2020.05

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日本酒造りにとって「良い米」って? - 酒米の特徴と格付けを学ぶ

田口 忠臣(都良(TORA))  |  日本酒を学ぶ

日本酒の質を決める大切な要素の1つが米です。酒造りに使われる米は、普段私たちが食べている米とは違った特徴を持っていて、おいしい日本酒を造るに適するような品種改良がされているのです。今回は、日本酒造りにとって良い米とはどんな特徴を持った米なのかその特徴や格付けの方法を解説します。

酒米(酒造好適米)と飯米

米(水稲)には、「うるち米」と「もち米」の2種類があります。このうち、日本酒造りには、(一部もち米を使った日本酒もありますが)主にうるち米が使われています。うるち米には、私たちが普段食べている飯米(はんまい)と日本酒を醸造する際に原料として使われる酒米(さかまい)とがあり、酒米として使われる米の品種は、日本酒造りに適した特徴を持っているため「酒造好適米」とも呼ばれます。

日本で栽培されている米は、農林水産省の「農産物規格規程」により定められていて、酒米は「醸造用玄米」に分類され、現在120以上の品種銘柄が登録されています。

参考:農林水産省「農産物規格規程

日本酒造りに求められる米の特徴とその理由

酒米には、日本酒造りに適した特徴が求められます。その特徴とは、大粒で砕けにくいこと、心白発現率が高いこと、低タンパク/低脂質であること、軟質米であることです。酒造好適米とはこれらの性質が高く、良いお酒が造りやすいように品種改良されたものです。

大粒で砕けにくい

酒米には千粒重が重いことが求められます。千粒重とは、米粒の整粒(欠け米や割れ米などを除いた粒の形や張りが完全な米)1,000粒の合計重量のことで、この値が大きいほど、粒形が大きく粒張りが良い米です。

酒米の精米歩合は高く、食用とされる米に比べると米の周りを多く削って使われます。その割合は、吟醸酒で60%以下、大吟醸では50%以下と「清酒の製法品質表示基準」により定められているため、酒米には50%以下の精米にも耐えられる粒の大きさが必要なのです。また、精米が進むほど米は熱を持って砕けやすくなります。米が砕けると、本来削り取りたかった外側の部分が残ることにつながるほか、粒の大きさや形が不揃いになってしまいます。そのため粒の大きさだけでなく砕けにくさも必要です。

参考:国税庁「清酒の製法品質表示基準

心白発現率が高い

米には、中心部に心白(しんぱく)と呼ばれる白く不透明な部分が現れることがあります。心白は、でんぷん質が詰まっておらず隙間があり、柔らかい部分。麹菌がこの隙間を通って中心部まで入っていく、いわゆる「破精込み」が起こりやすくなることから、心白が現れやすく、その部分が大きい米は酒造りに適していると言われています。

心白がどの程度の割合で現れるかを表したものが「心白発現率」で、酒造好適米として有名な「山田錦」の心白発現率は70%程度とするデータもあります。

参考:JA全農兵庫「山田錦80周年パンフレット

低タンパク

酒米に含まれるタンパク質が高いと吸水性が低下し、蒸米の消化性も悪くなる傾向にあります。また、酒米に含まれるタンパク質は味にも深く関係するため、タンパク質の含有率が高いと雑味が多い日本酒になりやすくなってしまいます。さらに色や香味も劣化しやすくなります。そのため、酒米にはタンパク含有率が低いことが求められます。

低脂質

酒米は、食用とされる米と比べるとタンパク質や脂質の含有量が非常に低いことも特徴です。酒米の場合には、さらにタンパク質や脂質が多く含まれている米の表面を削って使用されます。日本酒の吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りのうち、酢酸イソアミルというバナナやメロンのような香りのする成分を酵母が生産することを、米の脂肪分に由来する脂肪酸(その中でも不飽和脂肪酸)が妨げるのです。したがって、そもそも脂質が少ない米が日本酒造りには適しているのです。

