
2024.05
14
SAKE Streetの特集「小容量化する日本酒」。前編では、日本酒のサイズとして一升瓶(1.8L)と四合瓶(720mL)が定着した背景や、300mLや180mLといった小容量規格の商品が増えている理由について解説しました。
後編となる本記事では、近年増加する小容量日本酒の新規ビジネスをご紹介。コンセプトやパッケージの異なる4社にお話をうかがいました。
インタビューに入る前に、2024年5月現在、日本国内にはどのような小容量日本酒ビジネスがあるのかを整理しましょう。小容量ブランドを一覧化してみると、コロナ禍が深刻化した2020年以降に増加したことがわかります。
| リリース年 | ブランド名 | 運営会社 | フォーマット | サイズ |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | ICHI-GO-CAN® | Agnavi | 缶 | 180mL |
| 2021年 | SAKEPOST | FARM8 | パウチ | 100mL |
| 2021年 | HITOMAKU | SakeBottlers | 缶 | 180mL |
| 2022年 | KURA ONE | id 10 japan | 缶 | 180mL |
| 2022年 | Sakeai Box | サケアイ | 瓶 | 200mL |
| 2022年 | SYULIP | カルモア | 瓶 | 180mL・300mL |
| 2022年 | きょうの日本酒 | きょうの日本酒 | 瓶 | 180mL |
| 2022年 | ぽち酒 | ミチ | パウチ | 180mL |
| 2024年 | PRIME SAKE | camo | 缶 | 180mL |
当時は、緊急事態宣言などの感染防止政策によって飲食店における酒類の提供禁止・提供時間の短縮が起こり、日本酒販売が苦境に立たされました。家飲み需要は高まりましたが、一升瓶や四合瓶は家庭用としては大きく、とはいえ酒蔵は缶や小瓶に充填する機材がないところがほとんど。こうしたニーズに応えるために、製造者に代わって小容量規格のパッケージに充填するブランドが次々出現したのです。
(なお、本特集では取り上げませんが、このころは一升瓶や四合瓶から酒販店の店頭で小瓶に入れ替える量り売り販売も広くおこなわれました。)
小容量日本酒のフォーマットはガラス瓶・缶・パウチに大別されます。ただサイズを小さくするだけではなく、小容量ならではの飲用シーンを想定し、プラスアルファのブランディングをすることが求められています。この表には掲載されていませんが、同時期に現れたものの既に撤退している事業も複数あり、小容量日本酒のビジネスにおける競争が激しくなっていることを物語っています。

2021年1月に一合サイズの日本酒缶ブランド「ICHI-GO-CAN®️」を立ち上げたAgnavi。3年が経った現在、取扱銘柄は約170にも及びます。全国の100を超える酒蔵と取引しており、世界唯一の総合容器メーカーである東洋製罐グループホールディングスのほか、三菱UFJキャピタル、JR東日本スタートアップ、金融機関などから累計2億円の資金調達をおこなっています。
「現在、ありがたいことに生産量は50万本ほどに伸び、欧州をはじめ約10カ国へ輸出もおこなっています」と話してくれたのは、創業者の玄成秀(げん・せいしゅう)さん。ここまで事業を成長させられた理由について、「ブランドの裏側で、サステナブルな日本酒のサプライチェーンのアップデートを行っているから」と説明します。
「蔵元様は、優先的に醸造設備へ投資をおこなうため、ボトリングやラベリングへの投資が難しいケースが多いです。弊社では、全国の酒蔵のお酒をタンクごと買い取っていますが、角型の1000リットルタンクで回収すると、缶にして約5500本分。積載効率が良く、瓶なら4パレット必要な分量を1パレットで運ぶことができます」
缶のメリットである紫外線カットの効果については、現在、東京農業大学と共同研究を実施しているそう。軽くて持ち運びがしやすいほか、酒瓶不足が問題視される昨今において、リサイクル効率の高さも魅力であると分析します。

そんなICHI-GO-CAN®️が目指すのは、“回遊層” の獲得。固定客ではなく、「旅先や日常の中で、お酒を飲みたい時にスーパーやコンビニに入ったら、目の前に缶入りの日本酒があって、『買ってみようかな』と思ってもらえるような流れを作りたい」と玄さんは話します。
「瓶ビールが一般的だった1980年代、日本におけるビールの市場は1兆円規模でした。現在は3.5兆円まで増えていますが、この差分の2.5兆円はまさに缶ビールの市場に該当します。つまり、缶というパッケージが新しいマーケットを作ったということ。日本酒でも同じことを起こしたいと考えています」
近年は、海外に向けた輸出事業も手掛けているAgnavi。玄さんは、「日本酒市場は輸出額が400億円まで伸びたという視点から議論されるケースが多いですが、フランスワインは1兆円以上輸出されている。日本酒がそこまで広まっていない理由を考える方が重要です」と指摘します。
「まだまだ日本酒が知られていない中では、ジャケ買いしたり、間違って買ったりする回遊層の獲得が必要です。海外では『ICHI-GO-CAN®️と書かれているものは美味しい』という認識から始まって、日本酒の入口を広げていけることを目指しています」