日本酒の「精米歩合」とは?数字で変わる味わいや特定名称を解説

2022.03

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日本酒の「精米歩合」とは?数字で変わる味わいや特定名称を解説

酒スト編集部  |  日本酒を学ぶ

日本酒の精米歩合とは「玄米を削ったあと、残ったお米の割合」です。精米歩合が60%であれば、玄米の状態から40%削られたことを意味します。また、精米歩合は「吟醸酒」や「純米大吟醸酒」といった特定名称を分類する基準のひとつです。

この記事では精米をする理由や精米方法、精米歩合によって変わる日本酒の特徴や特定名称について解説します。

精米する理由と、精米歩合が日本酒に与える影響

胚芽や表層部などのお米の外側には、タンパク質や脂質、ビタミンやミネラルなどの栄養が豊富に含まれているので、普段の食事では、精米しない「玄米」を好んで食べる方もいらっしゃいますよね。しかし、日本酒に使用する場合は、これらの成分が雑味に繋がる場合があるため、一般的に75%以下まで精米します。なお、一般的な食用米は玄米の状態から約10%削られているため、精米歩合は約90%と表すことができます。

一概には言えませんが、精米歩合の数値が高い(お米をあまり削らない)日本酒は、お米の外側に存在する成分の影響で旨味や甘味をしっかり感じられる濃醇な味わいのものが多いです。一方、精米歩合が低い(お米をたくさん削っている)日本酒は、フルーティーで華やかな香りを持ち、すっきりとクリアな味わいの日本酒になりやすいとされています。これは、お米の外側に含まれている脂質が、フルーティな香りの合成を抑制するためです。

また、精米歩合に似た言葉に「精白率」 があります。精米歩合は玄米を削り、「残った米の割合」を指しますが、精白率は玄米を削って「取り除いた割合」を指します。つまり、精白率は、精米歩合の正反対の意味を持つ言葉なのです。数値で表すと、精米歩合60%と精白率40%は同じ意味ということになります。日本酒のラベルなどでは、精白率という言葉はあまり目にすることはないかもしれませんが、間違えないよう気をつけましょう。

精米歩合が低い日本酒は、価格が比較的高いです。また、精米することを「磨く」とも表現するため、「高いから良いお酒」「よく磨かれた美味しいお酒」と認識されがちですが、必ずしもそうとは限りません。価格が高くなる理由のひとつとして挙げられるのが、コストの高さです。

たとえば精米歩合90%の日本酒と45%の日本酒を、同じ製造方法で同量つくるとしましょう。その場合、45%の日本酒に使用するお米は、90%の日本酒に使うお米の倍の量が必要です。さらに、削れば削るほど精米時にお米が割れやすくなってしまいます。これを防ぐには精米機をゆっくりと動かす必要があるため、稼働時間も増え、電力使用量も増加します。

精米歩合が低いほうが、雑味が少なくて飲みやすい可能性はありますが、味わいの好みは人それぞれです。精米歩合が美味しさにつながるかどうかは、あくまでも確率の問題だと思っておくとよいでしょう。

日本酒の精米方法を解説

精米方法には、一般的な「球形精米」のほかに「原形精米」や「扁平(へんぺい)精米」があります。球形精米は精米機のロール(砥石)にお米をぶつけて、丸い球体に削っていく方法です。そのため、削る必要のない部分まで削ってしまったり、削るべき部分が削れていない場合があります。

球形精米は「普通精米」とも呼ばれ、ほとんどの日本酒はこの方法で精米されたお米を使って造られています。

お米の長さ・幅・厚みを均等の割合で削ることで、必要な部分のみを効率的に削り取る精米方法が「原形精米」です。また、原形精米よりも厚みの部分を多く削り、幅は原形精米ほどには削らないことで、さらに効率的にタンパク質を除去できる精米方法を「扁平精米」といいます。

原形精米・扁平精米で削れば、球形精米ではたくさん削らないと実現しない味わいを、高い精米歩合で実現できます。原形精米・扁平精米についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。

精米歩合が1%と100%の日本酒がある!?

お米を99%も削った精米歩合1%の日本酒も、1%も削らない精米歩合100%の日本酒も存在します。精米歩合1%の日本酒は、楯の川酒造株式会社の『光明』です。約1800時間、75日を費やして、直径1mmになるまでお米を削っています。

極限まで削ったことで生まれる究極の透明感が、日本酒の新たな境地を切り開くことを願って造られたお酒です。

精米歩合100%、つまり玄米で造られ日本酒は『風の森 ALPHA Type8 大地の力 ver.2』です。

玄米を100%使うことで、最大限に大地のエネルギーを表現するためにつくられました。独自の加熱処理技術「アモルファス製法」によって玄米が持つデンプンを非結晶化させ、独特の風味や質感を表現しています。

精米歩合が「特定名称」へ与える影響

「吟醸」や「純米大吟醸」などの特定名称のついた日本酒は、精米歩合や醸造アルコールの有無によって分類されます。醸造アルコールとは、日本酒の製造工程外でつくられたアルコールです。キレや吟醸香をより強く引き出したりと味わいに変化をもたらし、酒質を安定させる効果も期待できます。

以下の図は、それぞれの特定名称の規定を表したものです。かつては「純米酒」にも精米歩合70%以下の規定がありました。醸造技術の向上によって精米歩合が70%以上であっても品質の高い日本酒がつくれるようになり、2004年より要件が変更されています。
参考:国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要

特定名称醸造アルコール吟醸造り精米歩合
純米大吟醸酒不使用50%以下
大吟醸酒使用50%以下
純米吟醸酒不使用60%以下
吟醸酒使用60%以下
特別純米酒不使用-60%以下 または 特別な製造方法
特別本醸造酒使用-60%以下 または 特別な製造方法
純米酒不使用--
本醸造酒使用-70%以下

精米歩合が50%よりも低い日本酒はたくさんありますが、精米歩合が50%であっても1%であっても同じ純米大吟醸です。かなり幅が広いですよね。さらに、先ほど解説した精米方法をはじめとする製造方法や、原材料によっても味わいや特徴は大きく変わります。

たった3つの条件だけで、日本酒を8種類に分類するのは難しいと言えるかもしれません。近年では、新政酒造株式会社や、株式会社せんきんなど、特定名称をあえて記載しない酒蔵も増えています。

まとめ:精米歩合だけで日本酒を選ぶのはもったいない!

精米歩合はどれだけお米を削っているかを表す数字です。精米歩合が高くても、こだわりの原材料や製法でつくられている日本酒がたくさんあります。

精米歩合だけで味わいや特徴を判断してしまうと、美味しい日本酒と出会える機会を逃しているかもしれません。数字や特定名称にとらわれず、さまざまな日本酒の中からお気に入りの一杯を見つけてください。

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