2021.07
22
英語で日本酒を説明するための実用表現 (5) - 生酒、にごり酒を説明しよう
世界中で日本酒への関心が高まるにつれ、国内の酒販店や飲食店でも、海外から来たお客さんを相手にする機会が増えてきています。
このシリーズでは、私・木村咲貴が、アメリカ・サンフランシスコの酒販店「True Sake」の販売員として活動してきた経験をもとに、海外のお客さん相手に使える英会話をご紹介していきます。 英語が苦手な人にとっては簡単で、英語が得意な人にとっては実用的なポイントがつかめる内容にしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
第3回から、日本酒のカテゴリごとにお酒の製法や特徴を説明する英語を解説しています。今回は、アメリカで人気が高い「生酒」と「にごり酒」に関する表現方法を見ていきましょう。
「生酒」を英語で説明すると?
「生酒」は、英語圏では「Nama」や「Nama zake」と呼ばれています。
Nama means unpasteurized.
(生とは、低温殺菌をしていないという意味です)
「低温殺菌された」という意味の単語である「pasteurized」に否定の「un」をつけた「unpasteurized」という言葉。難しく感じてしまうかもしれませんが、低温殺菌法を開発した細菌学者であるパスツール(Pasteur)の名前がもとになっていることを理解すると、覚えやすくなります(固有名詞が動詞になるのは、「ググる」みたいな感じですね)。
しかし、このunpasteurizedという単語、日常ではあまり使われないので、英語圏の人にも理解してもらえないことがしばしばあります。確かに、日本人でも「低温殺菌された」と言われてピンとこない人はいるかもしれません。 そんな人には、「This is raw sake.(これは生のお酒です)」「This is living sake.(これは生きているお酒です)」という説明も有効です。
・Generally, in order to keep the quality, sake is heated up twice.
(一般的に、日本酒は品質を安定させるために2回加熱されます)
・It stops fermentation and destroys unwanted bacteria.
(発酵を止め、殺菌を行うのです)
・Nama is a kind of sake that is not heated at all.
(生酒とは、一度も加熱をされていないお酒のことです)
海外には生詰めや生貯蔵も出回っています。これについても説明できるとよいですが、ややこしいので、とりあえずは「Nama-zume (Nama-chozo) is single-pasteurized sake.(生詰め(生貯蔵)は一回火入れのお酒です)」と言えるようになっておきましょう。
・Nama-zume is heated up before storage. It skips the second pasteurization at the bottling process before shipping.
(生詰めは貯蔵前に加熱されます。出荷前の瓶詰めのプロセスにおける2度目の火入れは行いません)
・Nama-chozo is heated up only at the bottling stage.
(生貯蔵は、瓶詰めの段階でのみ加熱されます)
「生酒」の特徴を説明しよう
生酒の味わいを表現するときに、fresh(フレッシュな)やlively(生き生きとした)といった単語を使うことができます。私が「True Sake」の店長であるMeiに教えてもらったのは、“オレンジジュース”を使った説明方法です。
・The difference between nama and regular sake is similar to that between freshly squeezed orange juice versus bottled.
(生と通常の日本酒の違いは、しぼりたてのオレンジジュースと、ボトル入りオレンジジュースの違いに似ています)
・Nama tastes fresher and livelier because microorganisms are alive in the bottle.
(生は、微生物がまだ生きているので、よりフレッシュで生き生きとした味わいをしています)
また、生酒とセットで覚えておきたいのが「無濾過生原酒」です。
・Muroka means un-charcoal-filtered.
(無濾過とは、炭濾過をしていないという意味です)
・Genshu means sake that has not been diluted with water.
(原酒とは、加水されていないお酒という意味です)
「無濾過って?」「原酒って?」と質問されたときのためにメモはしておきたいですが、難しい単語ばかりだといざというときにはなかなか出てこないものですよね。接客の現場では伝える=使えることのほうが大切なので、例えば「It means “straight from the tank.”(”タンクからそのまま出したお酒”ってことだよ)」などと覚えやすい言い回しを考えておくのもおすすめです。
It tastes robust and the alcohol proof is higher than regular sake.
(味わいが濃く、アルコール度数も一般的なお酒より高いです)
さらに、生酒の説明のときに忘れてはならないのが、冷蔵保存について。
・You should keep it in the fridge.
(必ず冷蔵庫で保存してください)
・Nama is delicate and its flavor changes easily as the temperature rises.
