大事なものは「一麹、二酛(酒母)、三造り(発酵)」と言われるほど、麹は日本酒造りの要と考えられているものです。

原料自体に糖を含むワインなどと違い、日本酒の原料である米には糖が含まれていません。米のデンプンを糖に変えるためには麹菌が分泌する糖化酵素の力が必要不可欠であり、この麹菌が米に繁殖したものが麹(米麹)です。

麹菌はカビの一種であり、黄麹菌、白麹菌、黒麹菌の3種類が酒造りに使われます。日本酒には主に黄麹菌が用いられますが、最近では主に焼酎に使われる白麹菌や、主に泡盛に使われる黒麹菌を使用した日本酒も造られるようになってきました。

麹を作る過程は「製麹(せいきく)」と呼び、およそ2日程度を要します。日本酒の品質を左右する重要な工程です。

麹についての詳細はこちらをお読みください。

原料のおよそ8割の量を占める、水

日本酒の原料のうち、およそ8割は水です。

仕込み水や割水など原料としての水のほかに、洗米・浸漬・洗浄など酒造りの工程ではあらゆる場面で水が使われています。こうした原料以外に使われるものも含めると、水の使用量は米の総重量のおよそ50倍にもなります。

このような背景から「名水あるところに銘酒あり」と言われるように良質な水を豊富に得られる土地が酒どころとして名を馳せています。

では酒造りに適した良質な水とはどのような水のことでしょうか?
酒造りに使う水には水道水以上の厳しい基準が定められています。美味しい水であり濁りや汚れのない水であることはもちろんですが変色や劣化など酒に悪い影響を与える成分(鉄やマンガン)が含まれていないかなどが厳しくチェックされています。

また重要なのが水の「硬度」です。硬度とは水分中のミネラル含有量で算出される数値のことで、酒の味わいに大きく影響します。一般的に硬度の高い「硬水」で仕込んだ酒はキレのある濃厚辛口に、硬度の低い「軟水」で仕込んだ酒はまろやかで端麗な味になる傾向があると言われています。

水についての詳細はこちらをお読みください。

その他の副原料

日本酒の主な原料は米、米麹、水の3つですがこれ以外にもさまざまな原料が使われています。これらの副原料には、ラベルへの表示義務があるものとないものがあります。それぞれ順番に見ていきましょう。

醸造アルコール

日本酒の副原料で良くも悪くも有名なのは醸造アルコールです。醸造アルコールは、主にサトウキビなどを原料とした糖蜜から造られています。醸造アルコールの使用目的は香りを際立たせてキレをよくする、アルコール度数をあげる、保存性を高める、などです。

醸造アルコールはラベルへの表示義務があり ます。醸造アルコールの 添加されていない日本酒を純米酒(純米系)と呼びます。

なお、特定名称酒と呼ばれる本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒の場合、添加できる醸造アルコールの量は酒税法86条により白米の重量の10%以下に定められています。

醸造アルコールについての詳細はこちらをお読みください。

糖類、酸味料、アミノ酸

糖類、酸味料、アミノ酸はラベルに表示義務のある副原料です。これらを使用した場合、純米や吟醸などの特定名称酒を名乗ることはできなくなります。

日本酒造りに使われる糖類は砂糖ではなく主にブドウ糖や水あめです。甘味の調整に使われます。

また、酸味料として使われるのは乳酸やクエン酸です。これらは日本酒が発酵する過程で自然に発生する有機酸と同じ成分で、味のバランスをとる目的で添加されます。

糖類や酸味料にくらべると使用されるケースは少ないですが、日本酒の特徴である旨味を補うために、グルタミン酸などのアミノ酸が添加されることもあります。

なお、使用する原料については醸造前に税務署への申告が必要です。そのため味の調整といっても「足りなかったから加える」というものではなく、他に使用する原料や製造方法の都合上、最後に添加物を加えて味のバランスをとることを、あらかじめ見越して酒造りを行っています。

酵母

酵母はラベルへの表示義務がない副原料です。(原料として取り扱わないことが酒税法で定められています。)

酵母はワインやビールなどのお酒だけでなく、パンや味噌、醤油など多くの食品に使われていますが、日本酒造りに使う酵母は「清酒酵母」と呼ばれています。

酵母の主な役割は、麹菌の持つ酵素によってでんぷんから分解された糖を、アルコールと炭酸ガスに分解することです。酵母にはこのほかにも、日本酒に特徴的なフルーツのような香りや、味わいに個性をもたらす有機酸を生成する役割もあります。

ところで明治時代頃までは、酒蔵の建物や道具に生息する「蔵付き酵母」が酒母やもろみに入り込むことで酒が造られていました。

しかし明治時代の後半以降、日本醸造協会(当時の名称は「醸造協会」)が優れた特徴を持つ酵母の培養に成功し、全国の蔵元に頒布するようになります。これらは「きょうかい酵母」と呼ばれ、現代では多くの日本酒がこれらの酵母を使用して造られています。

またきょうかい酵母以外にも都道府県が開発した酵母や、東京農業大学が開発した「花酵母」などがそれぞれの団体により頒布されているほか、いまでも蔵付き酵母を使用している蔵元もあります。

酵母についての詳細はこちらをお読みください。

乳酸、その他の副原料

酵母以外に、表示義務のない副原料として代表的なものは「乳酸」です。多くの日本酒は、「酒母」を仕込む際に醸造用乳酸を添加しています。乳酸は、酒造りのスタートにあたる酒母を酸性の環境にすることで雑菌の繁殖を防ぎ、酵母が健全に育ちやすいようにしてくれます

「速醸」と呼ばれるこの方法は、明治時代に編み出されて以来徐々に普及し、戦後から現在に至るまで日本酒造りの主流です。「生酛」「山廃」などと表記されていない日本酒の場合には、基本的にはこの方法がとられています。

このほかにも表示義務のない副原料として麹の代わりを果たす酵素剤や、余計な着色や香りなどを取り除くためのろ過に使われる活性炭などがあります。

日本酒に使われる、副原料や添加物についての詳細はこちらをお読みください。

まとめ

日本酒の原料を知ると、いままで漠然と眺めていたラベルの意味が理解できるようになり、日本酒の楽しみ方が広がります。

詳しく知ることで、お酒を選ぶ際の判断材料が増えることにもつながりますので、この記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

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