2020.03
25
「大学日本酒部/日本酒サークル」って何? (1) - 東京農業大学日本酒サークル「酒仙会」
「日本酒ブーム」という言葉がメディアで取り上げられるここ数年、SNS上でも日本酒愛好家や、趣味で日本酒を広める活動をしている方々が増えてきてるように感じます。
そんな中、ここ最近見かけるようになったのが「大学日本酒部」「大学日本酒サークル」のSNSアカウントです。筆者は1986年生まれ、大学に通っていたのは10年以上前ですが、その頃にはそうした団体の存在を耳にしたことはありませんでした。
日本酒を広めたい人々からは「若者にも日本酒を飲んで欲しい」という言葉がよく聞かれますが、実態はどうなのか。そしてそもそも、「大学日本酒サークル」って何なのか。今回は「日本酒に関連した大学」といえば必ず名前が挙がる、あの東京農業大学の日本酒サークル「酒仙会」の方々に直接お話を伺ってきました。
結成は2019年8月、会員数は約30名
ーー今日はよろしくお願いします。まず、簡単に自己紹介をお願いできますか?
豊田さん「東京農業大学日本酒サークル『酒仙会』の代表を務めている豊田です。現在は3年生で、生命科学部バイオサイエンス学科動物分子生物学研究室に所属しています。今やってみたい研究は、マウスの行動解析を通じて日本酒と他の酒類で酔い方に違いが出るのか調べることです」
大庭さん「『酒仙会』に所属している4年生の大庭です。農大の中でも文系の学科である、国際食料情報学部食料環境経済学科に所属しています。研究内容は、ワイナリーを通じた地域活性化など、いわゆる6次産業の事例についてでした」
ーー僕が学生の頃には、大学に「日本酒サークル」ってなかったと思うんですが、農大の日本酒サークルはいつ頃できたんですか?
豊田さん「酒仙会は、2019年8月 に設立しました。僕はその1年ほど前から日本酒が好きになったんですが、周りには苦手意識を持つ人も多かったんです。同世代でも日本酒が好きな人を集めて、増やしていきたいと思ったのが立ち上げのきっかけです。
現在は30名ほどが所属しています。うちはなぜか女子が多く、男女比は4:6ぐらいです 」
ーー30名も!みなさん、どんなきっかけで入部しているんですか?
豊田さん「農大ということもあって、もともと日本酒に興味がある人はいたんです。でも、 たとえば自分で専門店に行って日本酒を買ったり飲んだりするのにはハードルを感じていた、という人が多い ですね。あとは、サークルの活動内容で酒蔵見学に行ったりしているので、それに興味を持ってくれた人たちもいます。日本酒への興味もそうですが、お酒全般に興味がある、というメンバーが多いですね。
今はまだ非公式のサークルなのですが、5月には大学に、正式なサークルとして申請を提出予定です」
蔵元会や酒蔵見学、社会人との「酒縁」も
ーー普段はどのような活動をしているサークルなんですか?
豊田さん「蔵元さんにも来ていただいて、蔵元会を開催することが多いです。 蔵元さんに直接注いでもらったお酒って、自分にとって『特別な一杯』になると思う んですよね。その体験が、リピートのきっかけになると思うんです。お酒は僕が酒屋さんなどで調達して来て、おつまみは持ち寄り、という形にしています。
他にも酒蔵見学に行ったり、日本酒イベントに参加したり、今回は初めてお酒の持ち寄り会を開催します」
インタビュー後、酒仙会で初開催の持ち寄り会に編集部も潜入させてもらいましたので、ここからはその様子をお伝えします。この日は他大生や社会人を含む20人以上が参加。 ※会場には浅草橋のSAKE Street店舗2階を使っていただきました。
豊田さん「毎回、 社会人の方にも参加いただいています。理由は3つあって、1つは今後OBやOGにも気軽に参加してもらいたいから。もう1つは、普段コミュニケーションを取る機会の少ない社会人の方の話を聞くことが、学生にとっても勉強になると思うからです。最後の理由は、僕が感じる日本酒の魅力の1つに『酒縁』というものがあって、この お酒を通じた縁の広がりというのを、他のメンバーにも体感してもらいたい からですね。
学生主体で楽めるように適切に運営するため、社会人の参加は直接知り合いの方か、参加者の知り合いの方に限る形でお願いしています」
今回の持ち寄り会では、唎酒コンテストも開催。ちょうど、横浜国立大学日本酒同好会代表、全国きき酒選手権大会 学生の部優勝の経験も持つ別所さんが唎酒に挑んでいました。この日、唎酒するお酒は五種類。はじめに奥のおちょこに注がれたお酒を飲み、そのあと手前のグラスに注がれたお酒を飲んで、同じお酒を当てる、というものです。
回答後は、先に唎酒を終えていた中央大学日本酒同好会代表、猪原さんと唎酒結果の感想をシェアします。
そしていよいよ結果発表!この日は10名ほどが唎酒に参加。運営者が事前に採点して、順番に点数を発表していきます。
唎酒の難易度は高く、参加していた社会人は5点満点のうち0〜4点でしたが・・・学生日本酒団体代表の2人は見事、全問正解!
