名工の技を「守るために、変える」。36年ぶり杜氏交代の200年日本酒蔵が「二段酵母仕込み」を武器に生み出す新・代表作

2026.01

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名工の技を「守るために、変える」。36年ぶり杜氏交代の200年日本酒蔵が「二段酵母仕込み」を武器に生み出す新・代表作

卜部 奏音  |  SAKE Street Pioneers

Sponsored by 妙髙酒造株式会社

「越後富士」とも呼ばれる端麗な山容を持ち、日本百名山の1つでもある妙高山。空気の澄んだ冬、青空を背景に真っ白な雪に覆われて立つその姿は、息をのむほどの美しさです。

その名峰の名を冠し、新潟を代表する銘柄の1つである「妙髙山」と創業200年余年の歴史を持つのが、新潟県妙高市にある妙髙酒造です。

2025年、妙髙酒造では「にいがたの名工」にも選ばれた名杜氏・平田正行(ひらたまさゆき)さんから若手杜氏・長田一郎(おさだいちろう)さんへ36年ぶりに杜氏が継承されました。そして、長田新杜氏による初の造りとなるこの冬、次の100年に向けた新ブランド「妙髙山 UCHOTEN」がリリースされます。

「変わらなければ、守れない。そして、次の100年はない。」

変革への強い決意のもと、伝統の「二段酵母仕込み」の製法を継承しつつ、代表銘柄「妙髙山」の系譜に連なるハイエンドブランド「妙髙山 UCHOTEN」を立ち上げた妙髙酒造。なぜ、伝統を守りながらも、新たな挑戦に踏み出したのか。新杜氏の長田さんと、ともに新ブランドの立ち上げを担当した集治隆太郎(しゅうじりゅうたろう)さんに、200年の伝統を次につなげる挑戦の背景を聞きました。

クラウドファンディング挑戦中:【頂の、その先へ】200年蔵の「妙髙山 UCHOTEN」誕生プロジェクト

世代を超えて受け継がれる蔵のアイデンティティ、「二段酵母仕込み」とは

名杜氏が開発した独自手法が唯一無二の香りを生み出す

今や銘酒として県内外に知られる「妙髙山」。その技術の基礎を築いてきたのが、1977年に入社した平田前杜氏でした。大手銀行から蔵人に転身、という異色の経歴をもつ平田さんは、38歳と当時では異例の若さで杜氏に就任。「にいがたの名工」「酒造マイスター」を併せ持つ新潟県初の杜氏として、全国から評価される職人です。

平田さんが開発した「二段酵母仕込み」は、妙髙酒造のアイデンティティとも言える製法です。これは酒母造りの段階で、性質の異なる2種類の酵母を時間差で投入する独自の手法で、単一酵母では出せない奥深い旨味華やかな香りなど複雑なレイヤーを生み出すことができます。

平田さんが杜氏に就任して以来36年間、鑑評会用の出品酒だけでなく市販酒でも膨大な試行回数を重ね、この技術を磨き上げてきました。その成果として、全国新酒鑑評会で通算13回の金賞受賞をはじめ、さまざまなコンテストで数多くの入賞歴を築いています。

二段酵母仕込みには、技術的な困難さがつきまといます。通常は1種類のところ2種類の酵母を使用するため、酵母同士の生存競争や発酵バランスの管理が難しく、そのコントロールはまさに職人芸の世界。

平田さんから技術を受け継いだ長田さんは、その難しさをこう語ります。

「それぞれの酵母の特徴をしっかり把握して、2つをどう融合させるかを考えなければなりません。さらに、酵母同士の相性もあるので、ばっちりハマるものもあればそうでないものもあります。毎回試行錯誤の連続ですが、そこに酒造りのおもしろさがあると感じています」

36年ぶりの杜氏交代。新杜氏が「親方」から受け継いだもの

1980年生まれの長田さんは、異業種での経験を経て2009年に妙髙酒造の季節社員として入社。その後、正社員として蔵に腰を据え、2024年からは副杜氏を務めてきました。今、杜氏になって初めての仕込みのシーズンを迎えています。

長田さんが「親方」と呼び尊敬する平田さんから、杜氏という役割を引き継いだのは2025年4月。平田さんが長年の杜氏人生に一つの区切りをつけ、次の世代を担う存在として長田さんを指名したのです。実に36年ぶりの杜氏交代でした。初めて杜氏を打診されたとき、「正直、自分には荷が重い」と感じたという長田さん。

「親方が、新潟で非常に有名な杜氏だったというのが一番の理由です。同業者の集まりでもその評判を耳にしていたので、もともと季節社員だった自分が杜氏を打診されたときは戸惑いました。ただ、親方が自分を指名したということは、きっと評価してくださってのこと。そう思い考え抜いた末に引き受けました。

