2022.12
06
センスがなくても大丈夫!家飲み写真をおしゃれに撮る方法は? - プロのフードスタイリストが解説!
飲んだお酒を写真に撮って、TwitterやInstagramなどのSNSにアップする。日本酒好きにとって、備忘録や酒仲間とのコミュニケーションのために、スマホで写真を撮るというのは日常茶飯事です。
しかし、あんなに楽しかった夜なのに、スマホを見返すとなんだかよくわからないものが写っている。
とても美味しかったお酒が、あられもない姿に。日本酒の魅力を伝えようにも、アルバムを見ると、逆効果になりそうな怪作の数々が並んでいます。
インスタグラマーなんて大層なものになりたいわけではないんです。でも、せめて美味しかった日本酒のイメージや、楽しかったあの夜の思い出を損ねずに記録したい。
センスがない人間にも、おしゃれな飲み写真を撮影することはできるのか? おしゃれ写真に憧れる世の酒飲みを救うため、SAKE Streetでは、特別企画「センスがなくてもおしゃれに飲みたい!」を決行することにしました。
「家飲み写真ヘタクソ選手権」を開催!
去る9月、SAKE Streetでは「家飲み写真ヘタクソ選手権」を開催。うまく撮れなかった家飲みの写真を、#家飲み写真ヘタクソ選手権のタグをつけてTwitterに投稿してもらいました。
ただヘタクソであることを晒されるだけではなく、なんと、優勝者はプロのフードスタイリストさんから写真の指導を受けることが可能。さらに、指導時に使うテーブルウェアをプレゼントとして受け取ることができます。
この特典に惹かれてか、それともただヘタクソ自慢をしたいがためか、約50件にも及ぶ投稿が集まりました。
リラックマがいい味出してる。画面左で倒れている箱も気になります
めかぶ遠い。ラベルを撮ろうとするとこの角度になりがちです
ネコチャン
そんな激戦の中から、栄えある優勝者が決定! 見事優勝した旨をお伝えし、ご自宅での取材を行わせていただくことになりました。
優勝者のお宅訪問! おしゃれ飲みを妨げるものとは?
優勝者に選ばれたのは、都内の会社に勤務するりょうすけさん。奥さまとお義母さま、ペットの犬&猫とともに暮らしています。投稿時はマンションに住んでいたそうですが、最近一軒家に引っ越したとのこと。
それでは、見事“ヘタクソ”の頂点に選ばれたりょうすけさんの家飲み写真を見てみましょう。
「会津龍が沢 純米大吟醸 一回火入れ」(福島県・榮川酒造)を撮影したはずが、テレビにピントが合ってしまっています。その手前には、コロコロ(ワンちゃんたちの毛を掃除するためのもの)が堂々と鎮座。
【審査員コメント】
・キャップのリングがついたままなのもいい
・テーブルに瓶底の濡れ跡がついちゃってる
・醤油と塩のフォーメーションが絶妙。お皿に入れずに直接かけてるのかな?
・よく見たらカーテンが中途半端に開いている
まさにヘタクソの全部載せのような作品を納めたりょうすけさんに、家飲み写真を撮るときのお悩みポイントを聞いてみました。
お悩み①ボトルの全身を撮ろうとすると、背景が映り込む
日本酒のボトルは高さがあるので、肩ラベルまで映そうとすると背景に並ぶものが映り込んでしまいます。料理を乗せた平面のお皿と並べて撮るのも難しい。とはいえ、ラベルをクローズアップすると単調な写真になってしまいます。
お悩み②同じ場所、同じ構図になりがち
室内で背景が映り込まない場所を選ぼうとすると、必然的に毎度同じ場所、同じ構図で撮影することに。お酒はうまく映せても、おもしろみのない写真ができあがります。
お悩み③だいたい酔っぱらっている時に撮るので、判断力が鈍っている
家飲み写真というのは、お酒を飲んでいるときに撮影するもの。酔っぱらって浮かれているせいで、テーブルに載っている恥ずかしいものに気づかないまま撮影してしまうこともしばしばです。
奥さまに意見を求めたところ、「いつも『SNSに載せるならちゃんと撮って!』って叱ってるんですけど、無視してこんな写真ばっかり……」と悲しげな表情。夫婦円満のためにも、なんとかヘタクソを卒業してみせたいところです。
実際に写真を撮ってみよう!
フードスタイリストがアドバイス!
