2020.11
25
英語で日本酒を説明するための実用表現 (2) - お酒の味わいを表現してみよう
世界中で日本酒への関心が高まるにつれ、国内の酒販店や飲食店でも、海外から来たお客さんを相手にする機会が増えてきています。
このシリーズでは、私・木村咲貴が、アメリカ・サンフランシスコの酒販店「True Sake」の販売員として活動してきた経験をもとに、海外のお客さん相手に使える英会話をご紹介していきます。英語が苦手な人にとっては簡単で、英語が得意な人にとっては実用的なポイントがつかめる内容にしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
第2回は、お客さんにお酒について説明するときに欠かせない「味わい」の表現方法を学んでいきましょう。
海外の人に味を伝えるときのコツ
日本でお酒の味わいを説明するとき、こんな表現を使うことがあるかもしれません。
「このお酒には、ふっくらとしたお米の香りがあって、後味はすっきりとしています」
まず、「ふっくらとしたお米の香り」という言葉から思い浮かべるのは、お釜からもわもわと立ち上る白い湯気とともに広がる甘い香り……。私たち日本人がうっとりとしてしまうこちらの表現ですが、海外の人々にとってはピンとこない場合があります。
国によって食文化は異なるもの。相手にとって「お米」と言われて思い浮かべるのは、日本食レストランで食べる冷たい酢飯だったり、ピラフのような炒めものだったり、パラパラとした細長いインディカ米だったりするのです。お酒の味わいを説明するときは、お互いの文化の違いを理解し、相手が知っている言葉・想像できる言葉で説明をしてあげなければなりません。
では、ここで練習問題です。冒頭の表現の「すっきり」という言葉は英語でなんというでしょうか?「すっきり 英語」で検索した人もいるかもしれません。いろいろな単語が出てきましたよね。
ここで重要なのは、あなたにとっての「すっきり」がどんな味わいなのかということです。「軽快な、淡麗な」という意味なら「light」、「味わいの複雑性が少ない」という意味なら「clean」がよいでしょう。キレがよいという意味なら「crisp(本来は「食感がカリッとしている」という意味)」でしょうか。口の中をさっぱりさせてくれると言いたいなら「refreshing」になります。
冒頭の表現を、海外のお客さん向けにアレンジすると、例えばこんな感じになります。
This sake has a savory aroma like freshly baked bread with a clean finish.
(このお酒は、焼き立てのパンのようなふっくらとした香りと、すっきりした後味を持ち合わせています)
このような表現ができるようになるには、普段なんとなく日本語で共有できているニュアンスを、分解して、定義し直すことが必要です。味わいというのは、もともと、言葉を超えたもの。英語で味わいを表現するというのは、自分が感じたものをなるべく100%に近いかたちで相手に伝える方法を考える、という作業なのです。
ちょっと難しく聞こえてしまうかもしれませんが、うろたえずにいきましょう! ともかく大切なのは、相手に「そのお酒、おいしそう!」と思ってもらうことです。
味わいを表すための英単語:基礎編
ここで、味わいを表現するうえでよく使う単語を一度整理しておきましょう。
aroma:鼻で感じる香り。noseとも言う。
taste:舌で感じる味わい。palate(口蓋の意味)とも言う。
flavor:口の中から鼻に抜けて感知される感覚。香りと味わいの統合したもの。
finish:味わいの消え方。フィニッシュ。
aftertaste:口の中に残る味わい。後味。
texture:食感。mouthfeelとも言う。
また、味覚を表す英単語を覚えておくと、そのバランスを示すことでお酒の味わいを伝えることができます。
sweetness:甘み
saltiness:塩味
umami:旨味
acidity:酸味
bitterness:苦味
astringency:渋味
pungency:ピリッとする辛さ
これらを組み合わせるだけで、次のような表現ができます。
This sake has less sweetness, abundant acidity and a little bit of bitterness.
(これは甘さ控えめで、たっぷりとした酸と若干の苦味が感じられるお酒です)
味わいを表すための英単語:よく使うあの表現を英語で言うと?