酒造りでは毎日同じ作業をしているようでも、相手は生き物ですからなかなか上手くいかないこともあります。いざ自分が杜氏の立場になると、とっさの判断が難しい場面が多く、臨機応変に対応していた親方のすごさを改めて感じます」

長田さんが常に意識する平田さんの教えは、「麹や醪(もろみ)の状態を毎日、自分の目でしっかり観察すること」。自然環境によって変化する発酵の状態を見極めながら、よりよい酒を目指そうという熱い想いがひしひしと伝わってきます。

蔵と市場の変化のなかで──生き残りをかけた挑戦が動き出す

酒にも人にも真っすぐな新杜氏の「和醸良酒」スタイル

酒造りの責任者であると同時に蔵人のトップでもある長田さんが大切にしているのが、「和醸良酒」の考え方です。これは日本酒造りの世界で受け継がれてきた考え方で、造り手たちの人の和により、良い酒が醸される、というものです。

麹造りや酒母造り、醪の仕込み、搾りと並行して作業が続く日本酒造りにはチームワークが不可欠。そのために長田さんは、「蔵人が楽しく仕事ができる環境づくり」を第一に意識していると言います。

機械のトラブルで大変な仕事が続いたあとは蔵人皆で飲みに行く場を設けるなど、仕事外でのコミュニケーションも「ちょっとしたことですが、それで『また頑張ろう』と思ってもらえるように」と大切にしています。

長年、平田さんのもとで共に働いてきた蔵人たちへの信頼は厚く、彼らの意見も取り入れながら酒造りを進めているという長田さん。

「自分の意見も入れつつ、私より長く勤めてきた方もいるので、その経験も尊重しながらやっていくのが理想です。一方で、『この人についていきたい』と私が親方に感じたように、トップの頑張りを見て人はついていくものだと思うので、自分が先頭に立つ姿を見せることも大切にしています」

そんな長田さんの姿勢は、ともに新ブランド「妙髙山 UCHOTEN」の立ち上げを手掛ける集治さんにも伝わっています。

「先日酒蔵にお連れしたお客様が帰り際に、『長田さんの、よそ行きのことを言わないスタンスが信頼できる』と仰っていただいたんです。自分の想いに誠実にお話されるので、無理なことは無理と言ってくれます。だからこそ、長田さんなら最後には必ず良いものを造ってくれると信頼しています」

名杜氏の跡を継ぐという大きなプレッシャーを抱えながらも、酒造りにも人にも誠実に接し信頼を積み重ねた長田新杜氏のもとで今、「妙髙山」の新ブランドが動き始めています。

時代とともに、積み上げてきた価値を磨く。変わることで守る未来

従来から日本の酒造りに興味があり、2025年から妙髙酒造で商品企画やブランディングを担当するようになった集治さんは、新ブランド立ち上げの狙いを「蔵の未来につなげるため」と話します。

「日本酒業界全体で見ると、人口減少により国内の市場は縮小しています。一方、高単価なお酒のシェアが高まるなかで、蔵が生き残るには高付加価値の商品を作っていくことが必要です。

プレミアムラインとなる新ブランドは、単に名前やパッケージデザインを変えるだけでなく、蔵が積み上げてきた「資産」や、それに紐づくコアなストーリーとしっかり繋がったブランドにすることで、既存商品と互いの価値を高め合える関係性を作ることを目指しました」

その「資産」とは、妙髙酒造が守り続けてきた代表銘柄「妙髙山」でした。歴史あるこの名前を残しつつ、時代に沿うように磨き、発信することが新ブランドのテーマとなりました。そのために必要となったのが、「妙髙山」の価値の再定義です。

次の100年を背負う代表作、誕生間近。

頂のさらに上へ。新銘柄「妙髙山 UCHOTEN」に込めた想い

銘柄名の元となった妙高山は上越地方を象徴する風景とも言える山で、「日本百名山」にも選定されています。その価値を見つめ直すなかでの気付きを、集治さんは次のように話します。

「百名山を選定した深田久弥さんは『百の頂に百の喜びあり』という言葉を残しています。ここから着想を得て、人それぞれの山の登り方があるように、お酒にもそれぞれの楽しみ方があることを新ブランドで表現したいと考えました」

こうして足元を見つめなおした結果、新ブランドのデザインには「山」の字が等高線のように重なり、妙高山の頂へと向かう視線が盛り上がる様子を表しました。

そして、味わいや製造のこだわり、蔵人たちのチームワークといった「妙髙山」の価値を最大限に表現したのが、この冬新たに登場するプレミアムライン「妙髙山 UCHOTEN」 です。妙高山の別名「須弥山(しゅみせん)」はサンスクリット語に由来し、世界の中心にそびえる山を意味します。そして、その最上層が「有頂天」と呼ばれる世界。「妙髙山」の頂のさらに先を目指した酒、それが「妙髙山 UCHOTEN」なのです。