(生酒はデリケートなので、温度が上がるとすぐに味わいが変わってしまいます)
自信のある人は、
When the temperature is low, the microorganisms are asleep. When the temperature rises, they become active and change the taste.
(温度が低い状態では、微生物は眠っているのですが、温度が上がると活動を始めて味を変えてしまうんです)
と説明すると、よりイメージしてもらいやすくなります。
「にごり」を英語で説明すると?
海外で根強い人気を誇るにごり酒。甘みが強く、クリーミーな舌ざわりから、ビギナーにとって日本酒の入り口となることの多いお酒です。
・Nigori means cloudy.
(“にごり”とは“cloudy=曇っている”という意味です)
・Sake is made from rice. It looks white because it is roughly filtered.
(日本酒はお米から造られますが、これは粗く濾しているため、白い見た目をしています)
にごり酒に似たものとして、どぶろくとの違いも簡単に説明できるようにしておきましょう。
Doburoku is also cloudy, but not filtered at all.
(どぶろくは同じくにごっていますが、濾過をまったくしていません)
そのほか、にごり酒の説明で使えるキーワードや会話の一例をご紹介します。
creamy:クリーミーな
milky:ミルキーな
silky:シルク(絹)のような
rich:濃厚な
Nigori goes well with spicy food or BBQ.
(にごりは辛い料理やバーベキュー料理とよく合いますよ)
レベルアップ! 「活性にごり」の説明と開栓方法の説明
にごり酒の一種である活性にごり。輸送の難しさから海外ではまだあまり出回っていませんが、フレッシュで華やかなスパークリングタイプは、パーティなど活躍できるシーンも多く、日本酒のイメージをガラリと変えてくれるアイテムです。
Kassei means active.
(“活性”とは、“active=活動的な”という意味です)
これまで学んだ生酒とにごり酒の説明を組み合わせると、活性にごりについて説明することができます。
・Kassei nigori is unpasteurized cloudy sake.
(活性にごりは、低温加熱処理をしていないにごり酒のことです)
・Kassei nigori does not go through the heating process, so microorganisms are still alive in the bottle.
(活性にごりは加熱処理を行わないため、微生物が瓶の中で生きています)
活性にごりの特徴は、まだ発酵が続いているということ。伝えておかなければ、開栓時に大惨事が起こってしまい、クレームにつながりかねませんのでご注意を。
・It is allowed to ferment further in the bottle.
(瓶の中でまだ発酵が続いています)
・It keeps producing gas in the bottle, so there is a risk of exploding when you open it.
(ガスが発生しているので、開けるときに噴き出してしまう危険があります)
・You need to make it ice cold and open it gradually and carefully.
(キンキンに冷やして、じわじわと、慎重に開けなければいけません)
英語トリビア:地酒の象徴の生酒が、世界のJizakeに
かつて、生酒とは地元だけで飲まれるものでしたが、運送会社や酒販店における冷蔵設備が整えられたことで、全国で各地の生酒を楽しめるようになりました。同じく海外でも生酒の流通は難しいと考えられてきましたが、冷蔵コンテナでの流通システムが整備され、現在はさまざまな生酒が世界の国々に届くようになっています。
これまで、海外市場ではにごり酒や純米大吟醸などがゲートウェイ・サケ(ビギナーの入門のお酒)になっていましたが、その仲間入りを果たした生酒。味わいにインパクトのある無濾過生原酒をはじめ、フレッシュなNamaが新たなファンを獲得しています。
また、アメリカ現地のローカル酒蔵も、設備や作業コストなどの事情から、生酒を造るところがほとんど。日本とは異なり、まだまだ冷蔵輸送のハードルが高いアメリカ国内では、かつての日本のように、ローカルを象徴するものとしてNamaが楽しまれているのです。
最終回となる次回は、海外のお客さんからよく聞かれる質問集をお届けします。お楽しみに!
接客や英語学習に使えるカードができました!
第1回:「好みを聞いてみよう」はこちら
第2回:「味わいのを表現してみよう」はこちら
第3回:「カテゴリごとの表現(吟醸・純米・本醸造など)」はこちら
第4回「カテゴリごとの表現(生酛・山廃、熟成酒など)」はこちら
第5回「カテゴリごとの表現(生酒・にごり酒)」はこちら
第6回「よく聞かれる質問」はこちら
第7回「インバウンド対応」はこちら
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