2022.11
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オランダ日本酒事情①日本文化や日本酒の輸入状況を解説
日本酒の販売先は、今や日本国内だけではなく、世界に広がってきています。ヨーロッパではフランス、イギリスが二大輸入相手国ですが、実はオランダも多くの日本酒を輸入しています。
他国への鎖国をおこなっていた江戸時代のころから日本と長い交易の歴史があるオランダでは、どのように日本酒が楽しまれているのでしょうか。オランダの市場や食文化とともに紹介します。
オランダの市場概要
オランダの人口は、およそ1740万人と日本の14%ほど。面積も九州と同じくらいという小国でありながら、一人あたりGDPは日本を上回り、EU内で第4位という経済大国です。
オランダは貿易大国で、WTOの統計によれば2019年〜2021年の貿易輸出額は日本を抜いて世界4位に君臨しています。ヨーロッパ最大の港であるロッテルダム港や、ハブ空港のアムステルダムスキポール空港は、EUの貿易窓口。交通の利便性に加えて、人口のほとんどが流暢な英語話者であること、企業に有利な法人税制があることなどから、UberやNetflix、IKEAなどグローバル企業の本社が多く置かれています。
オランダの食文化の特徴
オランダ人は日本人ほど外食をしません。夕食は家族と一緒に食べることが多く、夕食以外に温かい食事を摂ることはあまりありません。
パンとじゃがいもが主な主食で、代表的なオランダの伝統家庭料理は、スタンポットと呼ばれる、茹でたじゃがいもとケールやザワークラウト(塩漬け発酵キャベツ)などの野菜を一緒にマッシュしてスモークソーセージを添えたものです。
旧植民地のスリナム・インドネシア料理はオランダ料理の一部とも言われるほど浸透しています。また、オランダ料理以外で人気が高いのはイタリアンです。スーパーにはオーブンで焼くだけのフレッシュピザが何種類も並び、生パスタの種類も豊富。オランダの多くの人にとっては、手軽さがいちばんの優先事項なので、調理済み食品、半調理品が充実しています。
美味しい魚介類にも恵まれています。隣国ベルギーとの国境ではムール貝や牡蠣の養殖が盛んで、にしんを生のまま塩漬けにした「ハーリング」や、魚をカレー風味で唐揚げにした「キベリング」も人気です。こうした魚食文化からは、日本酒(SAKE)を受け入れる下地があるように見て取れます。
オランダの酒文化
そんなオランダで人気なお酒はビールです。オランダの一人当たり年間アルコール消費量は日本よりも少ないですが、一人当たりビール消費量は日本の約二倍にも及びます。
ピルスナービールのハイネケンが最も有名ですが、小規模醸造所も多くあります。2012年には180箇所だった国内のブルワリーはクラフトビールの流行で数を増やし、現在900箇所以上にまで増加。外国産では、特にベルギーやドイツのビールがよく飲まれています。
次に多く飲まれているのはワインで、近年は、特に若い人の間でナチュラルワインの人気が出てきています。オランダワインはまだ有名ではありませんが、国内のワイナリーの数はここ5年で倍増していて、その数は現在170箇所を超え、毎年100万本ほどの生産量があります。
ジャパニーズウイスキーはオランダでも人気で、大手リカーショップではサントリー、ニッカを中心に20種類近くの品揃えがあります。そのほか、オランダの蒸留酒といえば、ジンの元となったジュネヴァ。味はジンよりもウイスキーに近く、食前や食後に飲まれたり、カクテルに使われたりします。
世界的なトレンドと同様、オランダもアルコール消費量は減少傾向にあります。
日本とオランダの関わり
オランダと日本は、江戸時代から400年以上の交易の歴史があります。日本で初めてビールが作られたのも、長崎にいたオランダ人の手によるもので、ビールという呼び方はオランダ語の「bier」の発音から来ていると言われています。
醤油や日本酒のアジア・ヨーロッパへの輸出は、鎖国が始まった17世紀中頃から、オランダ東インド会社を中心に行われていました。18世紀末には、輸送中の醤油の劣化を防ぐために、樽に替わって、大量生産が可能で丈夫な長崎波佐見焼で作られた「コンプラ瓶」に詰めて輸出されるようになりました。この名前は、鎖国前から日本と貿易をしていたポルトガルの「Comprador(仲買人)」という言葉から、仲買商人達のことを「コンプラ仲間」と呼んだことに由来します。
和食を中心とする日本文化の親しまれ方
現在でも、オランダでは日本文化が親しまれています。
アニメや映画関連のイベントなども多数開催されていますが、近年注目が集まっている日本文化は「金継ぎ」です。金継ぎキットは美術館やデパート、オンラインショップで手に入り、ワークショップも多数開かれています。
日本食に関しては、他の国と同様、寿司とラーメンが多くの人に親しまれています。最近ではジャパニーズカレーの認知度も高くなってきました。
日本食材は、ほとんどのスーパーで買うことができます。大手スーパーでは醤油や海苔、わさび、カニカマや即席ラーメンなどに加えて、パック寿司や小瓶の日本酒が手に入ります。オーガニック系のスーパーでは、麹や味噌、梅干しなどより本格的な日本食材が、アジア系スーパーでは、カレールウやチラシ寿司の素など、日本とほとんど同じ商品が手に入ります。
近年の外食産業の発展に伴い、寿司やラーメン以外の日本食や日本酒にも人気が広がってきており、日本食以外のカフェやレストランでも、ゆずや出汁、海苔などの素材を使った料理や日本酒を出すところが増えてきています。
統計から、日本酒流通の状況を見る
日本からヨーロッパ向けの清酒輸出額は年々増加しており、2021年には20億円を超えました。オランダへの輸出額は、イギリス、フランス、ドイツに次いで4位です。人口に比して輸出額が多いのは、ロッテルダム港を利用した中継貿易が多いためだと推察されます。
オランダは、イギリスやフランスに比べて1リットルあたりの輸出価格が低く、プレミアム価格帯の日本酒輸出量はあまり多くないことがわかります。
いまだ新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、オランダの外食産業は成長を続けています。さらに、ミレニアル世代(1980年頃−1990年代中頃生まれ)はそれ以前のX世代(1960年代中頃−1980年頃生まれ)より多くのお金を外食に使っているというデータもあります。この流れに乗って今後さらに食文化の発展が進めば、プレミアム価格帯の日本酒輸出にも伸びしろがありそうです。
後編では、オランダ現地で日本酒の普及活動に努める飲食店・酒販店にインタビュー。オランダの日本酒/SAKE事情をさらにディープな視点からお伝えします!
参考
キリン歴史ミュージアム「ビール」という日本語の由来(閲覧日2022年11月28日)
キッコーマン国際食文化研究センター 江戸時代のしょうゆ輸出について(閲覧日2022年11月28日)
日本食文化の醤油を知る 江戸時代の醤油輸出(閲覧日2022年11月28日)
波佐見歴史文化交流館Webサイト「波佐見焼の歴史」(閲覧日2022年11月28日)
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