第一弾となる「妙髙山 UCHOTEN 純米大吟醸 越淡麗 生原酒」は、新潟県産の酵母と、蔵人が栽培する新潟発の酒米「越淡麗」を使い、地域性を表現。越淡麗らしいふくよかな旨味に加え、妙髙酒造でこれまで表現してきた味わいとは異なる、生原酒ならではのフレッシュさが両立する味わいを目指しています。

「妙髙山」を越える、というUCHOTENのコンセプトは「プレッシャーもプレッシャーです」と長田さんは苦笑い。新しい味わいを表現するため、平田さんとは違う麹の造り方を試すなど試行錯誤を重ねています。それでも、造りの過程を話す姿はどこか楽しそうです。

「毎日が勉強で、『妙高山』から振り落とされないようにしがみついてなんとかやっています。頂からの景色を信じて、今はがむしゃらに登りきることが目標です。ひとつ嬉しかったのが、仕込みの最中に親方がぼそっと『あれは良い酒になるぞ』と言ってくれたこと。品よく飲みやすい、造り手として1番良いと思うものができそうに感じているので、お客様の意見を聞くのが楽しみです」

「妙髙山 UCHOTEN」の最初のタンクは、まもなく上槽を迎えます。

クラウドファンディング挑戦中:【頂の、その先へ】200年蔵の「妙髙山 UCHOTEN」誕生プロジェクト

立ち会ってほしいのは、歴史的転換点

長田さんを中心に、蔵人が一丸となり辿り着いた「妙髙山 UCHOTEN」のリリースにあたって、妙髙酒造では先行販売ではなくあえてクラウドファンディングという形をとりました。その理由は、妙髙酒造の課題でもあった「新しい飲み手の獲得」にあったと集治さんは言います。

「自分たちの力だけで新しい層に届けるのは難しいと感じていたので、外部の協力を得たいと考えました。今回のプロジェクトは、妙髙酒造の歴史的な転換点です。単に出来上がったものを買うだけではなく、その過程も一緒に楽しみながら誕生の瞬間を見届けてほしい。そんな想いから、クラウドファンディングを選びました」

「完成品を買ってもらう酒」ではなく、「生まれる瞬間から関わってほしい酒」──今回リリースされるお酒が次の100年へのスタートラインであることについて、日々、試行錯誤を重ねながら酒造りに向き合う長田さんも、次のように話します。

「今は毎日が試練ですし、勉強です。でも、それが最終的には、自分が楽しく仕事ができることにつながれば良いなと。その頃には、また違った感性が生まれてくると思うんです」

これから妙髙酒造と出会う人にとっての入り口となり、その酒質の高さを体現する1本であってほしい。「妙髙山 UCHOTEN」には、次の100年を見据えた大きな期待が込められています。そして集まった資金は、新ブランド「妙髙山 UCHOTEN」を育て、さらに磨き上げていくための改良資金や設備の更新に活用する予定です。

妙髙酒造は、こうした一つひとつの改善を積み重ね、次の100年を見据えた持続可能な酒造りの基盤を整えていこうとしています。

「お酒を良い状態のままお客さんに届けるために、まずは瓶詰めや冷蔵の設備を更新したい」という長田さんの言葉に、「蔵人の創意工夫に依存している現状を変えたい」と集治さんも応えます。

「長田さんたちは古い設備のなかでも技術とアイディアで良いお酒を造ってくれています。それはうちならではの強みですが、その技術をより活かせる環境を整えていきたいと思っています」

そして、「ファンの方々には『次はどんな仕掛けをしてくれるんだろう』と常にワクワク感を提供できる酒蔵でありたい」と集治さん。「新しいお酒の開発やイベント、外部のパートナーとのコラボレーションなど、お酒を楽しむ様々な仕掛けを計画しているので楽しみにしていてください」と呼びかけます。

頂の更新が伝統をつなげる。求む、”頂きの先”への同行者。

2026年1月、「妙髙山」という高い頂をさらに超える挑戦が始まります。

名杜氏が開発した「二段酵母仕込み」を受け継ぎながら、新たな時代を作ろうとする36年ぶりの新杜氏。「妙髙山」の伝統を守るために変化を決意した末に完成した、新ブランド。

この歴史的な転換点に立ち会い、「妙髙山 UCHOTEN」が目指す”頂きの、その先”への挑戦を、ともに歩んでほしい。このプロジェクトへの支援を通じて、次の100年へと踏み出す最初の一歩を共にする人を、妙髙酒造は待っています。

クラウドファンディング挑戦中:【頂の、その先へ】200年蔵の「妙髙山 UCHOTEN」誕生プロジェクト

酒蔵情報

妙髙酒造 住所:新潟県上越市南本町2-7-47
創業:1815年(寛政12年)
代表取締役社長:木村 浩二
杜氏:長田 一郎
Webサイト:https://myokoshuzo.co.jp/

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