
2025.09
02
チーズには「ワインより日本酒」を定番に!知るほど美味しい日本酒×チーズの世界
ワインのおつまみとして定番のチーズ。実は日本酒ととても相性がいいのはご存知でしょうか。2022年におこなわれたフランス人ソムリエを対象にしたアンケートでは、回答したソムリエのうち、65%が「日本酒はチーズに合うと思う」と答えています。最近では日本酒のアテとしてチーズを提供する飲食店もじわじわと増えてきました。
白カビチーズや青カビチーズなど、世界中で造られているチーズは、見た目も味わいもバラエティ豊か。外国生まれの食品ですが、いくつも日本酒との共通点があり、特徴を知ればペアリングも楽しめます。
この記事では、日本酒×チーズの良さを伝えるため、SAKE DIPLOMA兼チーズプロフェッショナルで自らチーズクラブを開催している熊﨑百子が、なぜ日本酒とチーズの相性が良いのか、どんなチーズの種類があるのかを解説します。
記事の最後には、10月開催の日本酒×チーズのワークショップのお知らせを掲載しますので、興味のある方はチェックしてくださいね!
なぜ日本酒×チーズなのか
いまではすっかり日本酒とチーズのペアリングに魅了されている私ですが、もともとは日本酒は和食と、チーズはワインと合わせて楽しんでいました。特にチーズは、フランスやイタリアなど、ワイン生産国で造られているものが多く、産地を合わせるというペアリングの考え方にも則していて、実際に相性がいいと感じる組み合わせもたくさんあります。
そんな中で、せっかくなら好みの味わいの日本酒やチーズを自分で選べるようになりたいと、それぞれの資格の勉強を始めると、意外にも日本酒とチーズの共通点が多いことに気づきました。そしていくつかペアリングを試したところ美味しくてすっかりハマってしまいました。資格取得後は、チーズクラブを主催して、日本酒とチーズの組み合わせの素晴らしさを広めるために活動しています。
日本酒とチーズに共通しているのが、どちらにも旨味が多いという点です。日本酒にはお米のタンパク質由来の、チーズにはミルクに含まれるタンパク質由来の旨味成分が多く含まれています。
熟成させたときに、酸味が穏やかになり、旨味が増してくるというところも共通しています。実際に、酸を多く含むワインと合わせるとチーズの味がスッキリと感じられるのに対し、日本酒と組み合わせることでチーズの味がよくわかることを裏付ける研究結果もあります。
また、チーズにない甘味を日本酒が、日本酒にない塩味や脂肪分をチーズが補い、お互いを味わいの補完できるところも日本酒とチーズが合わせやすいポイントです。
共通点 | 相違点 |
---|---|
日本酒はお米由来の、チーズはミルク由来の旨みが豊富 | 日本酒にはチーズにない甘味がある |
熟成されることで酸味が穏やかになり、旨みが増してくる | チーズには日本酒にない塩味や脂肪分がある |
このような共通点や味わいの特徴が、日本酒とチーズを結びつけ、相乗効果でワイン以上に美味しく感じる組み合わせになるんです。
世界中で愛されているチーズ
そもそもチーズとは何でしょうか。日本での定義では、ミルクを固めて、水分の一部を取り除いたもののことを指します。
ヨーロッパのイメージが根強いチーズですが、実際は世界中で造られていて、大規模な工場で大量生産をしているアメリカが生産量世界1位を誇っています。また、一般的なチーズのほとんどは牛乳から造られますが、山羊乳や羊乳を使ったチーズもたくさんあります。珍しいものでは、ロバやラクダのミルクを使ったものも。国によって造り方にも違いがあり、世界に1000種類以上あると言われるほど多様な食材です。
もちろん日本生まれのチーズもあります。日本で最初に造られたと言われているのが「蘇(そ)」というチーズです。今から1000年以上前の飛鳥時代に生まれた蘇は、その製法は定かではありませんが、牛乳を煮詰めて固めたものであったと考えられています。2020年に新型コロナウイルス感染症の影響で学校給食で使われるはずの牛乳が大量に余ったことをきっかけに、蘇作りがブームになったこともありました。
今みなさんが食べているチーズが広く普及したのは昭和時代、森永乳業や雪印乳業などの大手乳業メーカーの前身企業がチーズの製造を開始してからです。第二次世界大戦後、アメリカの影響で食の洋風化が進んでいく中でチーズの消費も徐々に拡大し、1970年代のピザブームや1990年代のイタリアンブームなどを経て、消費量が大きく増えました。
現在は、大半を輸入に頼っている状態ですが、国内では、大手乳業以外にも、北海道を中心に中小のチーズ製造所や工房が増え、バラエティ豊かなチーズが造られています。品質も良く、世界的なチーズのコンクールで最優秀賞を受賞するチーズもあるほどです。
チーズの種類
チーズには大きく分けて「プロセスチーズ」 と 「ナチュラルチーズ」の2種類があります。
プロセスチーズ
日本人に最も馴染みがあるのが、スライスチーズや6Pチーズ、ベビーチーズなどのプロセスチーズだと思います。プロセスチーズは、ナチュラルチーズを一度溶かして、油分が分離しないように乳化剤を加えて冷やし固めたもの。
価格がお手頃で、賞味期限も長く、スーパーなどでも手軽に買えるのが魅力です。さまざまなフレーバーの商品があり、ナチュラルチーズの風味や食感を追求したものも造られていて、開発に力が入っているのがうかがえます。