その後代表の豊田さんもエキシビション的に唎酒にチャレンジ、見事全問正解していました。 この日参加していた学生日本酒団体の代表は全員が全問正解。 普段からさまざまな日本酒を飲んでトレーニング(?)を積んでいることを感じさせます。
豊田さん「他大学の日本酒団体とは交流が盛んで、公式の唎酒大会でも顔を合わせます。今日は練習試合のような感じですね。そういう意味では、 体育会の部活や運動系のサークルのような楽しみも味わえる んじゃないかと思います」
若者と日本酒
ーーサークルに入っていない同年代の友達は、日本酒って飲んでいますか?
豊田さん「正直に言えば、あまり飲んでいないと思います。アルコール離れと言われている通り、お酒自体を飲まない人もいますし、飲む人でもチューハイやカクテルばかりだったりとか。
ただ、 お酒を飲む人に関しては、おいしい日本酒を一度飲んでもらえば変わる、というのは感じています 」
大庭さん「それは僕も感じています。たとえば農大の周りには日本酒が美味しいお店がたくさんあるので、そういうところに連れていって、一口とか一杯だけでも飲んでもらっています。もともとビールが大好きで、ビールしか飲まなかった友達はこの方法で日本酒にもハマってくれました。」
豊田さん「やっぱり 人と人との繋がりが、興味を持つ一番のきっかけ なのかなと感じています。でも 興味を持った後に好きになってもらえるのは、日本酒が美味しくなっていることが大きい と思います」
ーーそういう時って、どんなお酒を勧めるんですか?
豊田さん「亀泉のCEL24や三芳菊のようなフルーティで香り高いお酒であったり、WAKAZEの商品のように個性的で新しい味わいのお酒です。苦手意識がある友達に対しては、日本酒の固定概念を打ち砕きたい、と思っています。」
大庭さん「あとは、榮光冨士の純米大吟醸 雄町など、フレッシュなタイプもありですね。炭酸系が好きな人なら、こういうタイプからハマってくれることも多いです」
ーーサークル活動以外では、どのように日本酒を楽しんでいますか?
豊田さん「僕は、ホームパーティなどで飲むことが多いですね。どうやったら、そのお酒をさらに美味しく飲めるのかを考えるのが好きです。例えば樽酒に昆布を1かけ入れて燗をつけてみたり、フルーツと日本酒を合わせてみたり。」
大庭さん「僕は、自宅で飲んでいます。もともと家族はワインが好きなので、よく食卓にワインはあったんです。僕が日本酒好きになってからはそこに日本酒も並ぶようになって、普段の夕食、たとえばビーフシチューなんかと一緒に飲んでいます。一度、フルーティですっきりしたお酒をお燗にしてチーズと合わせてみたら、めちゃくちゃ合いました」
ーー大学卒業後は、仕事としても日本酒に関わっていきたいと思いますか?
大庭さん「僕は4月から就職するのですが、日本酒そのものの仕事は選んでいません(食品等流通業の企業に就職予定)。引き続き趣味として、周りの人たちに広めていきたいなと思っています」
豊田さん「僕は仕事にすることに興味はあります。 先日、他大学で日本酒関連の活動をしている友人と、4時間ぐらいずっと日本酒ビジネスのアイデアを話していた んですよ。」
ーーよ、4時間も。
豊田さん「日本酒の売り方だったり、専門知識がある人の仕事の場を増やす話だったり、酒蔵を新しい形で経営できないかという話だったり。
でも、一方で仕事にしていいんだろうか、という気持ちもあります。今は自由に日本酒と関わることができているんですが、例えばどこかの蔵に就職する、となったら制約も出てくると思うんですよね。今の活動の延長線上ということを考えると、趣味でやるとか、個人の小さな活動としてやる方が良いのかもしれません。その点はまだ、迷っていますね」
取材を終えて - SAKE Street編集部より -
- 日本酒部/日本酒サークルが増えているのは、本当に最近(2019年頃〜)の出来事
- 若者に日本酒を広めているのは、間違いなく同年代の若者
- 洋食やフルーツとのペアリングや、お酒へのアレンジなど自由な楽しみ方が広がっている
ということが、今回の取材を通して得られた発見でした。
今回の連載では、東京農業大学も含めて4大学の日本酒部/日本酒サークルについて取材記事を掲載予定ですので、次回以降も楽しみにお待ちください。
そして農大の20歳以上の皆さん、ぜひ「酒仙会」に参加を!!
※お酒は二十歳になってから。未成年者の飲酒は法律で禁じられています。
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