2021.03
24
英語で日本酒を説明するための実用表現 (3) - 吟醸・純米・本醸造などを説明しよう
世界中で日本酒への関心が高まるにつれ、国内の酒販店や飲食店でも、海外から来たお客さんを相手にする機会が増えてきています。
このシリーズでは、私・木村咲貴が、アメリカ・サンフランシスコの酒販店「True Sake」の販売員として活動してきた経験をもとに、海外のお客さん相手に使える英会話をご紹介していきます。 英語が苦手な人にとっては簡単で、英語が得意な人にとっては実用的なポイントがつかめる内容にしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
第3回からは、日本酒のカテゴリごとにお酒の製法や特徴を説明する英語を学んでいきましょう。今回は精米歩合と醸造アルコール添加を入口に、「吟醸」「純米」「本醸造」などのキーワードを解説していきます。
「吟醸酒」「純米酒」を英語で説明すると?
「吟醸酒」や「純米酒」という用語を説明するときにキーワードとなるのが、「精米歩合」。英語では、rice polishing ratioなどと訳されます。この言葉の意味を理解してもらうためには、まず、日本酒造りの工程で、お米を磨く「精米」というステップがあることを説明しなければなりません。
・The surface of rice contains a lot of nutrients (such as protein and fat).
(お米の表層部分には(たんぱく質や脂質などの)栄養素がたくさん含まれています)
・In the sake brewing process, it is necessary to polish off the surface of the rice because these elements can cause an unpleasant taste.
(酒造りにおいては、これらが雑味になってしまうため、お米の表面を削る作業が必要になります)
さらに、これらのカテゴリを解説する中で欠かせないのが、醸造アルコール添加の有無です。
Originally, the term "Junmai" means that no distilled alcohol has been added.
(もともと、「純米」という言葉は、醸造アルコールを添加していないことを意味します)
このとき、英語では、醸造アルコール無添加という意味の「純米」も、低精米を意味する「純米酒」も、同様にJunmaiと呼ばれることを頭の隅に置いておきましょう。
精米歩合と醸造アルコールの有無。この2点を踏まえて、各カテゴリを下記のように説明してみましょう。
・Junmai Daiginjo is a type of sake with 50% or less rice remaining (over 50% polished) and no distilled alcohol added.
(純米大吟醸は、精米歩合50%以下(50%以上磨いている)の、醸造アルコールを添加していないお酒です)
・Honjozo is a type of sake with 70% or lessrice remaining (over 30% polished) with distilled alcohol added.
(本醸造は、精米歩合61から70%(30%以上磨いている)の、醸造アルコールを添加したお酒です)
太字の部分を下表のように変えることで、例文以外のカテゴリを説明することも可能です。
[A] is a type of sake with [B] rice remaining (over [C] polished) [D] distilled alcohol added.
A(カテゴリ名) | B(精米歩合) | C(精白率) | D(醸造アルコール) |
---|---|---|---|
Junmai Daiginjo | 50% or less | 50% | and no |
Daiginjo | 50% or less | 50% | with |
Junmai Ginjo | 60% or less | 40% | and no |
Ginjo | 60% or less | 40% | with |
Junmai | (more than 60%) | - | and no |
Honjozo | 70% or less | 30% | with |
「アル添」「大吟醸」につきまとう誤解を英語で解いてみよう!
このように説明すると、海外のお客さんからよく聞かれるのが、「なぜ醸造アルコールを添加するの?」という質問。添加物によくないイメージを持っている人は多く、「体に悪いのでは?」「悪酔いしてしまいそう」という誤解を与えかねません。 そんな時のためにも、醸造アルコールを添加する理由を英語で説明できるように準備しておきましょう。
・Breweries add distilled alcohol because it makes the quality more stable and less deteriorated.
(醸造アルコールを添加するのは、酒質が安定し、劣化しにくくなるというメリットがあるからです)
・If they add distilled alcohol to Ginjo sake, it improves the aroma.
(吟醸酒にアルコールを添加すると、香りが良くなるという効果があります)
・They can add only less than 10% distilled alcohol by weight of the rice.
(吟醸酒や本醸造酒に使用できる醸造アルコールの量は、お米の重量の10%以下と定められています)
また、「大吟醸」という言葉は海外でも有名で、価格設定が高くなりやすいことから、「大吟醸こそが最もよいお酒」という誤解が生まれがちです。そうしたイメージを払拭するためには、下記のような説明が役立ちます。
・Daiginjo is costly because it requires a larger amount of rice as it is polished a lot.
(大吟醸は、お米をたくさん削る分、たくさんのお米が必要になるのでコストがかかります)
・High price does not mean the “best." Your palate will judge the best sake for you.
