2022.02
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五百万石(ごひゃくまんごく)とは? 淡麗辛口ブームを牽引した酒米の系譜、特徴、産地、日本酒の味わいを解説
日本酒は酒米の種類や品質によって、造り手が表現しやすい味わいが異なります。酒米の「五百万石」でつくる日本酒は、いわゆる辛口のものが多いです。今回は日本酒の淡麗辛口ブームを牽引した酒米「五百万石」の特徴や系譜、産地について解説します。
淡麗辛口な日本酒をつくる「五百万石」とは
五百万石は米の名産地である新潟県で誕生しました。酒米の種類別生産量では2位を誇り、酒米の王様「山田錦」に次いで多く生産されている酒米です。
安定した酒質を実現し、寒冷地に適した品種
山田錦は「西の横綱」、五百万石は「東の横綱」と呼ばれ、どちらも安定した品質の日本酒をつくりやすいとされている人気の酒米です。酒米の種類別需要量では、山田錦と五百万石の2品種だけで約7割を占めています。
五百万石は小粒ながら心白(デンプン質が粗く集まった箇所)が大きい品種。山田錦と比べると硬く溶けにくい特徴がありますが、麹がつくりやすかったり吸水性が高く精米がしやすかったりと、酒米として有利な特性を備えています。日本酒の淡麗辛口ブームを牽引
五百万石でつくられる酒は、すっきりとキレのある淡麗の味わいが特徴です。1980年ごろに新潟酒を中心に起きた淡麗辛口ブームを牽引したのは、五百万石であるとも言われています。
それまで多くつくられていたのは、安価な「三増酒(さんぞうしゅ)」でした。三増酒とは第二次世界大戦の影響による原材料の不足をおぎなうために、日本酒にアルコールを添加してカサ増ししたものです。カサ増しによって味が薄くなるため糖類を追加する場合もあり、甘さがベタベタと口に残る味わいであったとされています。やがてその反動で、すっきりしたキレの良いお酒が求められるようになりました。淡麗辛口のイメージが強い五百万石ですが、福井県や兵庫県では、しっかりとした旨味のある日本酒やコクがある濃醇なタイプの日本酒もつくられています。
五百万石の系譜
五百万石は母を「菊水」に、父を「新200号」として交配され、新潟県農業試験場長岡本場で生まれた品種です。1957年になると奨励品種として認定され、新潟県の米生産量が五百万石(約75万トン)を達成した記念として「五百万石」と命名されました。五百万石の母である菊水は、1945年には一度姿を消した品種であることから「幻の酒米」と呼ばれる品種です。菊水は酒造適性に優れていて、名酒米「雄町」を親に持っています。菊水で造られた酒は、米の旨味がしっかりと感じられる優しい口当りが特徴です。
五百万石の産地
五百万石が誕生した新潟県が主な産地で、現在も五百万石がもっとも多く栽培されている県です。春から夏にかけての稲が育つ時期は良い天候が続き、豪雨や台風による被害も少ないため、安定した環境で育てられます。冬は日照時間が短くなり、降雪量の多い豪雪地帯ですが、豊富な雪解け水が利用できる点も酒米の栽培に適しています。参考:農林水産省「令和元年産酒造好適米の生産状況等」
まとめ
「東の横綱」とも呼ばれ、新潟の淡麗辛口ブームを支えた五百万石の特徴や系譜、生産地について解説しました。五百万石はすっきりとした淡麗な味わいの日本酒に使われることが多い品種ですが、地域によっては真逆の特徴を持つ酒づくりに使われる場合もあります。
「五百万石の日本酒」をと一括りにはできない幅のある味わいを、ぜひ飲み比べてみてくださいね。
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