2020.03

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日本酒と酒粕の"良いとこどり"! - どぶろくの健康効果を学ぶ

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

「どぶろく」と聞くと、戦国時代のドラマなどで武将が飲んでいる白いどろどろとしたお酒をイメージしませんか?いかにも美味しそうにぐびぐびと飲み干すシーン、お酒好きの人が見ると「おお、旨そう!」と思わず喉を鳴らしてしまいます。

稲作と起源を同じくすると言われているどぶろくは、庶民が愛飲するお酒であると同時に、五穀豊穣を祈願する神事で神さまに捧げる神聖なるお酒でもありました。そのどぶろくへの注目が近年、高まっているようです。一体どうしてなのでしょう。

今回はその疑問を解明すべく、このどぶろくについて、その定義、製造方法、栄養成分とそれがもたらす健康効果などについて、清酒との違いも含めて紹介します。

どぶろくの定義

どぶろくは、漢字で「濁酒」とも書くことからもわかるように、にごり酒の一種としてとらえられています。確かに一見、どちらも白くてどろどろとしていて、同じ種類のお酒のように見えますが、実はどぶろくとにごり酒とでは定義に違いがあるのです。

では、どぶろくはどのように定義されているのでしょう。小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』では、どぶろくについて、「日本酒と同じく米麹、蒸し米および水で仕込むが、発酵してできたもろみを濾過することなくそのまま飲む。 米粒や麹、酵母がそのまま入っており、甘酸っぱい味で、腹もちもよく庶民の酒として愛飲され…」と定義しています。

対して、にごり酒については、「市場で「にごり酒」とか「白酒(しろき)(白貴)」などという名で販売されているものは、もろみを目の粗い袋で濾過したもので、滓(おり)の混じったままの濁っている酒である。 酒税法上は、原料は米と麹であり、濾過しているので、濁ってはいるが清酒に属する。」と定義しています。

同じ「日本の伝統的な製法で米を発酵させてつくる醸造酒」(講談社『飲み物がわかる辞典』より)であるお酒でも、にごり酒を含めて清酒と呼ばれるお酒は、もろみを濾す「搾り」という工程を経てできる「澄んだ酒」のことを言うわけです。

一方どぶろくは、米と水に米麹を入れて発酵させてつくる日本古来のお酒ではあっても、「搾り」の工程を経ずにつくるために清酒には入らない酒だということですね。そして 濾していないからこそ、どぶろくには清酒には含まれない多くの成分が含まれている のです。

どぶろくに含まれる健康成分と効果

日本酒づくりの「搾り」とは、水と米、米麹が発酵してできたもろみを濾す工程のことです。それによってもろみは、液体の清酒と固形物の酒粕に分けられます。ということは、どぶろくは酒粕が酒にとけこんだ状態のもの、つまりどぶろくのあのどろどろとした濁り成分は酒粕であり、どぶろくを飲めば酒粕と清酒、両方の成分が摂取できる ということなのです。

そうと分かったら早速、酒粕と清酒の栄養成分をチェックしてみましょう。

酒粕の成分と健康効果

日本食品標準成分表によると、酒粕には、水分(51.1g)、蛋白質(14.9g)、炭水化物(23.8g)、脂質(1.5g)、ナトリウムやカリウムなどの灰分(0.5g)のほかに、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などのビタミンB群が豊富に含まれています。 このほかにも食物繊維、ペプチド、アミノ酸、アデノシン、オリゴ糖などのさまざまな成分が含まれています。これらの、酒粕に含まれている成分にはどのような効能が期待できるのでしょうか。

レジスタントプロテイン

レジスタントプロテインとは、人の消化酵素で消化されにくいたんぱく質のことです。酒粕にはこのレジスタントプロテインが豊富に含まれています。

このレジスタントプロテインは、油吸着効果によって食事で摂取した油分を包み込んで体外へ排出したり、コレステロールを吸着し体外へ排出する働きがあるため、肥満防止とコレステロール値の低下に役立つ 成分であると考えられています。 また 難消化性たんぱく質ということで、酒粕中に含まれる食物繊維とともに、便通を良くする効果 も期待できます。

