2021.08
05
日本酒のラベルの読み方を解説!数字や専門用語の意味を理解しよう
コレクターもいるほど魅力的な日本酒のラベル。一方で、ときに裏表2枚にわたるラベルの内容をすみずみまで読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、皆さんが日本酒のラベルに書かれている内容を理解できるよう、各項目の意味を解説します。ラベルの意味を理解すると、それぞれの日本酒の風味を大まかにイメージできるようになり、日本酒選びがさらに面白くなるでしょう。
必ず記載されている事項
はじめに、法律によって記載が義務付けられている事項を見ていきます。 もしお手元に日本酒がある場合には、記事を読みながら実際のラベルと照らし合わせてみてください。 なお、必ず記載しなければいけない事項と併せて、記載してはいけない事項についても簡単にご紹介します。
「日本酒」
日本酒は、酒税法上「清酒」と表記され、ラベルには「日本酒」または「清酒」のどちらかの記載が必要です。
そもそも日本酒の定義は何かというと「原料の米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒のみが、『日本酒』を独占的に名乗ることができる」(国税庁「地理的表示『日本酒』の指定について」)とされています。
このなかの「清酒」については、酒税法では以下のように定められています。
米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの。
米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの。但し、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米の重量をこえないものに限る。
つまり、「清酒とは米、米麹および水を原料とした醸造酒で、こしたもの」と定義できます。(政令で定められたその他の原料は使用可能。なお、実際には「日本酒」と記載できる条件を満たしていても、「清酒」と表記されている場合もあります。)
そのため、こす工程がないどぶろく(濁酒)は「その他の醸造酒」に、果汁エキスなどの副原料を加えた場合は「リキュール」に、それぞれ分類されます。
アルコール度数
日本酒のアルコール度数は22%未満でなければなりません。 そのうえで、ラベルには前後1%まで幅を持たせて記載することが可能です。たとえば度数が15.6度の日本酒は「15度」「15度以上16度未満」「16度」と記載できます。 日本酒の原酒のアルコール度数は18〜20%ほどですが、通常は15~16%程度に加水調整され出荷されています。
「アルコール度数」について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
原材料名
原料を、使用量の多い順に記載(水は除く)します。例えば国産の米と米麹のみを使用した日本酒の場合、使用量の多い順に「原材料名:米(国産)、米麹(国産米)」と記載します。(国産)と(国産米)の表記は米トレーサビリティ法によって義務付けられているものですが、(◯◯県産)や写真のような(会津産)などといった、一般的に知られた地名であっても問題ありません。 また、原料米の品種名の記載は必須ではありませんが、奨励品種または産地品種銘柄に指定されている場合で、使用割合が50%を超えている場合にのみ表記が可能です。
一部の日本酒ではアルコール度数や香味を調整する目的で、「醸造アルコール」が使用されることもあります。醸造アルコールとは、サトウキビなどを原料とした糖蜜から作られた、アルコール純度の高い蒸留酒です。
また、さらに一部の日本酒では味わいを調整する目的で糖類や酸味料、アミノ酸が添加されることがあります。上記以外に、酵母や酵素剤など記載義務のない原料もあります。こうした主原料を除く原料がどのようなものなのかについては、以下の記事をご覧ください。
製造時期
西暦または和暦で製造年月を記載します。 製造時期と聞くと、実際にそのお酒が完成した時期を想像されるかもしれません。 実はそうではなく、製造時期は基本的に「瓶詰めされた時期」を指しており、特定名称酒(※)で瓶貯蔵の場合は、通常「出荷のためにラベルを貼り付けた日」を指しています。
※「特定名称酒」については、後ほどご説明します。
製造時期の記載に関する詳細は、こちらの記事でもご紹介しています。
記載してはいけない事項もある
ここまで記載必須の事項をご説明しましたが、逆に記載してはいけない事項もあります。 具体的には、「最高」や「第一」など製法や品質が業界内で最高水準であることを表すような表記や「官公庁御用達」などの表現は認められません。 ただし、自社商品内で品質が明確に優れている場合、その根拠を客観的に示せるのであれば「極上」「優良」などの表現に限って認められます。