今回、救世主としてお招きしたのは、フードスタイリストのまるやまちさとさんです。
食のプランナーや料理家として活躍しているまるやまさんのInstagramには、おしゃれ写真の数々が並んでいます。
優勝したりょうすけさんのヘタクソ写真を見せると、「この企画のすべてを詰め込んだような写真ですね」と絶賛してくれました。まるやまさんの指導によってりょうすけさんのスキルがどれだけ上がるのか、期待が高まります。
センスがない人でもおしゃれな写真が撮れるよう、まるやまさんが器を用意してきてくれました。いずれもニトリで手に入る数百円のアイテムばかりです。ちなみにまるやまさんはご自身のnoteにて、「これさえあれば大丈夫。初めての一人暮らしの食器」というニトリのアイテム紹介の記事を書いています。
まるやま「ニトリで買うときは、柄がないものやガラス製のものを選ぶと、安っぽく見えなくなります。ブルーの大皿なんかは写真映えしやすいんですが、お料理を選んでしまうので、今回は和風と洋風それぞれで白っぽい色合いの器にしてみました」
本企画は、あくまでセンスがない人でもおしゃれに撮影できることを目標としているため、料理は近所のスーパーのお惣菜を購入。日本酒と一緒に食べたくなりそうな、お刺身の盛り合わせと、野菜のお惣菜をチョイスしました。
お酒はSAKE Streetから、日本酒らしいデザインの「大那 特別純米 ひやおろし(菊の里酒造)」と、モダンなデザインの「Beau Michelle BLISS(伴野酒造)」をお持ちしました。
器だけで写真のセンスはよくなるのか?
まずは、まるやまさんが用意した器を使って、りょうすけさんが盛り付け&撮影に挑戦。フードスタイリストのセレクトしたお皿を使うだけで、どれだけ印象が変わるのでしょうか。
「普段はこの辺に座って、何も考えずにこうやって撮るんですが……」とりょうすけさんが撮影した写真がこちら。
あれ? まあまあいいのでは? 一軒家に引っ越してスペースが広くなった関係で、コロコロなどの不要な映り込みがなくなったのも一因かもしれません。まるやまさんからも、「赤いの(唐辛子)を上に載せたのがとてもいいですね!」とお褒めの言葉をいただきました。
続いて、同じお酒と料理を使って、まるやまさんが盛り付け&撮影。普段のお仕事やInstagramでは一眼レフカメラを使用しているそうですが、今回は家飲みらしく、条件をそろえてスマートフォンのカメラアプリで撮影していただきます。
ランダムに切り分けられたきゅうりから、形の良さそうなものをピックアップし、向きを調整しながら盛り付け。りょうすけさんよりも盛りがいいです。
続いては背景選び。「カーテンは生活感が出てしまうんですが……」と言いながら、最終的に撮影したまるやまさんの写真がこちら。
ああ、なんかおしゃれ……。りょうすけさんの写真とパーツはほとんど変わらないのに、整然として見えます。
まるやま「白壁を背景にしたほうが撮りやすいんですが、敢えて同じカーテンの前で撮ってみました。りょうすけさんの写真は、斜め上から見下ろすかたちで撮ってしまっているので、カーテンの縦線が放射線状になってしまっているんです。テーブルの線もですが、画面の中にある縦のラインと横のラインがそれぞれ平行になるほうがきれいに見えるんですよ。裏技として、スマホを逆さまにして撮影すると、ボトルの横幅が上から下まで同じ太さになります」
また、お料理の盛り付け方も差が出るところ。
左がりょうすけさんのきゅうり。右がまるやまさんが盛り付けたきゅうりです。りょうすけさんが、「きゅうりだけでこんなに差が出るんですね……」とボソリ。確かに、同じ商品なのに右のほうが美味しそうに見えます。
まるやま「料理の中心が高くなるように盛り付けるのがポイント。また、きゅうりの白い面と緑の面をバランスよく見えるようにしてあげると、きれいになります。
ちなみに、人の目は写真の左下から見上げる習性があるので、お箸の先を左下からお酒に向けることで視線を誘導してみました。敢えてきゅうりにはピントを合わせていませんが、SNSに投稿する写真は『飲んでるんだな』というリアルな空気感を出すことが必要なんですよね」
アドバイスをもとに、2品目に挑戦!
まるやまさんのアドバイスをもとに、りょうすけさんが2品目に挑戦。今度はお刺身を盛り付けます。
「高さをつけて……」とつぶやきながらツマを活用するりょうすけさん。すごい! 早速アドバイスを実践しています! 「これでいいのかなぁ……」とやや自信がなさそうに盛り付けを終え、撮影タイムへ。
スマホを逆さまにしています。吸収が早いです! 先ほどよりも試行錯誤に時間をかけながら何度か撮影。果たして、どんな写真が撮れたんでしょうか?
