「大学日本酒部/日本酒サークル」って何? (2) - 中央大学日本酒同好会

2020.03

31

「大学日本酒部/日本酒サークル」って何? (2) - 中央大学日本酒同好会

二戸 浩平  |  大学日本酒部

最近、SNSでよく見かける「大学日本酒部」「大学日本酒サークル」を追いかけるこの連載。第一回は東京農業大学の日本酒サークル「酒仙会」を取材しました。

「若者と日本酒」について、30代以上にとってもかなり勉強になるお話が聞けた前回。でももしかしたら、「醸造科学科のある農大だからそういうサークルがあるんじゃないの?」と思われた方もいるかもしれません。

そこで今回は、文系女子が代表を務めるという中央大学日本酒同好会にお話を伺ってきました!

2019年6月結成。「関東で最初はウチです!」

ーー今日はよろしくお願いします。まず、簡単に自己紹介をお願いできますか?

猪原さん「中央大学法学部法律学科2年の猪原(いはら)です。2019年3月に唎酒師の資格を取得して、2019年の6月に中央大学日本酒同好会を結成しました。最近、Twitterでも関東にある大学の日本酒サークルアカウントが増えたと思うんですけど、一番最初はウチです!

日本酒が好きな同世代の友達って、他の大学にはいたんですが、中央大にはいなくて… 日本酒仲間が欲しい!って思ったのが立ち上げのきっかけです。

同好会の立ち上げを思い立って、まずはwitterアカウントを始めたんです。現在のメンバーは20人ほどになりましたが、やはりSNSで集まった人が多いですね。あとは、メンバーの紹介だったりとか。

日本酒に限らず、お酒が好きなメンバーが多いです。また、法学部のメンバーと男子のメンバーが多いんですが、今後は他の学部や女子のメンバーも増やしていきたいと思っています!」

ーーみんな、お酒が好きなんですね!日本酒は普段はどれぐらい飲みますか?

猪原さん「私は多い時は週5回ぐらい・・・いや、でも私はちょっと参考にならないかもしれないので、メンバーに聞いてもらった方が良いかもしれないです」

Sさん「僕はお酒自体はけっこう飲みます、週に4回とか(笑)。でも日本酒は月例飲み会の月1回、プラスアルファぐらいですね」

Nさん「僕は週に1回ぐらいは日本酒を飲みます。先日は、同好会の代表で唎酒選手権にも出場しました。もともと、なんとなく『日本酒のことを知っている』というのが『カッコいい大人の理想像』としてありまして。日本酒のことを学んでみたいと思って、同好会に入ったんです」

月例飲み会では、メンバーみんなでSNS発信。酒蔵訪問も!

ーー普段はどんな活動をしているんですか?

猪原さん「 月例飲み会 という形で、日本酒が揃っている居酒屋さんで色々と飲んでもらって、日本酒にハマる導入を作る、というのがメインです。飲み会後は、 サークルのTwitterアカウントで、『今日いちばん印象的だったお酒の感想を140字以内で書く』というのをみんなにもやってもらっています。

同世代に日本酒の魅力を知ってもらうことと、上の世代の方にも、若い人もちゃんと日本酒を飲んでいるよ、ということを知ってもらいたくて。

あとはサークルのTwitterアカウントにイベント等の宣伝が来ることがあるので、そういった情報を普段から共有したり。みんなで日本酒イベントに参加したり、酒屋さんに日本酒を買いに行ってみる、というのもやってみたいと思っています。

そして 今回は初めての試みとして、酒蔵見学に行くことにしたんです!

2月の下旬に初めて開催された中央大学日本酒同好会の酒蔵見学。酒ストリート編集部も同行させていただきました!

蔵見学に訪れたのは、東京都青梅市にある小澤酒造さん(銘柄は「澤乃井」)。東京都内ながら自然に囲まれた風景です。

この日は酒スト編集部のほか、他大学、そして欠席者の代わりに急遽参加することになった社会人の参加者がいました。蔵から最寄りの沢井駅に集合後、自己紹介をしながら蔵に向かいます。

到着後は小澤酒造株式会社 プランニング&デザイン室の吉崎さんに案内いただきながら、蔵の様子を見せていただきます。小澤酒造は、東京で最も西にある酒蔵。元禄15(西暦1702)年には既に創業していたことが書物に伝わる、長い歴史を持ちます。

小澤酒造では2002年から、木桶仕込みの酒を復活。敷地内にある樹齢数百年の杉の木が、朽ちて倒れそうになっていたものを伐採、その杉を材料として作った桶を使用しています。木桶を使った酒造りは温度管理が難しい一方で、伝統的な造り方を学び直す良いきっかけにもなっているといいます。

この日はちょうど、新酒の上槽がありました。見学時にはすでにお酒を搾り終えて、酒粕を搾り機から剥がす工程の作業中。酒粕は、地域の名産品であるわさびと組み合わせてわさび漬けに使用しており、蔵内にある売店でも販売しているそう。

他にも、精米後の米ぬかを使用した焼酎も製造しており、無駄の生じない酒造りをされています。 酒蔵見学は、酒造りのことだけでなく、こうした地域経済を学ぶきっかけにもなりそうです。

澤井酒造では軟水の「山の井戸」と中硬水の「蔵の井戸」の二つの湧き水を、酒造りに使っています。蔵の裏手にある「蔵の井戸」は、トンネル内に入って見学することができます。

「澤乃井」のほかに小澤酒造が手がけているのが、熟成酒のブランド「蔵守」。蔵内の熟成セラーも見せていただき、熟成酒の魅力について学びます。

まじめに見学した後は、試飲ルームに移動。乾杯して、みんなで試飲を楽しみます!