必要に応じて記載される事項
ここからは、製造元である酒蔵が必要に応じて任意で記載できる事項をご説明します。
特定名称
特定名称とは「純米酒」「吟醸酒」「本醸造酒」などを指します。 これらは日本酒の基準を満たした上で、醸造アルコールの使用割合によって分類されたものです。「純米酒」など「純米」と表記されているのは、醸造アルコールを全く使用していないもので、醸造アルコールの添加量が白米重量比で10%以下のものは「吟醸酒」「本醸造酒」などと呼ばれます。
より細かい分類を示したものが、以下の表です。
精米歩合の数値が大きい(米をあまり削っていない)ものほど米の味わいが濃く感じられ、精米歩合の数値が小さい(米を多く削っている)ものほど軽くすっきりとした味わいになります。 また、「純米吟醸酒」や「純米大吟醸酒」のように吟醸造りという製法で造られた日本酒は、フルーツのような華やかな香りを特徴とするものが多いです。
「特定名称」について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
日本酒度・酸度・アミノ酸度
日本酒度や酸度、アミノ酸度はお酒の成分を示す数値で、日本酒の味わいをある程度想像することができます。
日本酒度は、日本酒の「比重」を示す指標で、一般的に甘さ・辛さの目安として使われています。水と同じ重さであれば「0」、それより重ければ値がマイナスになり、軽ければプラスになります。日本酒を造る過程では発酵により糖をアルコールに変えていきますが、糖は水よりも重く、アルコールは水よりも軽いという性質があります。そのため、糖が多ければ水よりも重く(日本酒度がマイナスに)なり、反対にアルコールが多ければ水よりも軽く(日本酒度がプラスに)なる、というわけです。
酸度は、日本酒に含まれる酸の量を示す指標です。酸度が高いほど酸味が強く、低ければ落ち着いた穏やかな味わいに感じるでしょう。
アミノ酸度は、日本酒に含まれるアミノ酸の量を示す指標です。「味の素」などの旨味調味料に含まれる「グルタミン酸」がアミノ酸の一種であるように、アミノ酸は旨味をもたらす成分です。(アミノ酸の種類によって、苦味や甘味を感じるものもあります。)そのため、アミノ酸度が高ければ旨味を強く感じるでしょう。
これらの指標がラベルに記載されている場合は、数値の高さや低さを見ることで実際の味の手がかりになります。
これらの数値の詳細はこちらの記事でもご紹介しています。
BY(酒造/醸造年度)
「BY」とは「Brewery Year」の略で、日本酒の酒造/醸造年度(すなわち日本酒が搾られた年度)を指します。年度というと4月1日から翌年3月31日を想像しますが、日本酒業界では7月1日から翌年6月30日までが一年度の区分とされています。 これまで、例えば平成30醸造年度であれば、30BYと和暦で表記されることが多かったのですが、令和1醸造年度以降(1BYなど)は平成のお酒と紛らわしくなってしまいます。そのため最近では、2019BYのように西暦で表記されることも増えてきました。
BY表示の詳細はこちらの記事でもご紹介しています。
その他
必要があれば記載してもよい事項には、前述したもののほか以下のような事項もあります。
・原酒:製成後に水を加えていないもの。アルコール度数が高く、濃い味わいであることが多いです。
・生酒:一切加熱処理をしていないもの。フレッシュな味わいが楽しめます。
・生詰 / 生貯蔵:生詰は、貯蔵時のみに火入れ(加熱処理)をしたもの。生貯蔵は、出荷時にのみ火入れをしたもの。二回火入れのお酒に比べて、生酒に近い味わいの特徴を持っています。
・生一本(きいっぽん):単一の醸造所で作られた純米酒。
・樽酒:木製の樽で貯蔵し、木の香りのついたもの。
・無ろ過:搾ったあとの精密濾過を行っていないもの。搾ったままの風味が強く残っています。
・酒母の種類:「山廃」「生酛」「菩提酛」など。酒母の種類により日本酒の味わいが異なります。
・酵母の種類:使用する種類により日本酒の香りや酸味の特徴などが異なります。
ほかにも杜氏の流派やもろみが完成するまでにかかった日数、麹の使用割合などが記載されることもあります。
まとめ
今回は、日本酒のラベルの読み方をご紹介しました。 ラベルに記載されている情報は必須事項と任意事項に分けられ、そこから得られる情報は多岐にわたります。 それぞれのラベルは、消費者に正確な情報を届けると同時にその日本酒の個性や魅力を伝える役割を果たしているのです。 「美味しい!」と思える日本酒に出会ったら、ぜひラベルにも目を向けてみてください。
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