うまくなってる!! お刺身の盛り方に高低がありますし、カーテンもきちんと平行になっています。しかし、りょうすけさんは「おかしいなぁ?」とあまり納得いっていない様子。
まるやま「とてもよくなりましたね! カーテンの縦のラインはきちんと平行になっているんですが、横軸が少し斜めになってしまっているので、そこに気をつけて。あと、グラスが少し置いてけぼりな感じがするので、場所を変えてもいいかもしれません」
まるやまさんのアドバイスをもとに、再度撮影。
お刺身がどーんと迫ってきて、美味しそう! グラスの場所も落ち着いて、収まりのよい写真になりました。
まるやま「写真の撮り方へのアドバイスとしては、ともかくきれいに映る場所を探すことです。『絶対にここが正解』というのはないんですよ」
そう言いながら、スマホを片手に、お皿をくるくる回し出すまるやまさん。「大葉のグリーンがきれいに入るところを探しています」と言って撮影したものがこちらです。
お皿が見切れている! なるほど、お刺身を食べていることが伝わればいいので、丸ごと映す必要はないんですね。サーモンのオレンジと日本酒のラベルのオレンジに、大葉のグリーンがアクセントになってきれいです。
まるやま「ツマを使うのはとてもいいアイデアですね。盛り付け方をテコ入れするなら、魚の重なりをもう少し整えて、方向をそろえてあげること。あとは、ニンジンがピロピロ飛び出してしまっているので(※りょうすけさんの写真の左下を参照)、しまってあげるのも大切です」
盛り付け方を少し整えたところで、最後にまるやまさんにとっておきのカットを撮影してもらいました。
うわっ、インスタにありそう!
まるやま「秋っぽい雰囲気を出すために、布を敷いてみました。実はこれ、こたつカバーなんですよ。ニトリにあるなかでいちばんかわいかったので。布ならなんでも大丈夫。私も撮影現場にいいテーブルクロスがないときは、クッションの端とかズボンの端を使うことがあるんですよ。
大きいお皿を全部写したいときは、ボトルを寝かせてあげる方法が使えます。左上から光が入るように撮影してあげると、俯瞰で撮っても影ができません」
映える写真のためには、こたつカバーを使うことも辞さない。おしゃれとは、発想の転換とあくなき探究心の賜物なんですね。
まとめ:センスがなくてもおしゃれに飲める!
まだまだ伸びしろがあるとはいえ、ポイントを押さえることで圧倒的な成長を遂げたりょうすけさん。
りょうすけ「カメラを逆さまにしたり、ボトルを寝かせて撮影したりするのは、僕ひとりだったら絶対に思いつかなかったアイデア。明日から早速今日学んだことを活用していこうと思います」
奥さまも、「よく『カッコよく撮ってほしい』と横からツッコミを入れていたので、これを機に上達していってほしいです」と健闘を称えます。
まるやま「上達が早くてびっくりしました。今日伝えたポイントを押さえて、あとはひたすらいい角度や場所を探すこと! いろいろ撮り方を試せるのも家飲みのいいところですよね」
最後に、まるやまさんから「奥さまの手がとてもきれいなので、手を添えてもらったりして、二人で共同作業をしてもいい写真が撮れますよ」とアドバイスが。おしゃれな家飲み写真は、夫婦円満にも結びつくようです。
【企画のまとめ】
・おしゃれ写真のための器はリーズナブルなものでOK
・画面の中の縦のラインと横のラインを平行に
・ボトルを撮影するときはスマホを上下逆さまにしよう
・光は左上から入るように
・料理は中心が高くなるように盛る
・とにかく探す! 試す!
つまり……センスがなくてもおしゃれに飲める!
りょうすけさんとご家族のみなさん、ご協力ありがとうございました。
今回、Twitter企画に参加してくださったみなさんも、まるやまさんからのアドバイスを参考に、おしゃれな家飲み写真に挑戦してみてください! 筆者も早速、スマホを逆さまにしようと思います。
プロフィールまるやま ちさと
食のプランナー、料理家、フードスタイリスト。 九大自炊塾の受講をきっかけに食に強い関心を持ち、農家訪問や飲食店での修行を経て、食関係の仕事に従事。日本酒ペアリングレシピの提供、ペアリングイベントのケータリングも行う。最近は地元鹿児島の焼酎に魅了され、#元焼酎嫌い の焼酎会を主催。
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