(値段が高いからと言って、「最もよい」というわけではありません。最もよいお酒は、あなたの舌が決めるんですよ)
高精米・低精米の味・香りの特徴を説明してみよう
続いて、これらのカテゴリのお酒の味・香りを説明してみましょう。もちろん日本酒の味わいは多種多様で、「大吟醸/本醸造はこういう味わいになる」と一概に言うことはできませんが、「よく使う」表現を覚えておくと便利です。
・This sake is clean and less complex because it is made from highly polished rice.
(このお酒は、お米をたくさん磨いているので、雑味が少なくクリーンな味わいをしています)
・Sake with “Ginjo” is usually fruity and fragrant.
(「吟醸」とつくお酒には、フルーティで香り高いものが多いです)
・This sake has a rich flavor because the rice is less polished.
(このお酒は、お米をあまり磨いていないので、リッチな旨味があります)
そのほか、高精米のお酒、低精米のお酒の説明で使えるキーワードの一例をご紹介しましょう。
高精米のお酒
・フルーティ → fruity
・香り高い → aromatic, fragrant
・上品 → elegant
・なめらか → smooth
・繊細な → delicate
低精米のお酒
・コクがある→rich
・フルボディ→full-body
・芳醇な→savory
・お米の味が濃い→ricey
・まろやかな→round
おすすめの飲み方を提案してみよう
味や香りだけでなく、おすすめの飲み方を表現するフレーズをセットで覚えておくと、そのお酒の魅力をさらに深く伝えることができます。
・As it has a strong aroma, I recommend drinking it in a wine glass.
(香り高いお酒なので、ワイングラスで飲むのがおすすめです)
・Chill in a refrigerator before drinking.
(冷蔵庫でよく冷やして召し上がってください)
・It goes well with appetizers, fruits, and carpaccio.
(前菜やフルーツ、カルパッチョと相性がよいですよ)
・It is better at room temperature than cold.
(冷酒よりも、常温の方がおすすめです)
・This sake tastes even better when it is warmed.
(このお酒は温めて飲むとさらにおいしくなります)
・You can pair this sake with rich flavored dishes and meats.
(味の濃い料理や肉料理とも合わせられます)
これらは高精米・低精米のお酒によく使われる王道の表現ですが、より詳しい説明をしたいときのために、ちょっとレベルアップした表現もご紹介しましょう。
・This sake can lose the balance of its aroma when warmed.
(このお酒は、温めるとせっかくの香りがバランスを崩してしまうことがあります)
・Daiginjo is generally drunk cold, but this sake tastes great warm, too.
(一般的に大吟醸は冷やして飲むことが多いですが、このお酒は温めてもおいしいですよ)
・This sake works well with different foods at different temperatures.
(このお酒は、温度によって相性のよい料理が異なります)
・This is the perfect gift because it has a nice box and a fragrant aroma enjoyed in a wine glass.
(箱付きですし、ワイングラスで楽しめる華やかな香りもあって、ギフトにぴったりです)
英語トリビア:「ジュンマイダイジンジョー」ってなに?
日本酒に興味・関心を持っている海外の人々のほとんどは、「大吟醸」「吟醸」という言葉を一度は聞いたことがあるものです。ところが、厄介なのがその発音。「Ginjo」という字面が生姜を意味する「Ginger」に似ているからなのか、「ジンジョー」と読んでしまう人がたくさんいるのです。または、GとJがあべこべになってしまい、「ジンゴー」と読んでしまうケースも。
「ジュンマイダイジンジョーはある?」と訊かれたら、タイミングを見計らって、「That's pronounced "daiginjo".(だいぎんじょうと読むんだよ)」と優しく訂正してあげてください。
また、これらのカテゴリ名を固有の商品名だと勘違いしてしまっているケースも少なくありません。「レストランで飲んだJunmai Daiginjoっていうお酒がおいしかった!」というようなことを言われたら、「Junmai Daiginjo is not the name of a product, but a word that describes a type of sake.(純米大吟醸は商品名ではなく、日本酒の種類を表す言葉なんですよ)」と教えてあげてもよいでしょう。
ただ、あまり正しい知識を伝えることに躍起になってしまうと、英文を考えるのも大変ですし、お客さんの日本酒への関心が削がれてしまうかもしれません。まずは楽しく心地よい会話をすること。それができてから、お客さんがどこか別の場所で気まずい思いをすることがないように、「実はね……」と伝えてみるのがおすすめです。
Don't worry about it! Everyone gets it wrong all the time.
(気にしないで! みんなよく間違えるんですよ)
次回は、「生酛・山廃」「熟成酒」を説明する英語を学んでいきます。お楽しみに!
接客や英語学習に使えるカードができました!
第1回:「好みを聞いてみよう」はこちら
第2回:「味わいを表現してみよう」はこちら
第4回:「カテゴリごとの表現(生酛・山廃、熟成酒など)」はこちら
第5回「カテゴリごとの表現(生酒、にごり酒)」はこちら
第6回「よく聞かれる質問」はこちら
第7回「インバウンド対応」はこちら
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