軟質米

日本酒造りには軟質米が向いていると言われています。食用の米における硬質米、軟質米は水分量の多い少ないを表していますが、日本酒造りに求められている軟質米とは、吸水性が良い、破精込みがよい、酒母やもろみで溶けやすい、といった特徴を持った米のことです。

酒米の格付けと山田錦の「特A地区」

酒米の評価基準と等級の分類

食用とされる米は、一定量の玄米の中にきちんと形の整った米が含まれる割合(「整粒歩合」)によって一等米、二等米、三等米に格付けされます。

食用とされる米と同じように酒米も格付けがあり、整粒歩合が90%以上の米を特上、80%以上を特等、70%以上を一等、60%以上を二等、45%以上を三等と等級が分けられています。格付けには「被害粒等の割合」も定められています。被害粒等の割合とは、死米や着色粒、もみ、異物などの被害粒の割合で、等級ごとにそれぞれ上限値が決まっているのです。

整粒歩合(%)最低限度被害粒等の割合(%)最高限度
特上905
特等8010
一等7015
二等6020
三等4530

日本酒は、「清酒の製法品質表示基準」によって吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの「特定名称酒」と、それ以外の普通酒に分類されています。そして、この特定名称酒に使用される酒米は、三等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したものに限られているのです。

「等外」の扱い

三等の基準を満たさない米は「等外」に格付けされますが、等外の米を使うとどんなに丁寧に酒造りをしたとしても、「特定名称」を名乗ることができずに「普通酒」となります。酒造好適米は、生産の生産量が少ないうえ、非常に高値で取引されています。そのため、あえて等外米を契約農家から買い取り、安価で品質の高い「純米」の普通酒を造る酒蔵もあります

参考:国税庁「清酒の製法品質表示基準

山田錦の「特A地区」について

ここまでご紹介した格付けには登場していない、「特A」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。これは酒米の格付けとは異なり、山田錦を育てる特定の産地を指す言葉で、正確には「特A地区」というものです。

酒米の王様ともいわれる山田錦は昭和11(1936)年に、兵庫県立農事試験場で誕生しました。現在、産地は拡大して兵庫県以外でも栽培されていますが、今でも高品質なものは兵庫県産、なかでも「特A地区」のものが極上とされています。「特A地区」として位置づけられているのは、兵庫県の南東部に位置する播州地域の三木市(吉川町・口吉川町)や加東市(旧東条町・社町東部)などです。これらの地域は、夏の気温の日較差が大きく、酒米の栽培に必要な栄養素を含んだ豊かな土壌であることから、昔から酒米の良質な産地として知られていました。

播州地域では、明治の初期に灘の特定の蔵元と酒米を生産する集落が直接契約する「村米制度」が誕生しました。酒米は、食用の米に比べて栽培が難しく収量がかなり劣ります。したがって食用の米より価格が高くなければ、酒米を生産する農家がいなくなってしまいます。村米制度は、蔵元にとっては良質な米を安定的に入手できる。農家にとっては高値で安定して米を買ってくれると双方にメリットがある制度でした。

戦後、兵庫県の産地はA地区、B地区、C地区に分類され、特Aはさらに特A-a地区、特A-b地区、特A-c地区に区分されました。現在では、B地区、C地区では山田錦の栽培が行われなくなり、特A-c地区は対象となる集落が無くなっています。特A-a地区、特A-b地区で栽培される山田錦が酒米の最高峰と位置づけられ「特A地区」産と呼ばれています。

まとめ

今回は、日本酒造りにとって欠かすことができない「酒米」の特徴についてご紹介しました。現在、日本各地で120品種以上の酒米が栽培されています。酒米の王様と言われる山田錦は、日本酒好きな人ならだれでも聞いたことがあると思いますが、他にもたくさんの品種銘柄があり、近年では品種銘柄を表示した日本酒も増えてきました。また、最近ではあえて地元産の飯米を使った日本酒を使って、個性的で美味しいお酒を造る酒蔵も出てきています。日本酒を飲む時には、米の違いも意識して味わってみてはいかがでしょうか。

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