ペプチド

ペプチドとは、アミノ酸がいくつかつながった状態のものですが、今、大手の酒造会社が精力的に研究を進めている注目の成分です。

このペプチドには、以下のような働きがあると考えられています。 * 高い抗酸化力 を持っているために、肝臓に集まってきた活性酸素を除去して肝臓を保護する * 血管を拡張させる働きがあるため、血圧を降下させたり冷え性を解消する効果 が期待できる * アレルギーを引き起こすカテプシンBの働きを抑制する

ビタミンB群

ビタミンB群には、エネルギー代謝を促進 する働きがあります。

ビタミンB6はたんぱく質の代謝に関与していて、美しい肌や体づくりに欠かせないビタミンだと言われています。ビタミンB1は、糖質の代謝に関与しているために、疲労回復に効果が期待できるビタミンです。ビタミンB2は、脂質の代謝に関与していて、ダイエット中は積極的に摂取したいビタミンです。パントテン酸は、コエンザイムAの構成成分で、エネルギー代謝において中心的な役割を担います。さらに、ビタミンB1とB6の働きをサポートするナイアシン、赤血球の生成を助ける葉酸も豊富に含まれています。

そのほかにも、酒粕に含まれているα-ハイドロオキシ酸がガン細胞の増殖を抑制すると考えられています。しかも酒粕には、リンパ球の一種でガン細胞だけを殺すナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させる働きがあるとされているため、酒粕を食べることでガンになりにくい体質をつくる可能性も期待できます。

また、酒粕には、骨の分解を促進するカテプシンLの働きを阻害する物質も含まれているために骨粗しょう症を予防したり、悪玉コレステロールの増殖を防ぐ働きがあると言われています。

清酒にも含まれる成分と健康効果

これまで見てきた酒粕に含まれる成分に加え、どぶろくでは一般の清酒にも含まれる成分を摂取し、その効果の恩恵を受けることができます。それらの成分と効果をチェックしてみましょう。

α-EG

日本酒造りにおいて米麹の働きによってもろみの中に生成されるα-EG(α-エチル-D-グルコシド)という成分は、大関総合研究所の報告によると「一般的な清酒中に1%(w/v)以下の濃度で含有されて」います。

この成分の効果は、美肌づくり。どぶろくや清酒の飲用には、肌の細胞増殖を促進したりコラーゲンの生成を促進する効果がある ことが認められています。さらに大関総合研究所は、肌に直接塗ることで保湿効果もあることが明らかになったと報告しています。

フェルラ酸

このフェルラ酸も、日本酒造りにおいて米麹の働きによって生成される成分です。このフェルラ酸はポリフェノールの一種で、活性酸素を減少させたりストレスを緩和させたりする 働きが期待されています。

必須アミノ酸

人間の体づくりに欠かせない9種類全ての必須アミノ酸も、日本酒づくりにおいて、麹によって米のたんぱく質から生成されます。必須アミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジンで、どれも人や動物の体内でつくりだされることのないアミノ酸であるため、食事などで摂取しなければなりません。

そういう意味でも、どぶろくや清酒は人間の体づくりに効果を発揮すると言えます。

アデノシン

清酒には他のアルコール飲料に比べてアデノシンという成分が特に多く含まれています。この成分 は血管を拡張させる働き があるため、血液の流れをよくして肩こりや頭痛、冷え性の解消が期待できます。

まとめ

健康と美容に効果を発揮するパワーがぎゅっと詰められている酒粕。どぶろくは、この酒粕が濁り成分として融けこんでいるお酒です。つまり、日本酒と酒粕の”良いとこどり”だということですね。健康志向が高まる昨今、どぶろくが人気を集めるようになった理由がよくわかります。

澄んで美しい清酒もいいですが、たまにはどぶろくも飲んでみると、さらに健康と美容に役立ってくれそうです。(どぶろくには、もちろんアルコールも含まれていますので、おいしく適量を!)