ナチュラルチーズ
もうひとつがナチュラルチーズです。加熱加工されていないチーズで、プロセスチーズの原料になります。
しかし、ひと口にナチュラルチーズといっても、製法などによりいくつかのタイプ分けがされています。フレッシュタイプのクリームチーズやマスカルポーネは日本でもお菓子によく使われていますし、白カビタイプのカマンベールや青カビタイプのゴルゴンゾーラは食べたことがある人も多いのではないでしょうか。
チーズのタイプ
名前 | 特徴 | 例 |
---|---|---|
フレッシュタイプ | 熟成をさせないチーズ。ミルクの甘さを感じる優しい味わいとほどよい酸味。塩味は控えめ。水分が多く、長期保存には向かない。サラダやお菓子作りに使われることも。 | クリームチーズ/マスカルポーネ |
酵母タイプ | 酵母の働きで熟成させるチーズ。表皮には粉を吹き、独特のシワがある。若いとボソっとしているが、熟成が進むとトロトロに。特にフランスの山羊乳チーズに多い。 | ブルソー/クロタン・ド・シャヴィニョル |
白カビタイプ | 白カビの働きで熟成させるチーズ。濃厚でクリーミー。しっかりとした塩味と旨味があり、表皮付近には苦味も。熟成が進むとマッシュルームのような香りに。 | カマンベールチーズ/ブリチーズ |
ウォッシュタイプ | 塩水やお酒で表面を洗いながら熟成させるチーズ。独特の香ばしい香りがあり、オレンジ色でべたっとした表皮になる。香りに反して、マイルドな味わい。旨み、コクがある。 | マンステール/マロワール |
青カビタイプ | 青カビの働きで熟成させるチーズ。強い香りと青カビ特有のピリッとした風味がある。濃厚な味で塩味も強い。ハチミツやフルーツなどとあわせることも。 | ゴルゴンゾーラ/ロックフォール |
ハードタイプ | 圧搾して水分を抜き、長期間熟成させる硬いチーズ。熟成期間によって風味が大きく異なり、若いものは柔らかめでマイルド、熟成が進むと固く、旨みが強くなっていく。 | ゴーダ/チェダー |
タイプによって合わせやすい日本酒のタイプも異なってきます。初めは、似た味わいのもの同士を合わせたり、熟成度合いで合わせたりするのがおすすめです。
同じタイプのチーズでも産地や細かな製法で味わいに違いがあり、同じ名前のチーズでも、製造者や熟成具合の違いで異なる風味になるので、チーズマニア歴10年の私も新鮮な驚きで楽しんでいます。チーズの世界は奥が深いですよ!
チーズの保存方法
チーズには賞味期限が表示されています。この期限は、風味や美味しさの目安の期限で、期限を過ぎてしまっても食べられなくなるわけではありません。
しかし、水分の多いフレッシュチーズは痛みやすいため、開封後は賞味期限内でも早めに食べる必要があります。反対に、ハードチーズなどの水分が少ないチーズは、賞味期限を多少過ぎてしまっても大丈夫。ピリピリとした刺激や強い苦味、アンモニア臭がするものは食べられません。
ナチュラルチーズは、大きめにカットして販売されていることが多いので、一度に食べ切れなかった場合は適切に保存することで、美味しく食べられる期間を延ばすことができます。
基本的には、購入時の包装に近い方法で包み直せばOKです。紙に包まれていた場合は、捨てずに取っておいて、きれいに包み直しましょう。汚れてしまった場合は、市販のクッキングシートなどでも代用が可能です。数日内に食べ切る場合はラップも使えますが、中にはデリケートなチーズがあり、ムレたり、ラップの匂いをチーズが吸ってしまうことがあるので、要注意です。包んだチーズはタッパーに入れてあげると匂い漏れも少なくなります。
白カビタイプやウォッシュタイプなど、断面が柔らかく形が崩れてしまう場合は、アルミホイルを折りたたんで断面にあて、ストッパーにするのがおすすめです。青カビタイプは脆く、光に弱いため、アルミホイルで全体を包むのもおすすめです。チーズの塩気で水分が浮き出てきやすいので、キッチンペーパーで軽く拭いてあげると風味が良いまま長持ちします。
日本酒×チーズ ワークショップに参加してマイベストマリアージュを探そう!
日本の一般的なスーパーにあるナチュラルチーズは、種類も限られていますし、量も多め。試したことのないチーズとのペアリングは少しハードルが高いと感じるかもしれませんが、日本酒とチーズの特徴を押さえれば大丈夫です!
今回開催する日本酒とチーズを組み合わせて飲めるワークショップでは、チーズの製法や味わいの違いを解説しながら、日本酒とのペアリングを考えていきます。少しマニアックな内容ですが、チーズも美味しくて手に入れやすい種類をご用意しますので、気に入った組み合わせをご自宅で再現していただけます。SAKE Streetで扱うバラエティ豊かなお酒とのペアリングを体験し、お気に入りの日本酒に合うチーズを探しにきてください!
チケット購入リンク
参考資料
- 藤田晃子, 富原健一, 久常有里, 濱田由紀雄, 藤井力「食品と酒の組合せにおける酒類の有機酸が食品の旨味に及ぼす影響」(日本醸造協会誌, 114巻8号, 2019)
- 川本美希「フランスにおける日本酒の認知度と普及の可能性」(Journal of Sakeology, vol.1, 2022)
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