2023.08
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定番酒への愛を熱く語る - 「奈良萬 純米酒」夢心酒造(福島県)
目まぐるしく登場する季節限定酒や、抽選でしか買えないレアなお酒を追いかけるのは、日本酒の楽しみ方のひとつです。一方で、家に常備しておくとほっとする「定番酒」があるのも日本酒ファンの証といえるでしょう。
定番酒とは、その酒蔵の思想を体現する看板商品であり、だからこそロングセラーとして君臨しています。限定商品をコンプリートするのもいいけれど、毎日の晩酌で飲みたくなる定番酒の良さを改めて感じてほしい! というアツイ想いからスタートしたのが、こちらの「定番酒への愛を熱く語る」シリーズです。
第3弾でお話を聞いたのは、Twitterやnoteなどで日本酒情報を発信している会社員のgodanismさん。生酒が注目を集めやすい福島県・夢心酒造「奈良萬」の火入れ純米酒に目覚めた理由を教えてくれました。
火入れ酒を飲んで、改めて銘柄の良さを知る
10年くらい前、何軒かハシゴした最後のお店でいただいたのが、「奈良萬 純米酒」との出会いでした。奈良萬という銘柄自体はもっと前から知っていて、よく購入して飲んでいたのですが、定番酒である二度火入れの純米酒は買わなかったんです。
生酒の奈良萬は元気いっぱいで発泡感があるものが多いのですが、定番酒はとても落ち着いていて、ほろ酔いの体に沁み込みました。ハシゴ酒の最後に、「こういうお酒も造るんだな」と驚いたのをよく覚えています。
どんな場でも活躍するバイプレイヤー
常温でそのまま、蛇の目の猪口で飲むのが定番。温めることはあまりありません。「定番酒」として販売されるお酒全般に言えることだと思いますが、このお酒もまた、「どんなツマミを合わせよう?」と考える必要がないのがいいところ。冬にお鍋をつつきながらでも、暑い時期にカレーや焼肉を食べながらでも問題なし。いろんな食事に合わせていると、芯はしっかりしていながら、料理と接する表面の部分が変化するのがわかります。さながら、ベテランの役者ですね。
基本的にどんな料理にでも合いますが、ちょっとした夕食の残り物なんかがいいんですよね。野菜の胡麻和えや、おひたし、漬物とか最高です。あとはサバやイワシ、サンマなんかの缶詰に、竹輪やかまぼこなど。要するに、いつも家にある、いわゆる常備菜がとてもよく合います。
あるとき、奈良萬を扱っている酒屋さんで、「なぜ奈良萬を扱っているんですか?」と訊いたことがあります。その酒屋さんは、取扱商品の大半が生熟メインのラインナップで、質問した当時は奈良萬だけちょっと浮いて見えたので。その店主の答えはこうでした。
「奈良萬って、8割の人が『美味しい』って言うんだよね」
定番の純米酒火入れは、奈良萬という銘柄の中では一番柔らかく落ち着いた味わい。奈良萬には多くの生酒のラインナップがあり、ほとんどが主役になれる華やかさがあるのに対して、定番の純米酒は完全な脇役です。主役を張れるお酒は一晩に何人もいらないけど、脇役は何人いてもいい。いろいろな場面で活躍できる、好感度抜群のオールラウンダーだと思います。
疲れたときに、愚痴を聞いてくれるお酒
奈良萬を飲みたくなるのは、いろいろあって疲れたときとか、考えるのが面倒な夜。お酒だけを飲むんじゃなくて、なにかをつまみたいときにこのお酒を手に取ることが多いかもしれません。
ぜひ飲んでほしいのは、いろいろあって疲れている人(笑)。「今日は日本酒飲むぜー! 今夜はパーリナイ!」みたいな人には、同じ奈良萬でも季節商品の生酒のほうが断然おすすめです。純米酒は、日本酒を飲み慣れて、日常と一体化しているような人のほうが、その魅力を理解できると思います。
最後に、奈良萬を飲んでいると、飲み友達でもある夢心酒造の東海林社長の顔が思い浮かぶので、頭の中で愚痴を聞いてもらいながら飲んでいます(笑)。東海林さん、いつも美味しいお酒をありがとうございます。また笹塚で飲みましょう!
godanism
日本酒を飲み始めて20年。昔は甘めフルーティ好きでしたが、成長してだいたいなんでも飲めるようになりました。SNSやブログを通じて日本酒のことを書いています。現在はnoteでお酒の感想を発信中。
Twitter: @5da2sm
note: https://note.com/godanism
【シリーズ:定番酒への愛を熱く語る】
料理研究家 松原もも:「獺祭 純米大吟醸45」旭酒造(山口県)
WSET Sake エデュケーター KJ Sakura:「泡々酒ストライプ」丸本酒造(岡山県)
会社員 godanism:「奈良萬 純米酒」夢心酒造(福島県)
料理家・酒屋「発酵室よはく」店主 真野遥:「丹澤山 麗峰」川西屋酒造店(神奈川県)
会社員 河島泰斗(わっしー):「群馬泉 山廃本醸造」島岡酒造(群馬県)
「定番酒への愛を熱く語る」シリーズの記事一覧はコチラ
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