次に、日本酒の味わいを表すためによく使われるあの言葉を英語にするとどうなるのか見てみましょう。
・辛口→dry
・甘口→sweet
・キレがある→crisp、sharp
・コクがある→full-bodied(ボディがしっかりしている)、rich
・余韻が長い→lingering
・淡麗→light、clean
・芳醇→mellow(果実の熟れたような)、savory(香ばしい)
・香り高い→aromatic、fragrant
でも、例えばお客さんから「I like sweet sake. (甘口のお酒が好き)」と言われたとしましょう。これだけでベストな1本をオススメするのは難しいですよね。甘いってどんな甘さ? フルーツのような甘さなのか、チョコレートのような甘さなのか、もっとほのかな甘みでよいのか……。
What kind of sweetness do you like? Do you prefer fruit, chocolate, caramel, honey or more subtle flavors?
(どんな甘みがお好みですか?フルーツのような甘みなのか、チョコレートやキャラメル、蜂蜜のような甘みなのか、それともよりほのかな甘みですか?)
日本語でよく使う表現をただ英語に置き換えるだけではやや抽象的になってしまい、何種類ものお酒の違いを説明するには不十分。あなたの目の前にある、おすすめのお酒が持つ個性を伝えるには、より具体的な表現が必要になってきます。
常套句にとらわれるのはNG。きちんと細かく分解してあげることで、その人が本当においしいと思うお酒を出してあげることができるのです。
香り、味わいを表す単語:海外の人に伝わる表現とは?
それでは具体的にどのような表現が「伝わる」のか、いくつかのパターンを見ていきましょう。繰り返しますが、大切なのは、相手が知っている言葉・想像できる言葉で説明すること。そして、「そのお酒、おいしそう!」と思ってもらうことです。
①フルーツにたとえる
・This sake has nuances like ripened fruits, such as mango or peach.
(このお酒には、マンゴーや桃のような熟したフルーツのようなニュアンスがあります)
・This sake has a little bitterness like citrus zest.
(このお酒は、柑橘の皮のような苦味を持ち合わせています)
②食材にたとえる
・It has a savory flavor like roasted nuts and a pungency like white peppers.
(焦がしたナッツのような香ばしい風味と、白胡椒のようなピリ辛感があります)
・When you warm it up, aromas like cocoa and caramel come up.
(温めると、ココアやキャラメルのような香りが引き立ちます)
③その他のものにたとえる
・The flavor of this sake is complex, with earthy and woody nuances.
(このお酒の味わいは複雑で、土や木のようなニュアンスがあります)
④テクスチャーを伝える
・You can enjoy a round texture on your palate.
(舌の上でまろやかな食感が楽しめます)
・It is a silky sake with a nice mouthfeel.
(まるでシルクのように口あたりのよいお酒です)
⑤お酒のキャラクターを伝える
・It is a bold sake with a strong umami flavor!
(これは旨味たっぷりの骨太なお酒です!)
・It has a boozy quality.
(アルコール感が強いと感じるかもしれません)
難しい! と思ってしまうかもしれませんが(True Sakeで働き始めたばかりのときの私がまさにそうでした)、そのお酒にどんな味わいが隠れているかを探りながら日本酒を飲むのはとても楽しいことです。
飲み仲間と「ブルーベリーみたいな味がする!」「ちょっとヨーグルトみたいな香りがしない?」など、どちらがよりおいしそうな表現できるかを競い合いながら、一本一本のお酒の味わいを掘り下げてみてはいかがでしょうか?
次回からは、「吟醸酒」「純米酒」などのカテゴリごとにお酒の製法や特徴を説明する英語を学んでいきましょう。お楽しみに!
接客や英語学習に使えるカードができました!
第1回:「好みを聞いてみよう」はこちら
第3回:「カテゴリごとの表現(吟醸・純米・本醸造など)」はこちら
第4回:「カテゴリごとの表現(生酛・山廃、熟成酒など)」はこちら
第5回「カテゴリごとの表現(生酒、にごり酒)」はこちら
第6回「よく聞かれる質問」はこちら
第7回「インバウンド対応」はこちら
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