若者と日本酒

ーー周りの友達の、「日本酒」に対するイメージってどうですか?

猪原さん「やっぱり ハードルが高い、と思われていますね。度数も高いですし、飲まれ方としても『潰れに行く』ような見え方がしていて。サワーとかを飲む友達が多いです。

でも、私は『ちゃんと造られたお酒なら美味しい』ということがもっと広まって欲しいと思っています。一緒に飲みに行った時に、自分で飲みたい日本酒を注文して、一口飲んでもらうということは良くやっています。そうするとちゃんと、美味しいと言ってくれる友達もいるんです」

ーーそういうときは、どういう日本酒を勧めていますか?

猪原さん「私自身が、楯野川や山和のようなフルーティで綺麗な味で、飲みやすいお酒がきっかけで日本酒に目覚めたんです。なので、まずはそういうお酒を勧めることが多いですね。やっぱり 最初は『飲みやすい』と認識してほしい んです。

私、 自分が飲んだお酒を全部、Instagramのストーリーズで年別にまとめている んですよ。それで見ると、日本酒を好きになった2018年はそういうフルーティなお酒が中心で。でも2020年にはもっと幅広く色々なお酒を飲むようになってきているんです。なので、友達も飲みやすいお酒をきっかけに色々と飲めるようになっていくんじゃないかな、と思っているんです。

ほかには、尾瀬の雪どけの桃色にごりとか。『大人のいちごカルピス』って呼んだりしています!カルピスサワーとかが好きな人に勧めやすいですね」

ーー逆に、日本酒を広めるうえで難しいなと感じるのはどんな点ですか?

猪原さん「やっぱり 度数が高いお酒なので、積極的には勧めづらいというのはあります。 日本酒に少しでも興味を持ってくれている人には、気軽に飲んでもらうことができるんですが、そうでない人に広めるのはなかなか難しいですね。

1を10にするのはまだ、手応えを感じることができるんですが、0を1にするのが本当に難しい です。私一人でやっていくのは難しいので、この同好会も、自発的に日本酒との関わりを深めて、周りに広めていく人を増やすきっかけになればと思っています。

先日、渋谷スクランブルスクエアで開催されたイベント『二十歳からの日本酒 2020』にも運営側で参加したのですが、日本酒に興味を持った若い人たちが集まってくれていて本当に嬉しかったです。もっと、飲み仲間が増えて欲しいです!

『日本酒』ということは日本の酒、ということなので、もっと広まってもいいんじゃないかと思うんですよね。そのために 0から1へ、のところはみんなで解決していきたい ですね!」

ーーご自分では、どんな飲み方をすることが多いですか?

猪原さん「私は飲食店で飲むことが多いですね。家だとやっぱり親の目もあるので、あまり頻繁には飲みづらくて・・・。いつも行くお店で、新しく入荷したお酒を見つけたらそれを飲んでみますね。やっぱり今は、飲んだことがないお酒のことを知ってみたい!と思っているんです」

ーー将来、仕事としても日本酒に関わってみたいと思いますか?

猪原さん「・・・少しは思います。でも、今は基本的には法曹関係の仕事につけるように法学部で勉強しているところなのと、趣味を仕事にするのは違うのかもしれないな、とも思うんです。

たとえば、酒蔵さんの法律関係の仕事というのはやってみたいと思っています!あとは趣味として、日本酒イベントに関わったり、持ち寄り会などに参加して周りの人と交流したり、というのは継続していきたいですね」

ーー最後に、「推し銘柄」を教えてください!

猪原さん「今日見学したからというわけじゃないんですけど『澤乃井』です!私が東京出身なので地元のお酒で、味も美味しくて、さらに今日見たように蔵見学も充実していて・・・とにかく大好きです!」

取材を終えて - SAKE Street編集部より -

  • 日本酒や酒蔵見学を通じて日本酒以外のことも学べるし、専門知識を活かして業界外からお酒と関わるキャリアもある
  • 日本酒を若い人に勧めるうえで、「度数」のハードルは思った以上に高いかもしれない
  • 日本酒の「0→1」を実現するためには、みんなで力を合わせる必要がある

ということが、今回の取材であらためて学ばせていただいたことでした。

これまで2回にわたり東京都内の大学について取材をしてきましたが、次回以降は各地方の大学での活動を紹介する予定ですので、楽しみにお待ちください。

そして中央大の20歳以上の皆さん、ぜひ日本酒同好会に参加を!!

※お酒は二十歳になってから。未成年者の飲酒は法律で禁じられています。

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